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ARIN 40がサンノゼで開催されます

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2017年10月5日(木)、6日(金)に、米国・カリフォルニア州サンノゼにおいて、ARIN 40ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。秋のARINミーティングは通常、NANOG (The North American Network Operators Group)ミーティングとの併催で、今回はNANOG 71ミーティングと併せて開催されます。

ARIN 40 Webサイト

APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様にARIN地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

ARINにおけるポリシー策定プロセスの詳細については、ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介していますので、そちらをご覧ください。

今回のARIN 40では、合計5点のポリシー提案が議論される予定です。注目の一つ目の提案は「ARIN-2017-3: Update to NPRM 3.6: Annual Whois POC Validation(年間を通じた連絡先情報の妥当性検証)」です。この提案はWHOISの正確性向上に関するものです。前回のARIN 39においても議論が行われ、その内容を踏まえ、ARIN Advisory Council (ARIN AC)と呼ばれるコミュニティから選出されたメンバーと共に検討が進められている状態です。検討の結果、どのような方向に進んでいくのかが注目されます。また、今回の議論の内容は、他RIR地域での議論にも影響を及ぼすことも考えられ、JPNICでも非常に注目しています。

注目の二つ目の提案は「ARIN-2017-4: Remove Reciprocity Requirement for Inter-RIR Transfers(レジストリ間移転における双方向要件の撤廃)」です。アフリカ地域を受け持つRIRであるAFRINIC (African Network Information Centre)と、ラテンアメリカとカリブ海地域を受け持つRIRであるLACNIC (The Latin American and Caribbean IP address Regional Registry)へのレジストリ間移転が認められるようになると、IPv4アドレスを移転する際の取引価格にも影響を及ぼす可能性があります。

以下では、それぞれの提案について簡単にご紹介します。提案についてご興味を持たれた方は、提案名に張られたリンクから詳細を確認してみてはいかがでしょうか。

■Draft Policy ARIN-2017-3: Update to NPRM 3.6: Annual Whois POC Validation(年間を通じた連絡先情報の妥当性検証)

ARINポリシーの現状:WHOISサービスは、連絡先の特定、不正利用への対処、法執行機関等による犯罪者に関する情報の捜査等に利用されています

問題点:適切なWHOIS情報の登録は、連絡先情報の迅速な特定、オペレーションリソースの浪費の防止、ドメイン名やIPアドレス・AS番号のハイジャック防止に繋がります。しかしながら、不正確な情報が登録され続けている問題が潜在的にあります。

提案の概要:データベースに登録されたすべての連絡先に対して電子メールを送信し、送信から60日以内に受信者から応答がない場合には、その旨をWHOISに登録します。連絡が取れない旨がWHOISに登録されてから、90日経過するまでの間にさらに連絡が取れない場合、ARINスタッフの検証を経て、連絡先情報を無効化する。連絡先情報の検証を経て有効化されるまでの間、ARINメンバー向けのポータルサイトにログインできなくなります。

前回からの変更点:ARIN 39での提案では、連絡が取れない旨がWHOISに登録されてから、90日経過するまでの間にさらに連絡が取れない場合、登録情報が削除され、逆引きゾーンの委任を停止するとされていました。これらの点を修正し、連絡先情報の無効化と、連絡先情報が有効化されるまでの間、ARINメンバー向けのポータルサイトにログインできなくする、としました。

■Draft Policy ARIN-2017-4: Remove Reciprocity Requirement for Inter-RIR Transfers(レジストリ間移転における双方向要件の撤廃)

ARINポリシーの現状:AFRINICとLACNICのそれぞれでは、流入のみを認める片方向のレジストリ間移転の提案が議論中です。一方、ARIN地域では、片方向のみの移転を実施するレジストリとの移転は認めておらず、双方向の移転を可能としているレジストリのみを対象としています。

問題点:AFRINICおよびLACNICの各地域内のネットワーク事業者は、IPアドレスの確保を重要事項と考えています。AFRINICおよびLACNICの各地域へ、IPアドレスを移転することの必要性を感じています。

