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IPv6 Summit in KANAZAWA 2016 レポート

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2016年12月12日(月)金沢市で開催された「IPv6 Summit in KANAZAWA 2016」についてレポートいたします。

金沢でIPv6 Summitが開催されるのは2011年以来2回目となります。

前日雪に見舞われた金沢市内でしたが、当日は気温は低いものの穏やかな天候で、月曜日にもかかわらず40名以上の方が参加されていました。


今回は、午前中にチュートリアルが設けられ、IPv6に対応したアプリケーション開発に関する注意点やTipsなど実践的な内容を、IPv6普及・高度化推進協議会で”アプリケーションのIPv6対応検討SWG”メンバーとして活躍されている、渡辺露文氏が講師となり、レクチャーしていただきました。

渡辺露文氏によるチュートリアル

 


13:00からいよいよIPv6 Summit in KANAZAWA 2016の本番開始です。

今回ローカルのアレンジをしていただいた、金沢大学北口善明先生から開会挨拶があり、続いて総務省赤川達也氏からの基調講演「IoT時代を支えるIPv6の普及促進に向けた総務省の取組」が行われました。
政府による日本再興戦略2016の中で、IoTを日本の産業界における成長分野とし、それに関連してIPv6普及も政府としての重要な課題と捉えて、さまざま取り組みを進めていることをご紹介いただきました。

基調講演の二つ目として、北陸先端科学技術大学院大学の丹康雄先生から、「IoTの技術動向」と題し、IoTの言葉の定義から掘り下げ、そこで用いられる技術標準の変遷についての紹介、セキュリティの課題、IoTシステム(サービス)に求められるネットワークアーキテクチャのあり方など、多様な観点からの解説、お話をいただきました。

丹康雄先生による基調講演

休憩を挟んで後半の講演は、JPNICによるIPv6アドレス分配の観点から見た普及状況とIPv4アドレスに関する状況を説明した「インターネットの現状とIPv6普及状況」を、またISOC日本支部橘俊男氏から、2016年11月28日に開催されたIPv6 Summit in TOKYO 2016をダイジェストした報告が行われました。

最後に定番のパネルディスカッションが行われたのですが、今回は「ものづくりとIPv6」というテーマで、IoT時代を踏まえた内容での討論でした。

右手がコーディネータをつとめるアラクサラネットワークス株式会社新善文氏
パネリスト:左手奥から、渡辺露文氏、丹康雄先生、金沢大学大野裕之先生、
一般社団法人コード・フォー・カナザワ理事井澤志充氏

このブログをお読みの皆さまは、日頃はユーザーが利用するネットワークとして、インターネットの設計、構築、運用、サポートといった業務を行っている方が多いと思います。また通信が問題なく実現するためには標準仕様に従った技術が不可欠だということも当然だと認識しているはずです。
一方、大野先生のお話の中で、電子デバイスなどを含めたものづくりに携わる人にとっては、標準化という言葉が嫌いで、さまざまな工夫でどうやって独自性を出していくかというところに関心が向かっていく、というのが非常に印象的でした。

特にIoTデバイスなどは、サイズといった物理的制約の他、メモリやバッテリなどの資源的制約があり、さらには設置環境が必ずしも快適なものではない中で、動作し続けなければならないということを考えると、IPでの通信、IPv6の実装が必ずしも合理的な選択ではない場合もあるということです。
丹先生からは、こういった点を踏まえ、さまざまなIoTの通信技術の中から、全体のアーキテクチャモデルを考えた選択と設計が重要であるといった指摘がありました。

また反面、井澤さんからは、そういった電子デバイスを構成する部品や開発プラットフォームなどが安価で容易に手に入れることができ、誰でもこういったものづくりが可能な状況になってきているということで、結果としてPCやスマートフォンといった既製品ではない、セキュリティをあまり考慮していない通信機器がインターネットにどんどん繋がってくる可能性も指摘されました。

ものづくりにおいては、さまざまな面でセキュリティへの配慮を啓発していく必要性があるというコメントを渡辺さんが行い、再度丹先生により、それと同時に、安全に利用できるようなアーキテクチャを考えていくことが重要であることが確認されました。

このような議論を踏まえ、最後にパネリストの方々から、今後IoT時代に向けてやっていきたいことなどが一言ずつ語られて、パネルディスカッションは終了となりました。

当日の会場の様子

 


IoTがもたらす未来が具体的に実現しつつある中で、さまざまな課題も浮き彫りになってきていますが、それ以上に期待するものが大きいということも実感しました。
今までのIPv6 Summitのパネルディスカッションとは少し趣向が異なり、IPv6という観点からは少し離れた感じもありましたが、逆にIPv6にフォーカスしない形で議論が進展していく状況になってきたのかな、とも感じました。

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