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IETF国際動向 – 第124回IETFミーティング概要とBOFより-

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第124回IETFミーティング(IETF124)が、2025年11月1日(土)~7日(金)にかけて、カナダ・モントリオールで開催されました。

IETFミーティングでは、土曜日と日曜日に行われるハッカソン・併催のIEPG (Internet Engineering and Planning Group)・HotRFCのあと、平日にWG会合・BOFと全体会合(Plenary)が行われています。本稿では、全体会合と新たに設立されたWG、BOF、筆者なりにピックアップした話題をお届けします。

 第124回IETFミーティング 概況

カナダのモントリオールで開催されたIETF 124は、2025年11月1日(土)から7日(金)の日程で行われました。現地参加の登録者数が956名で全体の55%、リモート参加が795名(全体の45%)、ハッカソンの参加登録者数が現地参加とリモート参加を合計して583名とのことです(*1)。ここ2年では参加人数が最も多く、チェアの発表資料によると毎年3月開催のIETFミーティングが他の月の開催よりも多い傾向があるようです。RFCの公開数も増加傾向にあり、前々回(IETF 122)から前回(IETF 123)までの公開数は70を超え、過去3年間の中でも最多になっています(*2)。

(*1) IETF Chair and IESG Report (Slides)
       https://datatracker.ietf.org/meeting/124/materials/slides-124-ietf-sessc-ietf-chair-and-iesg-report-slides-00

(*2) IETF Chair and IESG Report 12
       https://datatracker.ietf.org/meeting/124/materials/slides-124-ietf-sessc-ietf-chair-and-iesg-report-124-01

全体会合より

インターネットのコミュニティにおいて継続的な貢献をされた個人や組織に送られる、ジョン・ポステル功労賞(Jonathan B. Postel Service Award)の受賞者の発表がありました。今回の受賞者は、1992年の”We reject: kings, presidents, and voting. We believe in: rough consensus and running code.(我々は王、大統領、そして投票を拒否する。我々が信じるのは、大まかな合意と実行可能なコードだ)」という言葉で知られるデビッド・クラーク(David Clark)氏です(*3)。1979年頃、IAB (Internet Architecture Board)の前身であるICCB (Internet Configuration Control Board)の議長を務められたあと、インターネットのプロトコル・アーキテクチャの検討においてIABでも活躍されました(*4)。

(*3) 2025 Postel Awardee David Clark, an Architect and Implementer of the Internet – Internet Society
       https://www.internetsociety.org/blog/2025/11/2025-postel-awardee-david-clark-an-architect-and-implementer-of-the-internet/

(*4) IAB | A Brief History of the Internet Advisory / Activities / Architecture Board
       https://www.iab.org/about/history/

前回のIETF 123ミーティングで告知のあった、IABとW3C共催の「オンライン・コンテンツアクセスへの年齢制限」ワークショップは、2025年10月7日(火)から9日(木)にかけてイギリス・ロンドンで行われました。開催レポートは年末に公開される予定です(*5)。

(*5) IAB/W3C Workshop on Age-Based Restrictions on Content Access (agews)
       https://datatracker.ietf.org/group/agews/about/

調査研究を担うIRTF (Internet Research Task Force)では、新たにSPACERG(宇宙・リサーチグループ)が設立されました。地上ではないネットワークの、アーキテクチャ・プロトコル設計・管理性に関する考察・およびアプローチに関する研究が行われる、とされています(*6)。

(*6) IRTF Systems and Protocol Aspects for Circumstellar Environments Research Group (SPACERG)
       https://www.irtf.org/spacerg.html

また、今回はANRP (Applied Networking Research Prize/応用ネットワーク研究賞)の受賞者の発表もありました。69候補のうち、受賞したのは下記の2件です(*7)。

SCTPのフォーマル分析: 攻撃の合成とパッチの検証
(A Formal Analysis of SCTP: Attack Synthesis and Patch Verification, Jacob Ginesin, Max von Hippel et al.)
ヤコブ・ギネシン氏、マックス・フォン・ヒッペル氏ほか

複数のIPアドレスでの通信を扱うことのできるトランスポート層プロトコルSCTP (Stream Control Transmission Protocol)において、指摘されていた脆弱性についてフォーマル・モデルを構築して分析すると共に、RFC9260による修正によって解決していることなどを証明。

ホストにおける輻輳制御
(Host Congestion Control, Saksham Agarwal, Arvind Krishnamurthy et al.)
サクシャム・アガルワル氏、アルヴィンド・クリシュナムルティ氏ほか

高帯域化などに伴う、ホストにおける輻輳つまりネットワーク・インターフェースとCPU/メモリ間のデータ交換を行うネットワークにおける輻輳に対する制御のアーキテクチャ hostCC を設計/実装。パフォーマンス向上を実証。

(*7) Applied Networking Research Prize
       https://www.irtf.org/anrp/

新設されたWG

前回のIETF 123(2025年7月開催)以降に設立されたWGを紹介します。

Domain Connect (dconn)

DNSレコードの設定をリクエストできるようにするプロトコルDomain Connectに関するガイドやOAUTH WGと連携したセキュリティに関する定義等を扱うWG
https://datatracker.ietf.org/group/dconn/about/

Secure Evidence and Attestation Transport (seat)

アテステーションに関するTLSやDTLSでのサポート・ユースケースを扱うWG
https://datatracker.ietf.org/group/seat/about/

Web Bot Auth (webbotauth)

AIの学習に使われるボットの認証や識別を扱うWG
https://datatracker.ietf.org/group/webbotauth/about/

Open Cloud Mesh (ocm)

クラウド間ファイル交換における連携を扱うWG
https://datatracker.ietf.org/wg/ocm/about/

BOF の動き

IETF 124では、BOF(Birds of a feather)が二つ行われました。

PKI, Logs, And Tree Signatures (plants)

公開鍵基盤(PKI)と Certificate Transparency (CT)において、耐量子暗号アルゴリズムを使ったデジタル署名による影響を軽減することを目的とした会合です。公開鍵が長くなることによるCTログ巨大化や、TLSハンドシェイクの遅延に対して、より軽量な証明書の形式やCTログの構造を検討します。ACME (Automated Certificate Management Environment)に関連する方式も扱うとされています。
https://datatracker.ietf.org/meeting/124/session/plants

Authenticated Transfer (atp)

ネットワーク的なロケーションではなく、新たなスキーマタイプによって識別を行うことで、複数のソーシャルネットワークにおけるデータ交換やデータ同期をしやすくする仕組みを扱うとされています。
https://datatracker.ietf.org/meeting/124/session/atp

今後のIETF予定

次回のIETF 125は、2026年3月14日(土)から20日(金)にかけて、中国・深センでの開催が予定されています。参加登録は開始されておりスーパー早期割引は2026年1月26日(月)が期限となっています。

今後のIETFミーティング予定

IETF 125:2026年3月14日(土)~20日(金) 中国・深セン
IETF 126:2026年7月18日(土)~24日(金) オーストリア・ウィーン
IETF 127:2026年11月14日(土)~20日(金) 米国・サンフランシスコ
IETF 128:2027年3月6日(土)~12日(金) (アジア)
IETF 129:2027年7月17日(土)~23日(金) (ヨーロッパ)

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