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NETmundial Initiativeを振り返って

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インターネット推進部の前村です。

本日JPNICから、「NETmundial Initiative宣言の公表および活動の終了について」というアナウンスをしました。
(以下NMI宣言と呼びます。)

NETmundial Initiative(以下、NMIと呼びます)は、2014年4月にブラジル・サンパウロで開催されたNETmundial会合の協調精神を引き継ぎ、NETmundial会合の成果文書である、NETmundial声明に示されたインターネットガバナンスに関する原則の実施を推進するために、ICANNCGI.br(ブラジルインターネット調整委員会)、世界経済フォーラム(World Economic Forum, WEF)の三者の呼びかけで始まった活動です。声明で示された原則とロードマップに従って、「全ステークホルダー間での、実践的な協力関係を媒介するプラットフォーム提供をめざして」いるとしていました。2015年11月に発行したJPNICニュースレターに詳解しました。左のリンクから参照可能ですので、ぜひご覧ください。


私は、NETmundial会合のマルチステークホルダー実行委員会(Executive Multistakeholder Committee, EMC)に引き続き、NMIの調整評議会(Coordination Council, CC)のメンバーを務めました。

この度のNMI宣言は、原文を一読しても少し分かりにくいのですが、今までの活動の整理を行った上で、既存の成果物の継承先などを示しており、冒頭のアナウンスにも示した通り、事実上NMIとしての活動の終了を意味しています。このブログでは、調整評議会メンバーの目から、18ヶ月のNMIの活動を振り返ってみたいと思います。

まず、NMIに関してJPNICが行ったアナウンスを以下に示しながら、それぞれのタイミングでどういうことをやっていたかを示していきます。

●2015年2月5日:
NETmundial Initiative運営規約の策定に向けての意見募集(期限:2月16日)および調整評議会メンバーに前村昌紀選任のお知らせ

調整評議会メンバーの選定は2014年末でしたが、運営パートナーと呼ばれている設立発起3団体:ICANN、CGI.br、WEFによる立ち上げ準備は2014年春ごろから進んでおり、その段階で、進め方が不透明であるなどの指摘が相次ぎました。「I*」と呼ばれる技術コミュニティ関連団体でも、このNMIに対して一歩引いた立場を取る団体が目立つ中、不透明であればなおさらのこと、運営に影響を及ぼしうるポジションに誰か置くべきと考え、JPNICの機関決定を経て、NETmundial会合でEMCを務めた私が出馬するという方向性を固めたのでした。

●2015年4月8日:
NETmundial Initiativeによる「スタンフォードコミュニケ」の公表および運営規約案に関する意見募集開始について

2015年3月31日にスタンフォード大学で行われた作業会合は、当初は運営規約を採択する目的で計画されたものでしたが、よりコミュニティの声を反映した運営規約を作るべく、作業会合と位置づけ、運営規約案を採択して意見募集するという目的に変更しました。

●2015年7月10日:
NETmundial Initiativeによる「サンパウロコミュニケ」の公表および運営規約の公開について

2015年6月30日にサンパウロで開催された調整評議会会合は、運営規約を採択して正式に活動を開始するということで、「設立会合」と位置づけられました。運営規約が、調整評議会が考えたNMIの形が最も良く表現された文書です。「IV.活動の範囲」に挙げられた六つの活動項目のうち、1.のNETmundial会合成果の実施推進、2.–4. の触媒機能の他に、5.–6.の途上国支援も活動範囲に含められ、意欲的なものになっています。

●2016年2月28日:「マドリッドコミュニケ」

実はJPNICからのアナウンスで、一つだけ会合成果が抜けています。それは2016年2月28日のマドリッドコミュニケで、私自身がAPNICカンファレンスとの競合でマドリッド会合に参加できなかったのが一因です。

マドリッドコミュニケを読むと、発足時に調整評議会が任期満了を迎える2016年6月以降の体制を、CGI.brを中心にした体制で検討する必要があること(つまり、ICANNとWEFが運営パートナーから降りること)と、この体制が定まるまで、次期調整評議会のメンバー候補の推薦を凍結すること、などが示されていて、この時点でNMIの活動が縮小方向に転回したことが分かります。2015年6月に採択した運営規約には意欲的な活動項目が並んでいたわけですが、この転回は、8ヵ月後の2016年2月の段階で、これらを持続的な活動に結びつく算段が付かなかったことを意味します。

●2016年7月21日:NETmundial Initiative宣言の公表

そしてここに至ります。敢えて簡潔にこの2年弱を表現すると、「成功に終わったNETmundial会合の精神を引き継いで、さらに協調的な活動を推進する媒介機能を作ろうと野心的な取り組みをやってみたが、軌道に乗せることが出来なかった」ということになると思います。

方針検討に専心した活動でも事務局機能などを含めコストは掛かります。さらに、グローバルなインターネットに関する、マルチステークホルダーの活動となると、掛かるコストは跳ね上がりますし、途上国支援という要素が必要になるのも必定でした。グローバルな協調活動を推進する媒介機能というアイディアは魅力的で、ソリューションマップのベータバージョンを眺めてもワクワクするものがありましたが、一方でそれを形にするのは、錚々たるメンバーをもってしても難しすぎたということかもしれません。

NETmundial会合のEMCは、正味半年、成果文書のとりまとめを行う作業でした。一方で今回はそれよりも長く、運営規約をはじめとするルールを作って活動を設計するという作業でした。NMIはNETmundial会合に引き続きマルチステークホルダー構成でしたが、各セグメントからのメンバーは、それぞれに有能でしたので刺激を受けましたし、良い経験になりました。

今後は、NETmundialフォローアップトラックとして、NETmundial声明の実施を見守る活動が残るわけですが、NMI宣言にも示されている通り、関連の国際会合で何度となく肯定的に取り上げられていることを含め、NETmundial声明が広くステークホルダーに受け入れられていることを実感します。また、NMIを通じて生み出されたソリューションマップと協調プラットフォームに関しても、今後1人でも多くの皆さんのお役に立てばと願うばかりです。

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