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News & Views コラム:標準化って誰がやっているの?

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メールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでもご紹介しています。2021年8月は、国際標準化機構(ISO)で電子署名関連の標準化活動に取り組んでおられる有限会社ラング・エッジの宮地直人さんに、どの団体でどういった人々によって標準化活動が行われているのかについてお書きいただきました。

 


こんにちは、はじめまして。主に電子署名や認証等のトラスト分野を専門にしている技術者です。ただ普通の技術者と少し違っているのは……、標準化をやっている点でしょうか。標準化について、少しお伝えしてみましょう。

一口に標準化と言っても、いろいろあります。インターネットだと一番有名なのは、名前からしてもW3C (World Wide Web Consortium)でしょうか。他にもIETF (Internet Engineering Task Force)のRFC標準や、ビジネス系だとISO (International Organization for Standardization)標準やJIS (Japanese Industrial Standards) 標準なんかも使われていますね。いろいろありますが、参加する単位が異なります。

IETFは「個人」での参加となり、W3Cは「企業」ですし、ISOは「国」単位となります。もっともISOは各国の中に委員会があり、そこには企業や個人が参加をしています。なお、私はISOの標準化をいくつかやっています。

このメールマガジンをお読みの方ですと、一番身近な標準はIETFだと思います。IETFの参加資格は、JPNICのWebサイトにおける情報を見てみると「企業等を代表して参加するわけではなく、個人の資格で参加する」と紹介されています。また、参加したい人は自由に参加することができるのも特徴だと思います。もっとも、所属組織からバックアップを受けているかもしれませんね。

IETFとRFC 「IETFの組織構造」
https://www.nic.ad.jp/ja/tech/rfc-jp.html

IETFでは、インターネットに関する仕様であれば、結構幅広い範囲の標準化が行われています。誰でも提案できることから玉石混交であることは否めませんが、短期間でインターネットの新しい仕様が決められていると感じています。やりたい人がやる、という点が強味でしょうか。

W3Cは私も参加した経験はありませんが、HTMLやXML系のXML署名等の標準化を行っています。W3Cに参加するには、所属している企業や組織がW3Cの会員である必要があります。会員企業を代表した専門家が集まって、標準化を行っているイメージです。ちょっと一般からの参加はハードルが高いです。

さて最後がISO標準です。ISOはたくさんのTC (Technical Committee)やSC (Sub Committee)がありインターネット以外にも幅広い分野の標準化が行われています。ISOは参加国が1票を持ち、新しい提案・各ドラフト・最終採用等の各段階で投票が行われ、規定の数以上の国の賛成を得られた時に次のステージに進める仕組みです。投票だけで1ヶ月以上かかるので、標準化までに数年はかかります。

日本の場合、実際に投票判断を行うのは、経済産業省から委託を受けた団体の委員会です。ISO標準化に携わるには、委託団体の委員会に参加するか、エキスパートとして招聘される必要があります。少しハードルが高いですね。

うまくISO標準化に参加できたとしても、委託されている団体にもよりますが、一般には金銭的な補償はされないことが多いです。かつては大企業がバックアップした専門家の参加が多かったですが、最近ではボランティアの方が多いのではないでしょうか。大学の先生方も、ボランティアでの参加が多いです。そうなんです、私も基本ボランティアとして標準化をやっています。零細会社なので、とても大変です(笑

ここ2年、私はISO 14533-2というXML高度(長期)署名XAdESプロファイルの標準化のリーダー兼メインエディタをやっていました。この作業に取られた時間ときたらもう……。でも、自分が書いた標準仕様が世界で使われているのを見ると、少しは報われた気がします。なお、ISOドキュメントは有料配布なので買ってください、というか私も自分で記念に買います(マテ

ISO 14533-2:2021
https://www.iso.org/standard/79129.html

標準化は大変なことも多いですが、会議ではいろいろなところに行けたり、知見や人脈が広がったりして楽しいです。私の経験では、マイクロソフトのシアトル本社で会議をして、向こうの技術者との会議で議論をしたのは楽しい思い出です。ボランティアですが、ビジネスに直結するわけではないので気楽という面もあります。

皆さんも、自身のキャリアや知見を広げるためにぜひ標準化に参加して、世界と繋がりましょう。ってコロナ禍が終わらないと会議に行けませんね……。逆にオンラインだと気軽に参加できるので、まずはIETFあたりからいかがでしょうか?

 


■筆者略歴

宮地 直人(みやち なおと)

有限会社ラング・エッジ プログラマ/取締役。
https://www.langedge.jp/

神田片隅の零細(一人)ソフトハウスにてトラスト系の製品開発や受託開発の傍ら、ISO等の標準化や業界団体やオープンソース開発を行っています。主にJNSA電子署名WGとOpenIDファウンデーション・ジャパンあたりで活動中。電子署名や電子認証と、PDFやOffice文書等のドキュメント系を中心とした古典プログラミングと、最近はちょっと量子プログラミングも勉強中です。