提案の概要:すべてのRIR間のIPv4アドレス総在庫の平均よりも、小さな在庫しか持たないRIRを移転先とする際には、片方向のレジストリ間移転ポリシーのみを実施している状況であっても、そのRIRへ移転される場合があることを追記します。

■Draft Policy ARIN-2017-5: Improved IPv6 Registration Requirements(IPv6アドレスの登録要件修正)

ARINポリシーの現状:IPv4では割り当てサイズが/29以上、IPv6では/64以上の場合に、データベース登録が必要です。

問題点:IPv4とIPv6のWHOIS登録が必要となる条件には、大きな相違があります。IPv4の場合よりも、IPv6の場合にはより多くの作業が必要になり、より迅速なIPv6の普及を妨げる要因となっています。

提案の概要:再割り当てとして登録が必要としているケースを、「/64またはそれ以上の静的割り当て」から、「/47もしくはそれよりも大きな再割り当て、再割り振りまたは任意のサイズで広告される再委任」に変更します。また、再割り振りから、/64もしくはそれよりも大きなサイズを固定して割り当てる場合、データベース登録が必要である旨を追加します。

■Draft Policy ARIN-2017-6: Improve Reciprocity Requirement for Inter-RIR Transfers(レジストリ間移転における双方向要件の修正)

ARINポリシーの現状:ARIN地域では、片方向のみの移転を実施するレジストリとの移転は認めておらず、双方向の移転を可能としているレジストリのみを対象としています。

問題点:ARINが移転先として認めるレジストリに一旦移転した後、ARINが移転を認めていないレジストリに移転されるケースがあり、ARIN地域の考えに沿わないレジストリへも移転可能となっています。

提案の概要:移転先となるRIRまたはNIRは、双方向移転をサポートしないRIRまたはNIRへの移転を許可してはいけない、という内容を追記します。

■Draft Policy ARIN-2017-8: Amend the Definition of Community Network(コミュニティネットワークの定義を修正)

ARINポリシーの現状:地域住民やコミュニティを対象として、非営利団体や大学等がサポートするボランティアグループによって運営されているネットワークを、コミュニティネットワークと定義し、このネットワークへのIPv6アドレスの割り当てを可能としています。

問題点:定義の範囲が狭すぎる上、複雑な要件があり、2010年1月の実装以来利用されていません。また、関連する提案の一つ(ARIN-2016-7:Integration of Community Networks into existing ISP policy(既存のISPポリシーへのコミュニティネットワークの統合))がARIN Advisory Council (ARIN AC)により棄却され、別の提案(ARIN-2017-2: Removal of Community Networks(コミュニティネットワークに関する記述の削除))の議論では、”コミュニティネットワーク”の定義が狭すぎると反対意見が続出しました。

提案の概要:コミュニティネットワークの定義を「サービスエリアの住民に対して、無料または低コストの接続性を提供する目的で、非営利団体あるいは大学の財政支援のもとで活動するボランティアグループによって組織され、運営されているネットワーク」から、「コミュニティ内の個人または団体に対して、無料または低コストの接続性や情報技術サービスを提供する目的で、ボランティアグループ、非営利団体、非営利団体、慈善団体または教育機関によって組織され運営されているネットワーク」に変更します。

メーリングリストに流れたこれまでの議論の内容や当日の議論、ARIN ACによる検討の結果は、メーリングリストのアーカイブから参照することが可能です。また、ミーティング期間中は中継が行われる予定ですので、ご興味を持たれた方はリモートで参加してみてください。また、今回はARINでの提案をご紹介しましたが、JPNIC、APNICのポリシーフォーラムで議論をしてみたいと思う提案がありましたら、ぜひお聞かせください。


写真は、2017年4月に米国・ルイジアナ州ニューオーリンズで開催されたARIN 39ミーティングの様子です。今回はJPNICからも職員が参加します。毎回のブログ記事ではお伝えできないような会場の様子も、あらためて報告できればと考えています。

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