JPNICロゴ

ARIN 38がダラスで開催されます

投稿者 ip_team on 2016年10月19日

2016年10月20日(木)、21日(金)に、米国・テキサス州ダラスにおいてARIN 38ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。秋のARINミーティングは通常、NANOG (The North American Network Operators Group)ミーティングとの併催で、今回はNANOG 68ミーティングと併せて開催されます。

ARIN 38 Webサイト
ARIN38_bannar.png

ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介した通り、ARIN地域でもIPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

ARINにおけるポリシー策定プロセスは、同じRIRであってもアジア太平洋地域のAPNIC (Asia Pacific Network Information Centre)RIPE NCC (RIPE Network Coordination Centre)と異なり、ARIN Advisory Council (ARIN AC)と呼ばれるコミュニティから選出されたメンバーが、提案者と共にポリシー提案の検討を進め、提案に対するコンセンサスの判断やARIN理事会への提言を行っています。ARINにおけるポリシー策定プロセスの詳細については、ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介していますので、そちらをご覧ください。

今回のARIN 38では、合計8点のポリシー提案が議論される予定です。

APNIC地域における同様の会議であるAPNIC 42ミーティングでは、議論されたポリシー提案が2点であったことと比較すると、ARIN地域では、ポリシー提案に関する議論がまだまだ活発であることが見て取れます。

8点の提案のうち1点(ARIN-2016-6:IPv6ポリシー文書からHD-Ratioを削除する)を除いた7点が、IPv4アドレスの分配に関するポリシー提案です。さらに7点の提案のうち、5点がIPv4アドレスの移転に関するポリシー提案です。

ARIN地域ではここ数年、移転時の需要確認要件の見直しについて活発に議論が行われています。その議論の一環として、ARIN-2015-7(IPv4アドレスの移転時における審議基準の簡略化)、ARIN-2016-2(需要確認を行う期間の変更)、ARIN-2016-5(IPv4アドレス通常在庫枯渇後の移転ポリシー)が提案されています。

また、ARIN-2016-1(予約IPv4アドレス空間に関する移転ポリシー)は、APNICで議論されているprop-116(最後の/8ブロックの移転禁止提案)と同じ趣旨の提案です。特定の目的で分配されたIPv4アドレスの移転を、禁止することを目的としています。

以下では、それぞれの提案について簡単にご紹介します。提案についてご興味を持たれた方は、提案名に張られたリンクから詳細を確認してみてはいかがでしょうか。

■Recommended Draft Policy ARIN-2015-2: Modify 8.4 (Inter-RIR Transfers to Specified Recipients) (レジストリ間移転の基準変更)

ARINポリシーの現状:移転を受けたIPv4アドレスは、移転後12ヶ月間、再度移転することができないと定められている。

問題点:世界各地に拠点を置くグローバル企業では、当初の利用予定が変わりARIN以外の地域で利用する可能性もあり、その際に移転できないとネットワークの構築に支障が出る恐れがある。

提案の概要:RIRをまたぐ移転においては、同一系列組織内の移転であれば、12ヶ月を待たずとも移転を認めるよう変更する。

■Recommended Draft Policy ARIN-2015-7: Simplified requirements for demonstrated need for IPv4 transfers (IPv4アドレスの移転時における審議基準の簡略化)

ARINポリシーの現状:ARINからアドレス分配を受ける場合と同じ基準で、移転を受けるIPv4アドレスの必要性を証明しなければいけない。

問題点:ARINからのアドレス分配と移転では、取り巻く状況が異なり、必ずしも同じ基準の適用が適切ではない。

提案の概要:従来通りの基準または、24ヶ月以内に移転を受けるアドレスの50%を利用することを証明できれば、IPv4アドレスの移転を受けることを認める。

■Recommended Draft Policy ARIN-2016-1: Reserved Pool Transfer Policy (予約IPv4アドレス空間に関する移転ポリシー)

ARINポリシーの現状:特定の目的(クリティカルインフラストラクチャへのIPv4の分配とIPv6への移行)に利用するためのアドレス空間があるが、この範囲についてもIPv4アドレス移転が可能となっている。

問題点:このブロックからの移転を認めると、当該ブロックの分配用途とは異なる目的で移転を受けることが可能となってしまう。また、ARIN地域外に当該ブロックが移転されると、本目的のために予約している/8ブロックが細分化され、当該アドレスレンジの確認が複雑化する。

