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ICANN報告会へのお誘い~RDS/WHOISを中心とした~

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1. ICANN報告会について

JPNICでは、年3回開催されるICANN会議の約1ヶ月後に報告会を開催しています。直近では2017年6月26日(月)から同29日(木)まで開催された、第59回ICANNヨハネスブルク会議の報告会(第49回ICANN報告会)を、8月8日(火)に開催します。

第49回ICANN報告会開催案内:
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2017/20170719-01.html

報告会では全体概要、および以下の支持組織(SO)と諮問委員会(AC)についての報告が毎回行われます。

他に、各回には旬に応じて他の支持組織/諮問委員会および配下の部会、ならびにコミュニティ横断作業部会(CWG)もしくは特定のテーマなどについて報告しています。

第49回ICANN報告会のプログラムは以下の通りです(発表者敬称略)。

  1. ICANNヨハネスブルク会議概要報告
    ICANNジャパン・リエゾン 大橋 由美
  2. 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
    株式会社日本レジストリサービス 高松 百合
  3. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
    総務省 総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 角田 梨翔
  4. ICANN理事からの報告
    JPNIC 前村 昌紀
  5. 次世代gTLD RDSポリシー策定WG検討状況報告
    ICANN GNSO評議会メンバー ラフィク・ダンマク
  6. レジストリ・レジストラ関連状況報告
    株式会社インターリンク ジェイコブ・ウィリアムズ
  7. 次期新gTLD募集手続き検討状況報告
    GMOブライツコンサルティング株式会社 マイケル・フレミング

第59回ICANNヨハネスブルク会議は、「ポリシーフォーラム」と呼ばれる、最もコンパクトな構成の会議でした。日程は4日間(参考:毎年3月頃開催の「コミュニティフォーラム」は6日間、10月~11月頃開催の「年次会合」は7日間)で、SO/ACおよびその配下のステークホルダーグループや部会によるポリシー策定作業およびアウトリーチに焦点を当てています。そのため、歓迎式典、パブリックフォーラム、公開理事会などは省略されています。

2. 今回のハイライト

今回の会議では、GNSOのWHOISを置き換える次世代登録ディレクトリサービス(RDS)ポリシー策定作業部会(GNSO RDS Policy Development Process (PDP) WG)、および次回新gTLD募集手続き関連ポリシー策定作業部会(GNSO New gTLD Subsequent Procedures PDP WG)でなされた議論が、主なものだったのではないかと思います。それぞれ総括的なポリシーの議論であり、いまだ大きな節目と呼べるものを迎えてはいませんが、潤沢に時間を取って議論が進められたため、ポリシーフォーラムという形式を有効活用したと言えると思います。それ以外に注目を集めたのが、欧州連合(EU)が制定した、GDPR(General Data Protection Regulation; 一般データ保護規則)です。

次回新gTLD募集手続き関連ポリシー策定作業部会(GNSO New gTLD Subsequent Procedures PDP WG)は、次回新gTLD募集手続きに関連するポリシーを策定するために設立されたもので、ICANN 59でも十分時間を取って議論されました。ちなみにICANN報告会で本WGについてご報告いただくフレミング氏(GMOブライツコンサルティング株式会社)は、作業トラック2の共同チームリーダーを務められています。

GDPRについては、欧州以外およびICANN以外でも議論となっていますが、レジストリやレジストラは個人情報を扱うため、直接影響することもあり、ICANNに及ぼす影響について議論されました。

以降、ICANN報告会でここ数回の定番となっている、RDSのポリシーについて検討するWGについて簡単に説明します。検討内容は膨大なため、報告会では前回からの差分が報告されることになるかと思いますので、基礎知識としてお読みください。

3. 登録ディレクトリサービス(RDS)/WHOIS関連ポリシー策定

3.1. RDS PDP WGとは

WHOISを置き換える次世代登録ディレクトリサービスポリシー策定作業部会(GNSO RDS PDP WG)は、gTLD登録データおよびディレクトリサービスに関する根本的な要求と、これら要求を解決するのに必要なポリシーの枠組みおよび次世代RDSとは何か、ということを議論するためのWGです。

