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今月のコラム:熊本地震後の同窓会コミュニティーのこと

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JPNICではメールマガジンである「JPNIC News & Views」を発行していますが、毎月15日の定期号ではインターネットに関するコラムを載せています。そのコラムを、先月からこのブログでも紹介しています。

2017年6月のコラムは、株式会社インプレスR&D NextPublishing編集長の錦戸陽子氏に寄稿してもらいました。


今年(2017年)のゴールデンウィークは、実家のある熊本県の天草で中学時代の友人と過ごしました。昨年のゴールデンウィークは熊本地震からひと月もたっていなかったため、観光客が減りひっそりとしていた故郷ですが、1年を経て少し人が戻ってきたようで、港の桟橋はイルカウォッチングの船を待つ人たちであふれていました。

1年前の熊本地震直後、私が県内に多数いる友人たちと連絡を取った主な手段は、自分が管理している中学の同窓会MLと、LINEです。普段は他愛もない話をしている30人程度の小さなMLに「みんな大丈夫?」と投稿すると、1時間ほどして「大丈夫!」と返ってきました。その後も避難中の友人がLINEを通して、「借家が壊れたけど家族全員無事」「近所のスーパーが閉じて果物をずっと食べていないから送って」など生活のいろいろなことを伝えてくれました。

総務省が三菱総合研究所に委託して行った「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査結果」によると、熊本地震の発災時から5月末頃まで、被災した方々が使ったメディアで評価が高いのは、携帯通話・メール、地上波テレビとSNS (LINE)だそうです。SNS (Facebook、Twitter)は情報の「希少性」が高く、それに加えてLINEは「安定性」と「迅速性」も高いとされています。この結果は当時、私が熊本の友人に聞いた話と近いもので、MLやLINEによる同級生同士のつながりが、「他の手段で得られない情報」を確実に届けていたことを思い出します。

東日本大震災では、携帯の基地局が津波で流され、SNSもまだ普及していませんでした。それに比べると、インフラが維持されることの大切さをあらためて考えさせられると同時に、顔の見える人たちと作る小さなコミュニティー単位の情報が、震災の混乱の中ではとても頼りになると感じます。

災害時のSNSというと、デマを含んだ情報の洪水が起こり、被災者のニーズと支援したい人との間の「マッチング」が極めて難しいという課題もあります。しかし、確実にコミュニケーションができる範囲のネットワークと、それらが連携する仕組みは、インターネットが本質的に持っているものであり、こうした課題も、いつか克服できる日が来るのではないかと思っています。


■筆者略歴

錦戸 陽子(にしきど ようこ)

株式会社インプレスR&D NextPublishing編集長。日本初のインターネット専門誌『インターネットマガジン』編集部で日本の黎明期のインターネット業界を取材した後、『インターネット白書』をはじめ、インターネットが変える社会とビジネスをテーマにした書籍を多数手がける。熊本県天草郡出身。

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