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ARIN 41がマイアミで開催されました

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2018年4月15日(日)~18日(水)の日程で、米国・フロリダ州マイアミにおいて、ARIN 41ミーティングが開催されました。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。


(ARINのFacebookページより)

今回のARINミーティングに続けて、カリブ海周辺諸国のインターネット技術者が集まるCaribNOG (Caribbean Network Operators Group)が主催する、CaribNOG 15ミーティングも開催されています。

APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様にARIN地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

ARINにおけるポリシー策定プロセスの詳細については、ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介していますので、そちらをご覧ください。

今回のARIN 41では、以下に記載した合計9点のポリシー提案が議論されました。各提案の詳細については紹介を省略しますが、ご興味のある方は、リンク先のページに記載された内容をご確認いただければと思います。

Recommended Draft Policyとなっている5点の提案はいずれも、議論の結果を経て、メーリングリストによるラストコールの状態となっています。ラストコールは、提案内容をポリシー文書に反映するために、コミュニティに最終の意思確認を行うことを目的とするものです。

■Recommended Draft Policy ARIN-2017-3: Update to NPRM 3.6: Annual Whois POC Validation(年間を通じた連絡先情報の妥当性検証)

■Recommended Draft Policy ARIN-2017-8: Amend Community Networks(コミュニティネットワークの定義を修正)

■Recommended Draft Policy ARIN-2017-10: Repeal of Immediate Need for IPv4 Address Space (NRPM Section 4.2.1.6)

■Recommended Draft Policy ARIN-2017-12: Require New POC Validation Upon Reassignment(再割り当てにおける新たな連絡先情報の認証の必要性)

■Recommended Draft Policy ARIN-2017-13: Remove ARIN Review Requirements for Large IPv4 Reassignments/ Reallocations(大規模なIPv4アドレス再割り振り/再割り当て時における、ARIN審議の廃止)

■Draft Policy ARIN-2018-1: Allow Inter-regional ASN Transfers(レジストリ間AS番号移転の許可)

■Draft Policy ARIN-2018-2: Clarification to ISP Initial Allocation and Permit Renumbering(ISPの初期割り振りとリナンバリング許可の明確化)

■Draft Policy ARIN-2018-3: Remove Reallocation Requirements for Residential Market Assignments(住宅への割り当てにおける再割り振り要件の廃止)

■Draft Policy ARIN-2018-4: Clarification on IPv6 Sub-Assignments(IPv6アドレス再割り当ての明確化)

今回はこれらの提案のうち、「ARIN-2017-3: Update to NPRM 3.6: Annual Whois POC Validation(年間を通じた連絡先情報の妥当性検証)」と「ARIN-2017-12: Require New POC Validation Upon Reassignment(再割り当てにおける新たな連絡先情報の認証の必要性)」の状況をご紹介します。

ARINをはじめとするインターネットレジストリの提供するWHOISサービスは、連絡先の特定、不正利用への対処、法執行機関等による犯罪者に関する情報の捜査等にも利用されているそうです。

適切なWHOIS情報の登録は、連絡先情報の迅速な特定、オペレーションリソースの浪費の防止、ドメイン名やIPアドレス・AS番号のハイジャック防止に繋がります。しかしながら、不正確な情報が登録され続けている問題が潜在的にあると、提案者は問題提起をしています。これらの問題の解決につながるよう、提案「ARIN-2017-3: Update to NPRM 3.6: Annual Whois POC Validation(年間を通じた連絡先情報の妥当性検証)」では、ポリシー文書に以下の対応を明文化する提案となっています。

提案の概要:ARINおよび前身の組織から直接割り振り/割り当てを受けたIPアドレスに関する情報、ISPから再割り当てを受けたIPアドレスに関する情報、AS番号に関する情報に登録されたすべての連絡先に対して、ARINから情報確認の電子メールを送信します。

送信から60日以内に、該当の情報を更新するもしくは、正確な情報である旨をARINに回答することとします。対応の行われない連絡先情報は、ARINスタッフの検証を経て、無効な連絡先情報であることをWHOISに表示します。無効な連絡先情報が検証を経て有効化されるまでの間、ARINメンバー向けのポータルサイトの全ての機能が利用できなくなります。

ARIN 40での議論の際には、ARINのメール送信からメンバー向けポータルサイトが利用できなくなるまで150日であったのが、60日に短縮されています。

この提案に引き続き、「ARIN-2017-12: Require New POC Validation Upon Reassignment(再割り当てにおける新たな連絡先情報の認証の必要性)」の提案についても議論が行われています。

特に個人ユーザへの割り当てに際しては、申込者のデータをその本人が確認しないまま連絡先情報としてARINデータベースに登録されることがあるようです。情報がデータベースに登録された場合には、情報の管理や更新を行う必要性があることを認識させることを目的としているようです。

先に紹介した提案(ARIN-2017-3)は、既に登録された連絡先情報を対象として、この提案(ARIN-2017-12)は、新規に登録する連絡先情報を対象とした内容です。これらがセットで実装されることで、WHOIS登録情報の正確性向上につながるものとして、賛同を得られているようでした。

その他、ARINメンバー向けのポータルサイトのIDと連絡先情報の紐付けの問題や、提案の実装時期についていくつかコメントが出されていましたが、議論全体を通じては賛成の雰囲気だったようです。

ラストコールを経てこれら2つの提案がポリシー文書に反映された場合、世界に5つある地域インターネットレジストリで初めて、WHOIS登録情報の正確性向上を目的とした提案が実装されることになります。5月中旬に開催される予定のRIPE 76ミーティングでも、WHOIS登録情報の正確性向上を目的とした提案の議論が予定されています。RIPE NCCコミュニティでの議論に、どのような影響を及ぼすか、JPNICでも注目しています。

地域インターネットレジストリ(RIR)では、盛んに議論が行われているWHOIS登録情報ですが、このブログ記事を読まれている方も他人事ではありません。JPNICから直接IPアドレスの割り振り/割り当てを受けている場合、プロバイダから8個以上のIPアドレスの割り当てを受けている場合には、割り当て先に関する情報がWHOISデータベースに登録されているかと思います。JPNICの場合、WHOISに登録された情報はこちらから確認することが可能です。これを機に、WHOISに登録された情報をいま一度ご確認いただければと思います。

各プログラムの発表資料、当日の議事録や映像は、ARIN41のWebサイトから参照可能になっています。議論に興味を持たれた方は、これらの資料を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。


次回のARIN 42ミーティングは、2018年11月にカナダ・バンクーバーにおいて、NANOG (The North American Network Operators Group)73ミーティングと併せて開催が予定されています。NANOGミーティングでは、ネットワーク運用に関する話題も多く取り上げられます。ポリシーに関する最新動向と、ネットワーク運用に関する最新動向を一度に知ることのできる良い機会です。参加を検討してみてはいかがでしょうか。

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