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元号ドメイン名狂騒曲

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世間の注目を集める中、2019年4月1日に新元号として「令和(れいわ)」が発表されました。この新しい元号は、1ヶ月後の5月1日0時から使われることになります。平日の発表でしたが、職場でもWebやテレビなどでその瞬間を見守っていた方も多いのではないでしょうか。

天皇陛下の生前退位は江戸時代である1817年の光格天皇の退位以来約200年ぶりで憲政史上初ということですが、今回は改元の1ヶ月前に新元号が発表されるということもあり、さまざまな分野で新元号に関する話題が盛り上がりました。そういった話題の中で、今回はインターネットに関連して、ドメイン名に関する話を取り上げてみたいと思います。

SNSやネットメディア、テレビなどで目にされた方もいるかと思いますが、新元号の発表に関連して、新元号と同じドメイン名を登録しようという動きが一部で大変盛り上がったようです。事前に新元号を予想して、それを登録しようという人達がいたほか、実際に4月1日の新元号発表直後には、さまざまな種類のドメイン名が一斉に登録されるという状況となりました。

前回の改元である1989年(平成元年)を振り返ってみると、ちょうど日本国内では.junetから.jpへの移行が行われていた頃です。.jpは日本に割り当てられてはいましたが、今のようにドメイン名やメールアドレスとしてまだ一般的には使われてはいませんでした。また、「heisei.jp」や「平成.jp」といった形でのドメイン名が登録できるようになるのは、汎用JPドメイン名がスタートする2001年になってからのことです。

欧州原子核研究機構(CERN)のTim Berners-Lee氏により世界初のWebサイトが公開されたのが1991年(平成3年)、国内初となるKEK(文部省高エネルギー物理学研究所計算科学センター、現:高エネルギー加速器研究機構)のWebページが公開されたのが翌1992年(平成2年)ですので、とても一般ユーザーが気軽にドメイン名を登録するような時代ではなかったことは想像できると思います。そもそも、ISPによる一般ユーザー向けのインターネット接続サービスが開始されるのは、1990年代になってからです。そういった意味では、平成の30年ほどの間にインターネットがどれほど劇的に進歩したかということが、今回の盛り上がりの背景にあると言えるでしょう。

新元号の発表は、当日の午前11時40分頃だったのですが、直後から著名なレジストラ(登録事業者)やリセラ(取次事業者/再販事業者)の、WebサイトやWHOISサービスの動作が遅くなったり繋がりにくくなったりするという状況が観測され、日本人に馴染みのあるトップレベルドメイン(TLD)に関してはおおよそ数分からせいぜい10数分程度で、かなりの数のドメイン名が登録されてしまったようです。国内の大手ドメイン名登録事業者であり「お名前.com」を運営するGMOインターネット株式会社によると、同社が取り扱うドメイン名のほぼすべてで「reiwa」の文字列が登録済みとなり、1,300件以上の新規登録があったことなどが、メディアなどでも報じられました。

実際にWHOISサービスを使って、元号と同一のラベルを持つドメイン名の登録の有無を調べてみたものが以下の表です。日本の元号ですので、まずはJPドメイン名について見てみます。4月2日時点での検索結果で、「×」が既に登録されているドメイン名、その中で黄色のところが4月1日に登録されたとみられるドメイン名です。「○」はまだ誰も登録していないドメイン名で、「–」はルールなどで登録できないドメイン名です。都道府県型JPは「.tokyo.jp」と「.kyoto.jp」だけを表に載せていますが、残り45道府県もすべて同じ結果でした。

  reiwa 令和
.jp 2007/3/2 2019/4/1
.co.jp 2003/9/29
.ne.jp 2019/4/1
.or.jp 2019/4/1
.gr.jp 2019/4/1
.ac.jp
.ed.jp
.ad.jp
.go.jp
.lg.jp
.tokyo.jp 2019/4/1 2019/4/1
.kyoto.jp 2019/4/1 2019/4/1