ICANNではWHOISの見直し(どの項目を公開するか、など)について、長期にわたり延々と続けられてきており、途中仕切り直しとなったこともありました。詳細は過去のICANN報告会発表資料(JPNIC前村による代表的なもの)に譲りますが、これまでしっかりとしたポリシーがなかったドメイン名WHOISにおいて、収集するデータ項目、公開する項目、対象者など広範囲にわたる議論を行うことを目的に、2015年5月にICANN理事会がポリシー策定プロセス(PDP)を開始した後、RDS PDP WGが2016年1月に設立されました。RDS PDP WGは、広範囲にわたる対象について一から検討する必要があり、全貌がどんなものか知っていただくために、まずその目的を以下に説明します。

3.1.1. そもそもの目的

2015年4月のICANN理事会決議によれば、PDPの検討対象について、次のようになっています。

gTLD登録データの収集、保守、アクセス提供に関する目的を定義し、データ保護のためのセーフガードを検討すること。これにはgTLDディレクトリサービス専門家作業部会(EWG)最終報告書の勧告を参考とし、適切であれば新たなgTLDポリシーを創設すること。

なお、EWGは本WGの設立前、2012年から2014年にかけて存在したWGです。EWGが定めた高レベルのWHOISの目的は、以下のようなものでした。

  • 正確で信頼でき、かつ均一な登録データへの適切なアクセスの提供
  • 登録者情報のプライバシー保護
  • 登録者への連絡についての可能性の見極め、開始、維持を行うための信頼できるメカニズムの有効化
  • 消費者保護、サイバー犯罪の捜査、知的財産権保護などの登録者が関与する問題点を扱う枠組みを支援
  • 適切な法執行のニーズを扱うための基盤を提供

3.1.2. RDSに関する各々の目的の最終的な目標

  1. ICANNの使命との整合性
  2. gTLDに関連する他のコンセンサスポリシーとの整合性
  3. 適切な法律への準拠を可能にする枠組みの提供
  4. RDSに関する根拠を明確に表現
  5. RDSの目的について登録者等と意見交換
  6. RDS WGの目的と利用との間の十分な関係を確立
  7. gTLD登録データの目的:

3.1.3. 登録データおよびRDSの具体的な目的

1. gTLD登録データの目的:

  • ドメイン名のライフサイクルについての情報提供
  • ドメイン名登録記録の提供

2. RDSの目的:

  • gTLDのドメイン名、ドメイン名の連絡先、ネームサーバーなどに関する信頼すべき情報源の提供
  • ドメイン名の連絡先の確認、およびドメイン名の連絡先との情報交換促進

3. RDSポリシーの目的:gTLD登録データの正確さ向上の促進

3.2. 最近の議論

ICANN 59ヨハネスブルグ会議時点では、WGは以下の重要コンセプトについて検討しています。詳細については、ICANN報告会で日本からのWGメンバーであるラフィク・ダンマク氏にご発表いただく予定です。

  1. 利用者および目的
  2. データ構成要素:何のデータが集められ、保管され、公開されるべきか

「最小公開データ集合(Minimum Public Data Set)[1]」に含まれるべき登録データの項目:

  • DNSSEC関連データ
  • thinデータとみなされる項目(Thin WHOISで表示される情報:レジストラ情報、登録ステータス、登録日、ネームサーバー情報、WHOIS更新日時等)
  1. プライバシー
  2. アクセス制限

4. 最後に

ドメイン名登録者およびドメイン名事業者のみならず、インターネットを利用する多くの人が利用するであろう、WHOISの発展形であるRDSがどうなっていくかは、ご興味をお持ちの方も多いと思います。今後のRDSおよびgTLDの次回募集などをはじめとする、ICANNで起こっていることを知るよい機会ですので、ぜひ第49回ICANN報告会に奮ってご参加ください。

申し込みはこちら:
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2017/20170719-01.html


[1] まずはThin WHOIS(.com, .netなどで使われている、登録者データをレジストリが持たずレジストラのみが持つ方式)で表示されるデータ項目(thin data、後に最小公開データ集合Minimum Public Data Setと呼称)について検討した上で、それ以外の項目に広げることになっています。

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