不確実性に挑むこれからのピアリング ~Internet Week 2025 プログラム委員インタビュー第4弾~
event_team Internet Week JPNICからのお知らせ JPNICのイベント2025年11月開催の Internet Week 2025(IW2025)。「挑戦×経験×世代 ~フルスタックで“不確実”の先へ~」というテーマのもと、インターネット運用に関わる多様な立場の人々が集い、技術と知見を共有する場です。
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プログラム委員による、見どころを連載ご紹介しています。第4弾となる今回は、「不確実性に挑む ― これからのピアリング」です。技術とビジネスの両面からピアリングの最新動向を掘り下げます。
ピアリングや相互接続を取り巻く環境は、今まさに大きな転換期を迎えています。OTT(Over The Top)事業者によるピアリングポリシーの変更や、クラウド・AI・エッジコンピューティングの台頭により、トラフィックの傾向も大きく変化しています。さらにルーティングセキュリティの強化など、AS運用者に求められる対応も多様化しています。
このプログラムの企画を担当した山口勝司さん(一般社団法人 Home NOC Operators’ Group/ビッグローブ株式会社)にお話を伺いました。
■ ピアリング環境の変化に向き合うために
―このプログラムを企画した背景を教えてください。

山口:昨今、GoogleなどOTT事業者のピアリングポリシー変更が相次ぎ、ピアリングが難しくなりました。ISP側は戦略の見直しを迫られています。また、AIやクラウド、エッジコンピューティングといった新しい潮流により、トラフィックの流れや考え方も大きく変わりました。
技術的な視点においてにもルーティングセキュリティの強化が求められるなど、ピアリングをめぐる状況はかつてないスピードで進化しており、こんな風に環境面で大きな変化が起こっています。
多くのAS運用者においてコスト面、品質面でピアリングや相互接続は重要です。
最新動向や戦略等の論理的な考え方に関する情報を提供することにより、今回のセッションでは、そうした変化を正しく捉え、論理的にピアリングを考えるための視点や情報を提供することを目指しています。
■ 技術×ビジネスの両輪で学ぶ2名の講演者
― なるほど、論理的にピアリングを考える、ですね。そのために、講演者にはどのような方をお招きしましたか?
山口:「グローバルな視点からピアリングを語れる方」をお二人選びました。
蓬田 裕一さんはIIJでAS2497の運用に携わり、ピアリングの他、ルーティングセキュリティなどバックボーンネットワーク設計にも深く関わられています。技術的な実践と知見を中心にお話しいただきます。
あわせて、ビジネスや法規制などの視点も踏まえてグローバルな視点でピアリングについて話せる方として、川村 聖一さんに登壇いただきます。川村さんは現在はフリーランスとして活動されていますが、今年の春までは米国でGoogleに勤務されており同社の相互接続に関わられていました。非技術的な側面を含めたピアリングの話をしていただきます。
■ 属人的なピアリングを、論理的に整理する
― プログラムの中で、特に注目してほしいポイントや見どころを教えてください。
山口:ピアリングの世界はどうしても属人的になりがちです。「誰かに聞いた話」や「経験則」に頼るケースも多いですが、今回は最新の動向をもとに論理的に考える方法を提示したいと思っています。
また、ルーティングセキュリティをはじめ、AS運用に欠かせない技術的テクニックについても最近の変化を踏まえて整理する予定です。
■実務者にも、これから学ぶ人にも“フルスタック”な知識で、不確実な未来を読み解く
― Internet Week 2025 のテーマ「挑戦×経験×世代 〜フルスタックで”不確実”の先へ」との関わりは?
山口:最初にも述べた通り、クラウドやAIの発展により、ピアリングやAS運用のあり方はまさに「不確実」な状況にあります。
単純にL2/L3などの技術のことがわかるだけではなく、ビジネスやポリシーな視点、つまり法規制・社会課題・ビジネスなどを理解する「フルスタック」な知識が求められいると思います。今回のプログラムはその実践の場といえるかもしれないですね。
― 特にどんな方におすすめですか?
山口:AS運用やピアリングに携わっている方はもちろん、通信サービスの企画や予算管理に関わる方、ビジネス要素に興味のある方にもおすすめです。
また、大学やサークルでAS運用を学ぶ学生・若手エンジニアにも理解しやすい内容です。
基礎的な知識があれば、深い専門性がなくても十分に楽しめるような構成になっているかと思います。
■ つながり合いから生まれる新しい対話を
― このプログラムを通じて期待することはどんなことでしょうか?
山口:ピアリングやAS運用は「他の組織とつながること」そのものです。
ISPとコンテンツ事業者など立場の異なる関係者が互いに理解し合い、日本のインターネットの発展につながるような“対話の場”になればと思います。
また、学生や若手など、世代を超えたつながりが生まれる場にもしていきたいですね。
■ 最後に ― 会場でお会いしましょう!
山口:ピアリングやAS運用に関わる方であれば、参加して損はないプログラムです。
なおこのプログラム後の18時45分からは、同会場にて「Peering in Japan BoF」も開催予定ですので、ぜひ続けてご参加いただき、ピアリング関係者同士で交流を深めてください。
会場でお会いできることを楽しみにしています!!
プログラム概要
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日時:2025年11月26日(水) 17:00 ~ 18:30
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会場:KFC Hall & Conference 2階 Annex
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講演者:
- 蓬田 裕一(株式会社インターネットイニシアティブ)
- 川村 聖一(フリーランス通信インフラアドバイザー)
- URL:https://internetweek.jp/2025/archives/program/c17
