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企業、事業者、学校のIPv6最新状況~2021年度IPv6対応状況に関するアンケート結果~

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JPNICでは2014年から毎年IPv6の対応状況について、JPNIC会員をはじめ、IPアドレス管理指定事業者とPIアドレス割り当て先組織等に対してアンケート調査を実施しています。

2022年1月20日から2月18日までの1ヶ月間、IPアドレス管理指定事業者(以下、IP指定事業者)と、PIアドレス割り当て先組織、AS番号割り当て先組織(以下、PI/ASホルダ)に、それぞれの組織属性ごとに設問を分けたアンケートを用意して回答を募集しました。その結果、IP指定事業者から99件、PI/ASホルダからは125件、総数として224件の回答をいただきました。それぞれ契約者数の1割以上の方からご回答いただいたことになります。お忙しい中、ご回答協力いただいた方にはこの場で御礼申し上げます。

本記事では、このアンケートの集計結果を、過去の調査結果やJPNICの登録情報などとの比較や分析とともに報告します。


1. 回答者プロフィール

JPNIC会員の割合

回答いただいた組織を、JPNIC会員とそれ以外、またIP指定事業者とそれ以外に分類して集計しました。

回答組織の分類

回答者全体におけるJPNIC会員の方の割合と、それ以外の方の割合を確認すると、不明と回答した方を除くと、全体としてJPNIC会員からの回答が半数以上を占める結果となりました。

実際のIP指定事業者におけるJPNIC会員の割合が3割以下ですので、JPNIC会員の皆さまがJPNICの活動に興味、関心を持ってご協力いただいていることが実感できるとともに、もっと多くのIPアドレス・AS番号割り当て組織の皆さまにも、JPNIC活動や理念に賛同いただけるよう、働きかけを行っていく必要があると感じました。

回答者の地域分布

回答者の地域分布

 

契約者の地域別分布に関して、IP指定事業者に限ってみた場合、実数としては東京の割合が4割程度あり、他の地域よりも群を抜いて多くなっています。しかし、アンケート回答者の割合で見ると、IP指定事業者においても、IP指定事業者以外(PI/ASホルダ)を含めた全体で見ても、東京が1/4以下の割合で、東京以外の地域の方からご回答いただいた割合が高いことが分かります。

サービス種別、組織種別

IP指定事業者が提供しているサービス種別と、IP指定事業者以外(PI/ASホルダ)の組織種別の結果は以下の通りです。

IP指定事業者が提供しているサービス種別

 

IP指定事業者以外(PI/ASホルダ)の組織種別

 

IP指定事業者では、相対的に事業者数が多いCATV事業者が、最も高い割合を占めています。IP指定事業者以外でも、同様に事業者数が多い学校、研究機関が、最も高い割合を占めています。これは、地域別で東京以外からの回答が多いこととも符合します。

2. IPv6アドレスの割り振り/割り当てと対応/利用状況

IPv6アドレス割り振り状況

IP指定事業者におけるIPv6アドレスの割り振り、対応状況について、アンケートの回答結果と実際の割り振り状況との対比をしてみました。

実数と比較すると、アンケート回答者の方がIPv6アドレスの割り振りを受けていない比率が若干高い結果となっています。

IP指定事業者におけるIPv6アドレスの割り振り状況

 

IPv6対応状況(経年比較)

IP指定事業者におけるIPv6対応状況については、今年度は従来からの選択肢の表現を少し修正して訊ねることにしました。

従来、「対応作業を実施中」としていた選択肢を、より具体的な状況を示すために、エンドユーザへのサービス提供はやっていないが、上位の接続やバックボーンについては対応を完了している、という内容に変更したところ、この選択肢の割合が少し増加しており、ここまでを含めた「IPv6対応」を済ませている割合は、昨年、一昨年よりも若干ではありますが増加していると言えます。

一方で、「対応予定なし」とする回答も増加していました。対応していない理由としては、「IPv4アドレス在庫がある」「コストがかかる」「ユーザニーズがない」という従来から聞かれる内容であり、特段新たな理由は示されませんでした。

IP指定事業者におけるIPv6対応状況(経年比較)

 

IPv6対応状況(地域比較)

IP指定事業者の対応状況について、地域別で対応に差があるか確認してみました。大手事業者が集中する東京の対応率が高くなるものと予想をしていましたが、「すべて対応」だけで比較すると、中部地方に大きく引き離され、北海道・東北地方、東京を除いた関東地方、よりも低いという意外な結果となりました。

