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第3回烏鎮サミットレポート

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インターネット推進部の前村です。

先週はインターネット関連のイベントが数多く開催された週で、韓国・ソウルでは第97回IETFミーティングが開催されていましたが、私は先々週に就任したICANN理事として初ミッションを仰せつかり、タイ・バンコクで開催されたITUのテレコムワールド、および中国・烏鎮で開催されたWorld Internet Conference Wuzhen Summit(以下烏鎮サミット)に参加してきました。

ここでは、烏鎮サミットの様子をお伝えしようと思います。
今回で第3回となる烏鎮サミットですが、私は初めての参加です。世界各国から1,600人を超える参加者があったようです。

景観地区と会場に圧倒される
現地に着いてすぐに圧倒されるのは、会場が位置する烏鎮景観地区です。烏鎮はもともと水郷として栄えてきた町のようですが、もともとも町並みに加え古い町並みを新たに作った部分も含め、景観地区として残されています。倉敷の美観地区に似ていますが、規模は桁違いに大きいです。中にはホテルや民宿、飲食店やいろいろなお店があり、散策を楽しむことができますが、景観地区への入場には入場料を支払う必要があります。


会場となったWuzhen International Internet Exhibition and Convention Center(WIIECC)は、この烏鎮景観地区の中にあります。今年初お披露目となる新たに建設された会場は、最新鋭の設備が整った堂々たるもので、会場名に「インターネット」を冠するものは世界に類がなく、中国の烏鎮サミットに対する意気込みが感じられます。

中国ICT業界の勢いを感じる展示と関連セッション
烏鎮サミットは「中国政府のインターネット政策に関するプロパガンダの場」として認識されることが多いのですが、今回現地で参加してみたら、別の観点での盛り上がりも感じ、印象が変わりました。その一因は、非常に盛況な展示会場です。

WIICCには大小取り混ぜて八つの展示ホールがあるのですが、このすべてに展示が設置され、Alibaba社やTencent社などのネットサービス事業者、キャリア、あるいは自動運転機能などを盛り込もうとする自動車メーカーなど大手の大きなブースだけでなく、スタートアップ企業が数多くひしめくように展示をしているスペースもあり、非常に活況で、中国のICT業界の総覧の様相を呈していました。展示以外にも、会議場メインホールでは、インターネットに限らず、AI、スーパーコンピューター、半導体などの最新技術15件に授けられる「最新科学技術業績賞」の受賞セッションが開催されるなど、中国のICT技術の盛り上がりが強く感じられました。

これに呼応して、China-Africa Internet Cooperation Forum というセッションが興味深く感じられました。

このセッションはタイトルの通り、中国とアフリカ諸国の協力関係をテーマとしており、つまり、国際支援、開発投資などを扱うものです。中国が近年展開しているアフリカ諸国への開発投資は目を見張るものがあり、アフリカ諸国からの期待も高いものがあるようです。これが、参加者の中で特にアフリカ諸国の方が多く感じられた理由のようにも思われます。

また、中国では近年「一帯一路」というスローガンで、中央アジア、東南、南アジアの開発と経済圏構築を標榜しており、これをタイトルに掲げたセッションも持たれていました。

中国ICT業界を総覧できる展示は、海外からでも見に来たいと考える会社は多いのではないかと思います。そして実際に、アフリカ諸国を始めとする世界各国からの関心が集まっています。中国の勢いと意気込みを感じさせるには余りあるものでした。

変わらぬ中国のインターネット政策の論調
昨年の第2回烏鎮サミットには、習近平主席も参加したことが話題になりましたが、今回はビデオメッセージに留まりました。論調は変わらず、「サイバー主権の重要性」「途上国にも公平となるためのインターネットガバナンス修正の必要性」と言った言葉が踊っていました。これは、オープニングセレモニーにおける政府高官、はたまた個別セッションにおける担当官のスピーチにおいても論調は一緒でした。

今回、書面におけるステートメントとしては、ハイレベル諮問委員会(High-level Advisory Committee, HAC)が採択したとする「烏鎮レポート」が、会期後に発表されました。第2回の際に組織委員会から発表された「烏鎮イニシアティブ」よりも表現は穏やかになっている感があります。会合中に発せられる言葉はこれよりは強く響いた印象がありますが、中国政府の一貫した主張は、垣間見ることが出来ます。

また、こういった中国の主張に、列席した発展途上国の高官から同調する発言が聞かれることもありました。中国の主張はこれらの国々に受け入れられやすいものと言えます。

登壇セッション
今回ICANN理事としてのミッションで、もう一人の理事 Asha Hemrajani氏とともに烏鎮サミットに出席しました。我々はForum on Global Governance in Cyberspace というセッションにおいて、私はCNNICのCEO、Xiaodong Lee氏とともに、この中のパネルディスカッションの一つの共同モデレーターを務め、Hemrajani氏はスピーチを行いました。

パネルディスカッションの様子。右から前村、Singh氏、Rausher氏、Wu氏、Vixie氏、Huang氏が見え、Huang氏の左にSeng氏と、共同モデレーターのLee氏が座っていました。

私が担当したパネルディスカッションでは、中国内外の6人の専門家をパネリストに招き、インターネットのインフラや技術革新について議論しました。それぞれの立場からの見解が披露された後、議論はセキュリティ脅威への対処などに焦点があたりました。AIやスーパーコンピューティングなど華やかな先端技術を支えるために、セキュアで安定したインターネットインフラを整備することの重要性が強調される結果となりました。

このセッションでは中国のCyberspace Administration of China (CAC) の担当官による発表もあり、中国の論調に沿ったものでした。この担当官とは席が隣合わせとなり、少し情報交換を行いました。このような話し合いを通じてお互いの考えを擦り合わせることが必要で、それこそがこのミッションの目的だと認識しているところです。

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