RIPE 79でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介
ip_team IPアドレス 他組織のイベント2019年10月14日(月)~18日(金)の日程で、オランダ・ロッテルダムにおいて、RIPE 79ミーティングが開催されています。RIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)は、世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)のうち、ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIRです。
APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様に、RIPE NCC地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。
RIPE 79ミーティングの全体のアジェンダおよびPlenaryセッションの概要は、以下のWebページから参照可能です。
RIPE NCCでのポリシー提案ステータスがまとめられたページによると、現在、以下4件の提案が進行中のステータスにあります。
- 2018-06:RIPE NCC IRR Database Non-Authoritative Route Object Clean-up(RIPE NCCが管理権限を持たないルートオブジェクトの整理)
- 2019-04:Validation of “abuse-mailbox”(“abuse-mailbox”の登録内容確認)
- 2019-06:Multiple Editorial Changes in IPv6 Policy (IPv6アドレス分配ポリシーの文言修正)
- 2019-07:Default assignment size for IXPs(IXPへの標準割り当てサイズ)
「2018-06:RIPE NCC IRR Database Non-Authoritative Route Object Clean-up(RIPE NCCが管理権限を持たないルートオブジェクトの整理)」は、既にメーリングリスト上でのラストコール(最後のコメント募集期間)の状態にありますので、今回のRIPE 79ミーティングでは、2018-06を除いた3点のポリシー提案が議論されます。
今回は、これらの提案を簡単にご紹介したいと思います。詳細について確認をされたい方は、提案のタイトルに張られたリンクからご覧ください。
メーリングリストでの議論の内容は、メーリングリストのアーカイブから参照することが可能です。当日の議論の模様は収録されており、後日公開されますので、ご興味を持たれた方は収録された内容を確認されてはいかがでしょうか。
RIPE ポリシーの現状:ルーティングに関する情報は、(1)RIPE NCCから分配を受けたIPアドレス・AS番号に関する情報が登録されたIRRデータベース、(2)RPKI ROAデータベース、(3)運用者が任意に登録した情報が蓄積されたIRRデータベース、に登録されています。
問題点:上記(3)のデータベースに含まれる情報は、分配先組織によって同意が得られていないまま登録されている可能性があります。意図しないルーティング情報は、ネットワークの運用において問題を引き起こす可能性があります。
提案の概要: 運用者によって上記(3)のIRRデータベースに登録されたルーティングに関するオブジェクトが、5つのRIRのうちのいずれか一つのRIRによって発行されたRPKI ROAと競合する場合、このオブジェクトはRIPE NCCによって削除されなければならない旨を、ポリシー文書に追加します。
■2019-04:Validation of “abuse-mailbox”(“abuse-mailbox”の登録内容確認)
RIPE ポリシーの現状:RIPE NCCでは現在、登録された電子メールアドレスに到達可能かどうか、主に技術的な観点を元に機械的に確認を行っています。
問題点:RIPE NCCからの確認メールを受信できることのみを条件としているため、連絡を受信するだけのメールアドレスを登録する組織や、メールを受信した場合にも連絡に対応しない組織が見受けられます。
提案の概要:初期検証期間を設け、この期間中に対応が行われなかった場合に、他の連絡先情報に対して検証を行うよう手順を定めることとします。
■2019-06:Multiple Editorial Changes in IPv6 Policy (IPv6アドレス分配ポリシーの文言修正)
RIPE ポリシーの現状と問題点:現在有効なIPv6アドレスの割り振り割り当てに関するポリシーは、制定から相当期間が経過しています。制定当初に記述された「経験不足」または「潜在的な新しい変更」といった用語や現在廃止されている内容の削除、明らかに現在の状況に一致しない内容について言及する複数の段落があります。
提案の概要:不要なテキストを削除し、ポリシーを簡素化します。また、IPv6アドレスの割り当てサイズの決定に当たっては、PIPE NCCの発行する文書「Best Current Operational Practice for Operators: IPv6 prefix assignment for end-users – persistent vs non-persistent, and what size to choose」を参照させることとします。
■2019-07:Default assignment size for IXPs (IXPへの標準割り当てサイズ)
RIPE ポリシーの現状:IXP (Internet Exchange Points)の相互接続セグメント用にIPv4アドレスを利用する場合は、原則として/24(256アドレス)、最大で/22(1024アドレス)の割り当てが行われています。
提案の概要:今後新設されるIXPには最小で/27(32アドレス)を割り当てることとし、/27よりも大きな割り当てが必要な場合、割り当て済みのIPv4アドレスを返却し、2年以内の需要を示すことで、最大/22の割り当てを受けることができるようポリシー文書を変更します。
前回のRIPE 78以降、RIPE NCC管轄地域でのIPv4アドレスの分配ポリシーが大きく変更となっています。
2019年10月02日、RIPE NCCのメーリングリストにおいて、IPv4アドレス分配(割り振り・割り当て)に関する発表がありました。RIPE NCCでは、一組織につき/22(1,024アドレス)の分配を継続して行ってきましたが、最後の連続する/22のブロックの分配を行ったとの内容でした。これ以降は、/23(512アドレス)と/24(256アドレス)を組み合わせて/22の分配を継続することのことです。
また、分配を行うためのIPv4アドレスの在庫が枯渇し、/22の分配が難しくなった場合には、待機者リストを作成し、待機順に/24の分配を行う予定です。この対応は、アイスランド・レイキャビクで開催されたRIPE 78において議論された「2019-02:IPv4 Waiting List Implementation(IPv4割り振り待機者リストの運用開始)」のポリシー提案の結果に基づいて実施されるものです。
RIPE 78終了後には、メーリングリストにおいて、IXPへの割り当てとして利用するアドレス空間に関する「2019-05:Revised IPv4 assignment policy for IXPs(IXPへの割り当てポリシー変更)」というポリシー提案の議論が行われました。JPNICのメールマガジンでもご紹介した、RIPE 78での議論を経て提案として提出されたものです。提案は全てメーリングリスト上において議論されました。議論の結果、IXPへの割り当てとして利用するアドレス空間を/16から/15へ拡大すること、現行/22となっている1IXPあたりの割り当てサイズを原則として/24(最大/22)とすることが決定されています。
この変更に引き続き、「2019-07:Default assignment size for IXPs(IXPへの標準割り当てサイズ)」というポリシー提案で、1IXPあたりの割り当てサイズを最小で/27(32アドレス)、最大で/22とすることについて、RIPE 79で議論が行われています。
写真は、2019年5月にアイスランド・レイキャビクで開催されたRIPE 78ミーティングの様子です。JPNICからは、ライトニングトークの時間に、「Long Chopsticks in Heaven – When Packets Dropped Using ROA」と題したRPKIに関する発表を行うことができました。写真は発表の模様です。
RIPE ミーティングは、管轄地域内のさまざまな場所で開催されています。RIPE ミーティングの会期中、12のワーキンググループがそれぞれ提案に関する議論や情報提供のセッションを行います。ポリシーに関する最新動向と、ネットワーク運用に関する最新動向を一度に知ることのできる良い機会ですので、一度参加されてみてはいかがでしょうか。並行して行われるワーキンググループもありますので、参加されることがありましたら、複数人での参加をお勧めしたいと思います。