提案の概要:特定の目的に利用するための分配として定義されたIPv4アドレスの移転を禁止する。

本提案の補足:APNIC 42ミーティングでは、本提案と同様の趣旨で、「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」からの割り振りIPv4アドレスの移転を禁止する提案が行われており、継続議論となっている。

■Recommended Draft Policy ARIN-2016-2: Change timeframes for IPv4 requests to 24 months (需要確認を行う期間の変更)

ARINポリシーの現状:IANAからARINへ再分配された、返却IPv4アドレスの中から分配を受けられるIPv4アドレスのサイズは、3か月分の需要に基づいて決定される。一方、IPv4アドレス移転においては、24か月分の需要までが認められている。

問題点:通常の分配とIPv4アドレス移転の場合では、需要としてARINが認める期間が異なることで、ARINの対応が複雑化している。

提案の概要:ARINからの分配、IPv4アドレスの移転のどちらにおいても、需要としてARINが認める期間を24か月に統一する。

■Draft Policy ARIN-2016-3: Alternative simplified criteria for justifying small IPv4 transfers (小規模のIPv4アドレス移転時における審議基準の簡素化)

ARINポリシーの現状:IPv4アドレス在庫からの分配基準をベースとして、移転要件が決まっている。

問題点:ARIN在庫からの分配基準は、必ずしもIPv4アドレス移転の状況に当てはまらない。

提案の概要:24ヶ月分の需要を証明するという現在の要件または、分配を受けているIPv4アドレスを80%以上利用していれば、その分配を受けているサイズと同等の移転を最大/16まで認める。

■Recommended Draft Policy ARIN-2016-4: Transfers for new entrants (新規参入組織に対する移転基準の制定)

ARINポリシーの現状:上流接続先から/24のIPv4アドレスの割り当てを受けていることが、インターネットサービスプロバイダ(ISP)が割り振りを受ける基準となっている。また、エンドユーザーは、上流接続先から割り当てを受けることを前提としている。

問題点:IPv4アドレス通常在庫枯渇後の新規参入組織は、上流接続先からIPv4アドレスの割り当てを受けられるとは限らない。

提案の概要:上流接続先からの割り当てを前提とせず、必要性を証明すれば最低/21またはそれ以上の割り振りを受けることを認める。またエンドユーザーにも、定義されている最小割り当てサイズの割り当てを受けることを認める。

■Recommended Draft Policy ARIN-2016-5: Post-IPv4-Free-Pool-Depletion Transfer Policy (IPv4アドレス通常在庫枯渇後の移転ポリシー)

ARINポリシーの現状問題点:15年以上前に策定された内容には、通常在庫枯渇後のIPv4アドレス移転に対応していない部分がある。

提案の概要:吸収合併や買収などの、いわゆるM&Aの場合も含めて、包括的な移転プロセスを定義して文書化する。

■Recommended Draft Policy ARIN-2016-6: Eliminate HD-Ratio from NRPM (IPv6ポリシー文書からHD-Ratio (Host Density ratio)を削除する)

ARINポリシーの現状:コミュニティネットワークと分類されるネットワークへの分配は、割り当てではなく割り振りを前提としている。IPv6アドレス割り振りにおけるHD-ratioは、/56の割り当てベースで計算を行っている。

問題点:コミュニティネットワークは小規模なものであり、ISPと同じ基準を適用することは実情に一致しない。

提案の概要:エンドユーザーへの/48のPIアドレス割り当てと同じ要件で、コミュニティネットワークへのIPv6アドレスの分配を認める。

ARIN 38での議論の結果は、この記事をアップデートする形でご報告する予定です。一方、メーリングリストでの議論の内容は、メーリングリストのアーカイブから参照することが可能です。なお、ミーティング期間中は中継が行われる予定ですので、ご興味を持たれた方はリモートで参加してみてください。また、今回はARINでの提案をご紹介しましたが、JPNIC、APNICのポリシーフォーラムで議論をしてみたいと思う提案がありましたら、ぜひお聞かせください。


写真は2016年4月、ジャマイカ・モンテゴベイで開催された、前回のARIN 37ミーティングの様子です。今回はどんな様子になるか楽しみですね。
ARIN38_photo.jpg
(ARINのFacebookページより)