IGF 2016に関する報告会レポート
dom_gov_team インターネットガバナンス 他組織のイベントJPNICが事務局を務める日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)のイベントとして、2017年1月26日に「IGF2016に関する報告会」が開催されました。
Internet Governance Forum (IGF)とは、インターネットガバナンスについて議論を行う、誰もが参加できる国連主催の会議です。
2016年のIGF (IGF 2016)が、2016年12月にメキシコ・グアダラハラで開催されたことから、今回は同日同会場(JPNIC会議室)で開催されたIGCJ17会議と併せて、国内からのIGF会議への参加者より、それぞれの視点からこのIGF 2016について報告が行われました。
報告会では、政府、技術コミュニティ、学術・市民社会、ビジネスの視点で、日本からの参加者よりそれぞれ報告がありました。
2016年のIGFは、日本からの参加者、セッション企画、登壇者数が例年以上に多く、国連IGFのWebサイトでも、参加者数の多かった国に挙げられています。
今回の記事では、このIGF 2016の報告会の様子を簡単にご紹介しますが、当日の動画とミーティングメモも後日公開する予定です。また、IGF 2016については、過去のJPNIC BlogおよびメールマガジンNews & Views (vol.1462およびvol.1463)でもご紹介していますので、併せてご覧ください。
■全体概要
会場、会議の様子について、IGFに初参加の視点から香月さん(一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU))より、動画で紹介されました。現地に参加できなかった方も、臨場感を味わえたのではないでしょうか。
IGF 2016のメインテーマは、2015年の「国連持続可能な開発サミット」にて採択された成果文書のテーマである、「持続可能な開発目標(SDG)」を意識した「Enabling Inclusive and Sustainable Growth」が設定され、このテーマを取り巻く議論が多く行われました。
また、IGFは年に一度の会議で議論して終わるのではなく、会議と会議の間の取り組みとして、Intersessional Workへの重視が2014年より継続されています。いずれの活動も、会議の半年以上前からオンラインで誰もが参加可能な形で議論を重ね、文書への意見募集が行われた上、その結果がIGFのWebサイトで公開されています。2016年のIGFでは、以下の活動を行いました。
- 「次の数10億へのアクセスを実現する上での政策」(Policy Options for Connecting the Next Billions)を、国、地域をまたいで共通するテーマとして取りまとめた文書の策定
- 四つのテーマ(IPv6、IXP、Gender and Access、Cybersecurity)に関するBest Practices Forumの設立、文書化
- 特定のテーマに対して問題意識を持った個人、機関が活動、議論を行うDynamic Coalitionsの活性化(16のテーマに対してそれぞれ活動)
そして、今年はIGFの開催を2025年まで延長することが国連で承認されて以降初のIGFであることから、担当している国連経済社会局もコミットしています。
今後10年のIGFを見据えて、長期的なIGFの改善案への意見募集を、誰もが意見表明可能なように「オンライン」と「IGF会期中での会議の場」の両方で実施しました。
動画は当日のみの共有となりますが、香月さんの発表資料、および、2016年までプログラム委員に該当するMAGメンバーを務めたJPNICの奥谷による全体概要の資料を、IGCJの当該ミーティングページに掲載しています。
全体報告:MIAU 香月さん(左)、JPNIC/IGF2016 MAGメンバー 奥谷(右)
■各登壇者の視点
政府:
- 日本政府が今回、G7香川・高松情報通信大臣会合およびその成果を紹介する会議を開催
マルチステークホルダーの解釈がさまざまであり、政府間でのマルチラテラルでの議論を軸としたマルチステークホルダーを推奨している政府もある
技術コミュニティ:
- 国や組織単位でのセキュリティへの対策として、イントラネットとして対応するのではなく、異なる立場の関係者によるCollaborationが重要
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IGCJでのセキュリティに対する考え方の議論に基づき、日・英両方で公開した文書は、ISOCの打ち出すCollaborative Securityに考え方が通じることから、ISOCと協力し日本からCollaborative Securityに関するセッションを応募、開催
IGCJの皆様全体の活動が世界に認められた一つの形 - 政府・企業幹部を対象としたIPv6に関するBPF活動(前述)、コンテンツキャッシュを置くための中小ISPによるIXP設立、Yeti DNS等、運用にも関わる議論もあった
学術・市民社会:
- インターネットガバナンスに関する研究者コミュニティであるGIGAnetに対し、日本からは新gTLDプログラムの意義を数量的な意味から分析した研究を紹介
- 国際通商協定とインターネットガバナンス、フェイクニュースと検閲、オンライン環境によるRadicalization(先鋭化)対応についての議論が盛り上がっていた
ビジネス:
- 数年前、インターネットにおける信頼が大きなテーマとして取り上げられていたが、2016年は持続可能な開発目標(SDG)に対していかにインターネットが関わっていくのかが前面に出ていたIGF
- オンライン上の世論形成について、ビジネスの視点では企業のブランドイメージを傷つけるという観点や、Emerging Technologiesへの姿勢として、目新しさだけではなく安全性の担保の重要性の強調が印象的
- 表現の自由について、違法有害情報の対策を含め、国連の表現の自由に関する調査団の団長を交えて議論が実施された
- ネット中立性 – 世界のトラフィックの70%は広告という状況で、どこまでのコンテンツをISPは載せていくのかといった課題
- ゼロレーティング – 各政府はゼロレーティングへの対応を進めてきており、ノルウェーはBEREC (Body of European Regulators for Electronic Communications.)のガイドラインに基づき対応、今後欧州の対応に着目
National Regional IGF(NRI):
- 国や地域単位のIGFであるNRIの数が急増している動向、そしてJapan-IGFとしての登壇含めたNRI活動に関する紹介
また、IGF全体について、IGF開催当初と比較するとIGFに本物の専門家が参加するようになった変化を感じる、人が育っている、Youthからの参加が重要、日本も促進していきたいといった意見も聞かれました。
登壇者の一覧および発表資料の一部は、IGCJのWebサイトにある当該ミーティングページに掲載しています。
当日の議論の様子
■2017年のIGF
2017年は、グローバルIGF、アジア太平洋地域におけるIGFそれぞれが、以下の通り予定されています。現地参加は難しいという方は、いずれの会議もリモート参加が可能です。
2017年7月26~29日 | APrIGF 2017 | タイ・バンコク |
2017年12月18~21日 | IGF 2017 | スイス・ジュネーブ(IGF2016最終日に発表、IGFの公式Webページでは未掲載) |
■今後の国内におけるイベント
なお、IGF-Japanについて、2017年3月に開催予定であることがJAIPAの立石氏より案内されました。ネット中立性に関する議論も含めたプログラムを予定しているということです。
また、この度のIGF報告会はIGCJの企画イベントでしたが、IGCJでは、2ヶ月に一度テーマを設定したミーティングを開催しています。テーマは回によって異なり、IGCJのメーリングリスト、IGCJ Webでのお知らせ、Facebook、Twitter等で開催をご案内しています。特に興味のある議論が行われる回がありましたら、ぜひ一度足を運んでみてください。
風邪等の流行っている時期でしたので会場でご用意しました