IP指定事業者におけるIPv6対応状況(地域比較)

 

中部地方はCATV局のIP指定事業者の数も多く、これらの対応状況の進展が影響しているのかもしれません。2020年2月に三重県津市で「IPv6 Summit in TSU 2020 & ハンズオンセミナー」を開催しましたが、もしかしたらこのイベントがIPv6対応率向上に繋がったのではないか(?)と希望を抱かせる結果となりました。

IPv6アドレス割り当て状況

PI/ASホルダに関しては、IPv6アドレスの割り当てを受けている状況について確認しています。

PI/ASホルダにおけるIPv6アドレス割り当て状況

 

アンケート回答者のうち、JPNICから直接割り当てを受けているケースと、IP指定事業者から割り当てを受けているケースを合わせると、およそ3割弱の組織がIPv6アドレスの割り当てを受けているということになっています。

実際のIPv4のPIアドレスあるいはAS番号の割り当てを受けている契約者のうち、IPv6の特殊用途用PIアドレスの割り当てを受けている、あるいはIP指定事業者からIPv6アドレスの割り当てを受けて、WHOISデーターベースに割り当て情報が登録されている組織を確認すると全体の15%程度に留まることが分かりました。

IPv6利用状況(経年比較)

また、PI/ASホルダにおけるIPv6利用状況を経年で比較したところ、利用している割合が例年よりも低い結果となってしまいました。

PI/ASホルダにおけるIPv6アドレス利用状況(経年比較)

 

IPv6利用状況(組織種別比較)

IPv6の利用状況を組織の種別ごとに見た場合、「団体、自治体、非営利組織」はサンプル数が少ないため除くとして、「学校、研究機関」が20%以上という結果で、一般企業を上回る割合でした。

PI/ASホルダにおけるIPv6アドレス利用状況(組織種別比較)

 

3. IPv4アドレス移転について

アンケート回答者のうち、約6割がIPv4アドレスの移転について検討したことも、実際に移転を行ったこともないという回答でした。

予想としては、IP指定事業者が移転を受ける割合が多くなり、PI/ASホルダは移転する(譲渡する)割合が多くなるのではないかと見込んでいました。しかし、PI/ASホルダの回答者では、国内海外を含めて移転を受けたことがある組織と、移転した(譲渡した)ことがある組織が同数という結果となりました。

IP指定事業者については、IPv4アドレス移転履歴に基づいて算出すると、移転を受けたとことがあるIP指定事業者はIP指定事業者全体の約30%、移転した(譲渡した)ことがあるIP指定事業者が全体の約10%と、アンケート回答の傾向が、実際とそれほど大きな違いがないことが分かります。

IPv4アドレス移転の実施・検討状況

 

4. JPNICのセミナー、情報提供に関して

セミナー受講状況

JPNICが開催している技術セミナーや、地域でのIPv6対応セミナーなどについて、受講経験や受講意向を確認しています。

回答者全体では受講経験者は36%ですが、IP指定事業者の回答者に限ると半数以上が受講経験ありとしています。今後は、一般企業や大学、学校における運用者向けのセミナープログラムを用意するなど、IP指定事業者以外にも受講してもらえるような工夫が必要ではないかと考えます。

セミナー受講状況

 

JPNICの情報発信媒体に関する利用状況

JPNICからの情報発信に関して、どの媒体を利用しているかの回答結果です。

全回答の6割以上が、会報誌である「JPNIC Newsletter」をご覧いただいている結果となりました。特にPI/ASホルダの回答者の方が、IP指定事業者よりも割合が高くなっており、メールマガジン「News & Views」も僅かながらPI/ASホルダ回答者の比率が高いといった興味深い結果でした。

「JPNIC Newsletter」や「News & Views」が長い歴史の中で支持されてきた一方で、YouTubeチャンネル、Twitter、そしてこのJPNIC Blogが1割以下という状況でした。活用いただくための情報の充実や、周知の強化を重ねていく必要があると感じます。

JPNICの情報発信媒体に関する利用状況

 


2014年度から開始したこのIPv6対応状況に関するアンケート調査ですが、回答者が毎回同じわけではないこともあり、年度ごとに対応状況が一進一退しています。ただし、回答の傾向や自由記述の内容を見ていくと、着実にIPv6の必要性に関する認識は変化してきていると感じます。

今後も引き続きIPv6の普及促進活動と並行しながら対応状況の調査をしていきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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