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ICANNのGNSO – gTLDのポリシー策定の最前線

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JPNICでは、gTLDのポリシーをインターネット資源管理の重要な一部と位置づけ、ICANNにおけるgTLDのポリシー策定に関しても継続的に調査を行い、ICANN報告会やWebなどで報告しています。しかし、その中では新gTLDプログラムやWhoisポリシーなど、どうしても政策の内容の部分に焦点が行きがちで、なかなか組織自体をご紹介することがありません。そこでこのブログ記事では、ICANNでgTLDのポリシー策定を行っている、GNSO(分野別ドメイ ン名支持組織)について紹介したいと思います。

GNSOはICANNにおける三つの支持組織の一つです。支持組織は、資源ごとの管理ポリシーに関する検討の主体であり、検討結果をICANN理事会に具申するのが役目です。あとの二つは、ccTLDマネージャが集まる「ccNSO(国コードドメイン名支持組織)」と五つのRIRのコミュニティを中心として構成される「ASO(ア ドレス支持組織)」です。

ccTLD に関しては、その方針はそのccTLDの登録管理を実際に行っている「ccTLDマネージャ」に大幅に委ねられていますし、IPアドレスに関する具体的な方針は、五つのRIR(地域インターネットレジストリ)で決められ、ASOがICANN理事会に対して具申するのは、IANAからRIRへの分配部分のポリシー(グローバルポリシーと呼びます)に限られます。

一方でgTLDに関しては、TLD同士が競合関係にあるということもあり、統一的なポリシー策定が必要です。しかもポリシーは多岐に渡り、GNSOの活動量は膨大です。それが、ICANNというとgTLDのことを強く想起する要因と言えます。

GNSOは、GNSOを代表して意思決定を行う評議会(Council)と、評議会に評議員を送り込む、立場別に分かれたグループで構成されます。GNSO評議会が決めたことは、そのままGNSO全体が決めたこととして取り扱われます。以下、GNSOのWebサイトから入手が出来る、GNSOの組織構造図をお示しし、それに従って説明していきます。

http://gnso.icann.org/sites/gnso.icann.org/files/gnso/images/gnso-structure-600×421-12oct14-en.png

少し構造が複雑ですが、冒頭で述べた「立場別に分かれたグループ」というものが、三階層ほどで分かれています。まず(1)ICANNと契約を交わすか交わさないかによって、契約者会議(Contracted Parties House; CPH)と非契約者会議(Non-Contracted Parties House; NCPH) に分けられます。別の言い方をすると、gTLDを登録運営して販売する側と、gTLDを使う側、ということです。それぞれの会議は(2)ステークホルダーグルー プ(SG)に分けられます。CPHにはレジストリとレジストラのSG(それぞれ、RySG, RrSG)があり、NCPHには、商用の立場と非商用立場の利用者としてSGが分けられます(Commercial Stakeholders SG:CSG, Non-Commercial SG: NCSG)。JPNICはこれら のうちCSGの中で検討に参加しています。

SGの中にはさらに(3)立場の違いから三つの部会(Constituency)に分かれているのですが、JPNIC は、社団会員や指定事業者にISPが多く含まれていることから、ISPCP (Internet Service Providers and Connectivity Providers) 部会に参加しています。この他の部会としては、企業が参加するビジネスユーザー部会 (Commercial Business Users Constituency; BC) と、商標を中心とした知的財産権の専門家からなる知的財産部会(Intellectual Property Constituency; IPC) があります。一口に商用ユーザーと言っても、ビジネスの観点、知的財産の観点、ISPの観点で、立場と考え方は大きく異なります。

大きく立場が異なるというのは、GNSO全体、GNSO評議会にも当てはまります。gTLDを売る側と買う側、買う側でも、自社の事業のために使う人と、個人的に使う人で、立場は異なります。売る側と買う側という大別で考えると分かり易いと思いますが、gTLDの運営ポリシーを、「買う側が困らないように売る側に注意と手間を求める」ことと、「(結果的にたくさんの人が使えることにつなげるべく)売る側に過大な負担を求めない」こととは、大きく相反する立場です。従って、評議会でポリシーを決議する場合にも、コンセンサスとして決まることはほとんどなく、上程された議案が否決され、さらに折衝を重ねて再上程を目指す、といったことは珍しいことではありません。これは、「継続審議になることはあっても最後はラフコンセンサスでポリシーの決定が可能」というRIRとは明白に異なるところです。このようなことから、評議会の票数や可決基準は重要であり、現在はCPH、CSG、NCSGの票数が平等になる(CPHとNCPHで比べると1:2になる)ように定められ、可決基準は両会議の得票率などを含む、複雑なものになっています。

GNSOで取り扱うgTLDポリシーは、新gTLD募集要項自体、知的財産権保護(RPM)機構、WHOIS(最近はRegistry Database System(RDS)と呼ばれます)の刷新、プライバシー・プロキシサービス、レジストラ間移転、IDNなどなど、非常に多岐に渡りますし、それに加えて、IANA監督権限移管やICANN説明責任を始めとする機構論に属する議論もさまざまにあります。GNSO評議会は常にオーバーロードとの戦い、という側面もあります。

ICANN報告会や、JPNIC WebのICANN情報ページgTLDページを始めとする情報チャンネルもありますが、ICANN GNSOのWebページには、さまざまなレベルの決まりごとから会議録まで、あらゆる情報が集積されています。この機にGNSOの活動についても目を向けてみてはいかがでしょうか。

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