続いて、新gTLDを含むgTLDや、.jp以外のccTLDについてもいくつか調べてみました。先ほど同様に、黄色のところが4月1日に登録されたとみられるドメイン名です。「○」はまだ誰も登録していないドメイン名で、「–」はルールなどで登録できないドメイン名です。「予約語」は、.jpや.comといったTLD自体を管理するレジストリ(登録管理組織)によって、あらかじめ登録ができないドメイン名として予約されているものです。

  reiwa 令和
.com 2000/3/29 2019/4/1
.net 2001/2/12 2019/4/1
.org 2019/4/1 2019/4/1
.info 2019/4/1
.biz 2019/4/1 2019/4/1
.asia 2019/4/1 2019/4/1
.xxx 2019/4/1
.cc 2019/4/1 2019/4/1
.tv 2019/4/1 2019/4/1
.ws 2019/4/1 2019/4/1
.ai 2019/4/1
.tokyo 2019/4/1 予約語
.kyoto 2019/4/1 2019/4/1
.yokohama 2019/4/1
.osaka 2019/4/1
.nagoya 予約語
.okinawa 2019/4/1 2019/4/1
.shop 2019/4/1 予約語
.moe 2019/4/1 2019/4/1
.earth 2019/4/1
.online 2019/4/1 2019/4/1
.photo 2019/4/1
.xyz 2019/4/1 2019/4/1
.link 2019/4/1 2019/4/1
.site 2019/4/1 2019/4/1
.wibsite 2019/4/1 2019/4/1
.news 2019/4/1 2019/4/1
.blog 2019/4/1
.page 2019/4/1 2019/4/1
.fun 2019/4/1 2019/4/1
.love 2019/4/1
.today 2019/4/1 2019/4/1
.wiki 2019/4/1 2019/4/1

こうして見ると、「reiwa」というASCIIのドメイン名については、ほとんどが新元号に発表に合わせて登録されたドメイン名と思われる状況になっています。4月1日以前に登録されているドメイン名については、元々の組織名などに関連したドメイン名として、昔からずっと利用されていると思われるものばかりです。例えば、「reiwa.com」はREIWA (Real Estate Institution of Western Australia)というオーストラリアの不動産関連の協会で、新元号の発表直後にWebサイトにアクセスが集中したことで騒ぎになり、同組織が新元号を歓迎するコメントを出したといったことが、ニュースなどでも報じられました。こういった状況から推測すると、どうやら新元号を予想して事前に登録したり、事前のリークを受けて登録したりした人はいなさそうです。

REIWAが出した日本の新元号に関するメッセージ

また、政府は「令和」以外の元号候補だった文字は発表していませんが、4月2日には報道で政府関係者の話として、「英弘(えいこう)」「久化(きゅうか)」「広至(こうし)」「万和(ばんな)」「万保(ばんぽう)」の五つが発表されました。せっかくなので、これらの文字列についても同じように調べてみました。

  eikou 英弘 kyuuka kyuka 久化 koushi 広至 banna 万和 banpou 万保
.jp 2012/8/8 2013/3/7 2012/10/22 2001/9/17 2017/9/20
.co.jp 1998/4/6 2004/9/14 2010/2/25
.ne.jp
.or.jp 2007/10/3
.gr.jp
.ac.jp
.ed.jp
.ad.jp
.go.jp
.lg.jp
.tokyo.jp
.kyoto.jp
.com 1997/4/15 2000/11/21 2007/3/16 2002/10/20 1999/4/12 1998/8/24 2014/3/21 2018/8/1
.net 2013/4/11 2013/3/7 2001/11/7 2000/5/27 2004/12/15 2013/1/17
.org 2019/3/25 2019/3/17 2019/1/22 2018/10/31
.info 2004/3/14 2001/10/4 2019/3/28
.biz 2001/20/4 2001/12/4 2018/3/23 2018/3/23
.asia 2017/4/20
.xxx
.cc 2009/3/18 2015/5/16 2014/6/13
.tv 2014/9/13
.ws
.ai
.tokyo 2019/3/26
.kyoto
.yokohama
.osaka
.nagoya 2019/2/16
.okinawa
.shop 2018/11/12
.moe
.earth
.online 2018/5/29
.photo  
.xyz 2018/9/13 2019/3/8 2015/8/17 2019/3/27
.link
.site 2019/3/25 2018/11/20
.website 2018/11/12 2019/2/9
.news
.blog
.page
.fun 2019/1/7
.love
.today
.wiki

