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HKNOG2.1レポート

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JPNIC 奥谷です。香港のネットワークオペレータのグループであるHKNOGに3月18日(金)に、発表者として参加をしましたので、その様子をご紹介したいと思います。


HKNOGは2014年から年に2回開催し、うち1回は終日、もう1回は半日開催の形式をとっているそうです。会議の番号は、0からスタートして番号が繰り上がる回が終日開催、半日開催の場合はx.1としており、今回は6回目にあたる半日開催の回にあたります。

会議冒頭で参加登録が約200名あったとの報告があり、香港全体の人口規模そして開催開始から間もないことを踏まえると、私の想像していた数を超える参加者数でした。直接全員の参加者構成を確認したわけではないですが、運用に直接関わっている技術者だけではなく、業界内のネットワーキングとして、サービス企画や営業に関わっている方も比較的多く参加されていたのではないかとの印象です。

香港人にとっての母国語は広東語ですが、海外からの参加者もいることを考慮し、全員が英語で発表、質疑も英語で実施されています。香港外から参加する立場では、参加者との交流も図りやすく、「アウェイ感」を感じることなくすんなりと参加することができました。

開催後、プログラム委員のメンバーに「英語限定にすると発表者は質疑で意見を述べる人が制限されることはないのか」と質問してみたところ「ゼロではないかもしれないけれど、この業界でそういう人はあまりいないだろう。」ということです。イギリス統治自体の経緯から、現在も、中文と並んで英語が公用語であることもあるのではないかと思います。

実際、参加者の興味を喚起する発表に対する質疑応答は活発で、開催後の懇親会でも英語で参加者の方が話しかけてきてくださったり、グループで広東語で話してても、外国人が入るとさっと英語に切り替えるなど、大変風通しがよいコミュニティであるように思います。オーストラリア・パースから今回初めて参加されてた技術者も「また参加したい」との感想を述べていました。

プログラムの内容については、基本的には自社のサービスの紹介が多かった印象です。プログラム委員の一人の方によると、自社サービスの紹介以外で、発表者を集めるのはまだなかなか苦労する状況ということでした。自社サービスの紹介以外の発表としては、日本からの発表者であるIIJの松崎さんの「OTT – Traffic and Trends」と、私、JPNIC奥谷からの「IANA Stewardship Transition – What relevance does it have?」がありました。プログラムの一覧はこちらのページに掲載されています(ただし、資料は掲載されていません)。

松崎さんの発表は技術的な内容でかつ、企業色が出ていないことが新鮮だったのか、かなり多くの参加者から質問、コメントが寄せられていました。この中には、IIJが多くのトラフィックが流れることを確認しているCDNの一覧がすべて外資企業であったことから、「なぜ日本でトラヒックを出しているのが、外資系のCDNばかりなのか。もっと日本企業にもCDN事業を頑張って欲しい」といったコメントもありました。


クリックするとPDFファイルが開きます。

私は前述の通り、「IANA機能監督権限移管~どのような影響があるのか?~(IANA Stewardship Transition – What relevance does it have?)」という発表を行いました。インターネットガバナンスに関する動向はオペレータにとって馴染みが薄く、耳にする機会が少ないので、情報共有をしておきたいという話をプログラム委員の方からいただいたことがきっかけです。

運用に関わるテーマではないため、実際どの程度興味をもってきいていただけるのかが気がかりでしたが、その前の週のICANN55会議で大きな進捗を見せたこともあるのか、当日思っていた以上にまじめにきいてくださっていました。なお、大きな進捗(ICANN55会議での理事会決議)については、JPNIC blog「ICANN理事会がIANA機能監督権限移管提案を承認」(2016/03/14更新)でご紹介しています。

今回このHKNOGで司会を務めたのは、APNIC41会議にてAPNIC理事に選出されたKam Sze Yeung氏でしたが、ちょうどHKNOGの先月に選出されたタイミングでもあり、Yeung氏への祝福と、同じく香港出身でこれまで十数年理事を務めたChe-Hoo Cheng氏へのねぎらいを表し、参加者が拍手する一幕もありました。

また、休憩時間にはお茶とケーキ等が提供され、参加者同士の交流も和やかに行われていましたが、休憩時間終了後、司会のYeung氏が参加者への着席を呼びかけても、皆さん話が盛り上がっているのかなかなか着席しないため、そのときだけ広東語に切り替えて着席を呼びかけるという面白い場面も目にしました。英語も公用語としてある程度親しんでいるとはいえ、やはり注意されるときは母国語の方が響くのでしょうか。

(休憩中に各種軽食とコーヒーと共に歓談する参加者 – 背景に見えるのはスポンサーのバナー)

その他、会議本体に直接関わりはないですが、参加者の一人は「ビジネスに結びつかないインターネット業界においては常識である思想は慣習を浸透させることが難しく、例えば、パンチングホールはやるべきではないと説明をしても、特に既に営業が提案し案件をとってきた場合には非常に難しく、そこが悩ましいんだ」といったことを話してくれました。

また、日本からBBIXやセイコーソリューションズ等がスポンサーをしていることもあり、国内からの参加者も、私を含めて6、7名見受けられ、普段日本ではあまり直接お話をする機会のない方々とお会いし、お話することができたことも、参加前には想定していなかった意外な体験でした。そして、親日家の方が多いのか、日本でビジネスをすることが身近なのか「今週/来週日本に行くよ。」という方が少なくとも、別々のグループで5、6名いらっしゃいました。

このようにHKNOGは香港外からの参加に開けており、外からの情報が入りやすい環境です。一方で、まだ立ち上がったばかりということもあり、自社サービス紹介以外のコンテンツ、ローカルな運用ネタに関わるをどう発展させるのかはまだ今後の展開に期待する部分なのではないかと思いました。

なお、アジア太平洋地域では昨今、BDNOG(バングラディシュ)、BTNOG(ブータン)、SGNOG(シンガポール)、MYNOG(マレーシア)等、国単位のNOGが定期的に開催されるようになってきており、私はいずれも参加したことはありませんが、これがそれぞれの国の事情を踏まえた運用情報の交換や技術者間のネットワーキングになっているのであれば、喜ばしいことですね。

(司会を務めたKam Sze Yeung氏と発表後に - 手元のギフトが全発表者に手渡されていました)

(HKNOGプログラム委員メンバーと - この後みんなで食事に行きました)

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