News & Views コラム:インターネットの可能性を人々に ― グローバルNGO 進歩的コミュニケーション協会(APC)の活動 ―
pr_team コラムメールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでもご紹介しています。2022年5月は、JPNICのインターネットガバナンス関連の活動にご協力いただいている市民コンピュータコミュニケーション研究会(JCAFE)の浜田忠久さんに、グローバルNGOである「進歩的コミュニケーション協会(APC)」の活動についてお書きいただきました。
市民社会の立場からインターネットの形成に大きな役割を果たしてきたグローバルNGOに、Association for Progressive Communications (APC, 進歩的コミュニケーション協会)という組織があります。APCは1990年、社会変革に取り組む運動に情報コミュニケーション技術を提供するために、7ヶ国のコンピュータ・ネットワーク関連組織により設立されました。その後世界中に加盟組織を増やし、現在は62のNGOと30名ほどの個人が加盟するネットワーク型NGOとして、活動は74ヶ国に及んでいます。設立当初から「南」と「女性」を活動の柱とし、社会的弱者のエンパワーメントに注力してきました。現在は加盟組織の大半が途上国の団体で、事務局も南アフリカ共和国にあります。多くの国際NGOが欧米に本部を置いているのと対照的と言えます。
APCは1992年の環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)、1995年の第4回世界女性会議などで、グローバルな市民の情報共有と議論の場をコンピュータ・ネットワークにより提供する雛形を作りました。特に、1990年代に国連に対してインターネットの活用を働きかけたことは、特筆すべき功績の一つと言えるでしょう。また2003年、2005年に開催された国連世界情報社会サミット(WSIS)、2006年から毎年開催されている国連インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)において、市民社会セクターの中心的な存在として重要な役割を果たしています。設立当初から、市民社会の豊かさや社会的公正を実現するために、インターネットの可能性に目を向けて活動してきました。イギリスの国際政治学者ピーター・ウィレッツは、「もしAPCを設立するという決定がなされていなければ、インターネットは今日あるように公共的でオープンなプラットフォームになっていなかった」と述べています。
私自身は、1980年代後半に職場の研究所でインターネットを使い始めました。その時にインターネットの開放的な基本理念に驚嘆し、社会を根本的に変える可能性をもった技術だと確信をもちました。1991年の初頭にAPCの存在を知り、その日本における拠点を作る活動を始めて、1993年にJCA (現JCAFE)、1997年にJCA-NETという団体を有志と共に設立し、日本のNPO活動のインターネット活用を30年近くサポートしてきました。さらに、APCの日本における加盟組織として活動しています。今後も、望ましい情報社会のあり方を多くの方と議論し、「市民のためのインターネット」の実現に向けて動きたいと考えています。
■筆者略歴
浜田 忠久 (はまだ ただひさ)
JCAFE 代表。JCA-NET 理事。数理アカデミー代表。立教大学ほか非常勤講師。