結果を見てみると、「令和」と違ってほとんど登録されていないことがわかります。また、登録済みとなっている文字列についても、改元に関連して登録したと思われる文字列は無さそうに思われます。ASCIIのドメイン名については、元号候補と同じ読みだけれども、他の意味を持ちそうな文字列だったりします。また、漢字のドメイン名では元号候補と同じ文字列の登録がありますが、中国語圏のユーザーと思われる登録者だったりして、時期的にも元号と同一文字としてよりも、本来の漢字の意味を求めて登録しているようにも思われます。

4月1日の発表直前には、各所で候補として予想されている文字は、政府が元号候補から外す方針だというニュースなどもあり、新元号が「令和」と決まったのは、他の元号候補に既にドメイン名として登録されているものがあったのではないか?などと想像してみたりもしたのですが、登録状況を見る限りでは、「令和」とそれ以外の文字列で、そこまで大きな違いは無さそうに見えます。そういう意味ではこれらの六つの候補すべてが、発表までとてもよく秘匿されていたということが言えそうです。一部で噂されていたような、事前に関係者の誰かがこっそりと新元号を漏らして、その情報を元に発表前に登録するといった形跡は、今回調べた限りでは見当たりませんでした。一方で、この六つの候補に絞り込まれる前に、「既に予想上位に挙がり、ドメイン名として多数登録されているから」という理由で外された候補があるのかどうかはわかりません。


さて、こういった注目を集める何かの文字列が発表される度に、その文字列と同じドメイン名を登録しようという動きで盛り上がることは、これまでにも何度も繰り返されてきています。最近では、JR東日本が山手線の新駅名として「高輪ゲートウェイ」を発表した際にも、直後にドメイン名が登録されるということがありました。

このようなドメイン名を登録する理由としては、そのドメイン名を使って新しいビジネスやサービスを始めたいというものの他に、単に人に自慢したいだとか、ネット上で注目を集めたいなど、さまざまな理由があると思います。その中でよく言われることが、「ドメイン名を高値で転売するため」というものがあります。

転売目的でドメイン名を登録すること自体は、多くのTLDでは規則上は禁止されてはいません。また、ドメイン名の登録とはあくまで「維持料を支払うなどして認められた期間、当該ドメイン名について管理権限の委任を受けること」であり、所有ではなく利用する権利があるだけではありますが、その利用権を当事者同士の合意の上で譲り渡すことは可能です。

ただし、ほぼすべてのTLDにおいて、それには「登録規則等に違反しないこと」と「他者の権利を侵害しないこと」という条件が付きます。多くのTLDでは、裁判などに訴えるほかに「ドメイン名紛争処理方針(DRP; Domain Name Dispute Resolution Policy)」に基づく申立制度が用意されていて、商標などと同一のドメイン名を権利侵害や高額での転売目的などで登録・使用していると、取消や移転の対象となります。DRPが策定されているTLDでは、ドメイン名登録時に必ずDRPに従うことを合意した上で登録することになります

新元号が発表されるのは数十年に一度のことで、見事に目的にドメイン名を登録した人は、宝くじに当たったような幸運を感じているかもしれません。そうやって手に入れたドメイン名を、高値で転売するというのも一つの方法ではありますが、せっかく新しい元号と同じドメイン名が使えるのですから、「令和」時代にふさわしい何か新しい活用方法を生み出して貰えると嬉しいですよね。