APNIC 61でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案のご紹介
ip_team IPアドレス 他組織のイベント2026年2月4日(水)~12日(木)の日程で、APRICOT 2026/APNIC 61カンファレンスが開催されます。開催地はインドネシア・ジャカルタです。
会議への参加にはWebサイトからの参加登録が必要となりますので、参加を希望される方はご登録をお忘れなくお願いします。
APNICでは、ポリシーSIG (Special Interest Group)において、IPアドレス・AS番号の分配ポリシー(以下、ポリシー)に関する議論を行っています。ポリシー提案はポリシーSIGのメーリングリストで公開され、議論を行い、MLでの議論を踏まえて、年2回開催されるオープンポリシーミーティング(OPM)でface to faceでの議論・コンセンサス確認を行います。この期間を通じて、提案のブラッシュアップが行われていきます。
今回のオープンポリシーミーティングでは、継続議論1件、新規提案が1件の計2件の提案に関して議論が予定されています。
- prop-164: Allocations of IPv6 Resources longer than a /32 with a nibble boundary alignment(IPv6アドレスの最小割り振りサイズ変更)
- prop-168: Increase to maximum IPv4 delegations(IPv4アドレスの最大割り振りサイズ拡大)
以下で各ポリシーの概要や、議論のポイントについてご紹介します。
prop-164: Allocations of IPv6 Resources longer than a /32 with a nibble boundary alignment(IPv6最小割り振りサイズの変更)
現在、APNICにおけるIPv6アドレスの最小割り振りサイズは /32と定められています。本提案は、この最小割り振りサイズを/36へ縮小しようとするものです。
現行ルールでは最小サイズが/32であるため、それより小さいサイズでの「割り振り」は行えません。一方で、実際に必要なのが/36程度である組織が上流組織から/36の「割り当て」を受けた場合、そのアドレスを下流へ再割り当てすることはできません。
つまり、/32の割り振りを受ければアドレス数が過剰になる一方、/36の割り当てでは下流への再割り当てができないというジレンマが生じます。
この問題を解消するため、/36という新たな最小割り振りサイズを設けることで、より実態に即した、効率的なアドレス利用を実現しようというのが本提案の趣旨です。
前回の議論では、用語の不整合や、提案者が「登録情報の不正確さをなくしたい」と述べた点が焦点となり、議論が複雑化しました。その結果、提案の本質が十分に理解されないまま、コンセンサス確認の段階を迎えてしまった印象があります。
しかし、提案者の真意は「登録情報の正確性」そのものにあるわけではありません。仮にそれだけが目的であれば、現行ルールの下で/32の割り振りを受ければ解決します。本質は、最小割り振りサイズそのものが大きすぎるため、これを小さくしたいという点にあります。
必要なサイズに応じて、より細かく分配した方が効率的ではないか、という考え方自体は理解できます。ただし、IPv6アドレスはIPv4とは異なり、極めて広大なアドレス空間を持っています。そのためIPv6では、アドレス利用効率以上に、経路集成(ルーティング集約)の重要性が重視されるという側面があります。
また、提案されている/36というサイズについても、その根拠は「ニブルバウンダリである」という点にとどまっています。本当に/36が適切な最小サイズなのか、さらに小さくてもよいのではないか、あるいは最終的にはPI割り当てと同じ/48で十分なのではないか、といった疑問も残ります。
効率性を重視するのか、それとも経路集成を優先するのか。この点については考え方が分かれやすく、本提案に対する評価も意見が割れるだろうという印象です。
なお、本提案は提案者の意向により、今回のOPMでは議論のみが行われ、コンセンサス確認は実施されない予定となっています。
prop-168: Increase to maximum IPv4 delegations(IPv4アドレスの最大割り振りサイズ拡大)
現在、APNICにおけるIPv4アドレスの分配は、1組織あたり最大/23までと定められています。本提案は、この上限を/22まで拡大することを提案しています。あわせて、以下のような条件が設定されています。
- 新規申請者に限らず、既存の契約組織であっても、保有する総IPv4アドレス数が/22以下であれば追加申請を可能とします。ただし、過去にアドレス移転によってアドレスを放出した実績のある組織は、追加申請の対象外とされます。追加割り振りを受けた組織については、すべての割り振りアドレスを対象として、追加割り振り日から5年間の移転を禁止する制約が設けられます。
- 利用可能プールが枯渇した場合には、/16をIPv6移行用の特別プールとして確保することとされています。このプールから分配されるアドレスは移転を禁止し、不要となった場合にはAPNICへ返却することが求められます。
現在、IPv4アドレスは返却済みアドレスを再利用するプールから分配されています。このプールは、現在の分配ペースが維持された場合、2035年前後に完全枯渇すると予測されています。
提案者は、レジストリがこのアドレスを長期間ストックし続けるよりも、既存のニーズに応じて分配した方が有意義であり、その結果としてアドレス移転やリースの減少につながると主張しています。
しかし、この点については懐疑的な見方も残ります。現在APNICでは、アドレス移転を希望する組織をリスト化するサービスを提供していますが、このリストを見ると、/22よりも大きなアドレスサイズを希望する組織の方が多い状況です。
また、本提案では追加割り振りを受けた組織に対し、全保有アドレスを対象に5年間の移転禁止を課していますが、ビジネス環境は5年という期間の中でも大きく変化し得ます。その結果、必要なアドレス数が増減する可能性も十分に考えられます。この制限は、かえってアドレスの流動性を低下させ、割り振りを受けた組織がアドレスを死蔵する事態を招きかねないとの懸念があります。
レジストリでのストックをできるだけ引き延ばすよりも、移転やリースといったレジストリを起点としないアドレス流通を減らしたいという思想自体には、一定の理解が示されているようです。一方で、将来的には新規参入の障壁となる可能性を指摘する声もあり、本提案は賛否の分かれる内容となっています。
加えて、APNIC事務局が公表しているポリシー提案実装に伴う影響予測では、実装後数か月以内に既存の利用可能プールが枯渇する可能性が示されています。短期的な申請数の大幅増加も見込まれており、オペレーション上のリスク対策や人員補強が必要になる点についても懸念が示されています。
以上、2件のポリシー提案のご紹介でした。気になるものはぜひAPNICのWebページを確認する、カンファレンスに実際に参加するなどして追ってみてください。カンファレンスでの議論結果に関しては、JPNICのメールマガジン-JPNIC News & Views-でご報告を予定しています。皆様と現地会場でお会いできますことを楽しみにしております。

