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IPv6 Summit in SAPPORO 2018レポート

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2018年3月12日(月)に開催された、IPv6 Summit in SAPPORO 2018の参加レポートです。

JPNICのオフィスがある東京・神田では、ここ数日春めいた陽気が続いていますが、3月の札幌は時折降雪にも見舞われ、冬の寒さが継続していました。

IPv6 Summit in SAPPORO 2018は、札幌駅前にあるTKP札幌駅カンファレンスセンターで開催されました。札幌でのIPv6 Summitは、2014年2月以来3回目の開催です。実はこういった、地域でのIPv6サミットは2003年10月の札幌開催が記念すべき1回目で、ここを皮切りに全国各地で開催していくようになったということで、とても縁のある開催地となっています。

今回は、午前中に「IPv6セキュリティチュートリアル」のプログラムが組まれ、東京工業大学の北口善明先生と日本電信電話株式会社の藤崎智宏氏による、IPv6環境におけるセキュリティの必要性と、プロトコル仕様から見たセキュリティに関する解説、さらにIPv6ネットワークの運用面におけるセキュリティについての解説が行われました。

午後からはIPv6 Summitの本会議となり、北海道大学の高井昌彰教授のご挨拶から始まり、基調講演として慶應義塾大学の中村修先生から、国内外のIPv6普及状況、特に海外におけるIPv6オンリーの運用を試みる動きに対して、日本が立ち遅れていることについて懸念が示されました。また、IPv4(とNAT)によるトレーサビリティの低さが、今後のネットワークセキュリティを確保する上で足かせとなるため、早期のIPv6への対応が必要性を増してくるという点が強調されていました。

基調講演の二つ目は、はこだて未来大学の藤野雄一先生による「高速ネットワークの医療応用」として、NTT研究所時代からの画像通信技術への取り組みの紹介から、現在の最先端の遠隔医療技術に関するお話がありました。ネットワークが、手術や診療といった直接的な医師の活動をサポートするだけでなく、院内学級や入院中の子供たちのサポートにも、有効に活用されている事例などもご紹介いただきました。

その後「IPv6普及最新状況」として筆者、佐藤晋が主にIPアドレス分配等に関する最新動向のレポートを、さらにNTTの藤崎氏による、IETFにおけるIPv6の標準化策定議論についてのレポートを挟んで、最後のパネルディスカッションとなりました。

パネルディスカッションは中村先生がコーディネーターとなり、パネリストとして高井先生、藤野先生に加え、日本インターネットエクスチェンジ株式会社の中川あきら氏と、アラクサラネットワークス株式会社新善文氏により「IPv6とIoT社会にむけて– 地域でのIT活用–」というテーマで議論が行われました。

パネルディスカッションの様子

論点となったのは、一部を除いて大学などでもネットワークのIPv6対応が進んでいないこと、ベンダーからもIPv6対応に関する提案がないことが課題として挙げられ、一方、それに対してベンダー、事業者側の立場からは、そういった提案ができるネットワークについて十分な学習を積んだ人材が、教育機関から供給されないという問題点の指摘がありました。さらにそれに対し、学生がアプリ開発などには興味を持つが、ネットワークレイヤーへの関心が薄いことや、ネットワークに関する授業時間がそれほど多くなく、その制約の中でIPv6も含めた一通りの学習を行う必要があるといった、構造的な課題なども上がりました。登壇者だけではなく、参加者も交えながら大いに議論が盛り上がる展開になりつつも、残念ながら時間切れとなり、IPv6 Summit in SAPPORO 2018は閉幕となりました。

なお、翌日3月13日(火)には、IPv6ディプロイメント委員会のメンバー有志によるデータセンター見学会が企画され、そちらにも参加してきました。

午前中は、さくらインターネット株式会社様が誇る、石狩データセンターを見学させていただきました。広大な土地を活用したスケールの大きな設備に圧倒される一方で、設備を拡充する度にそれまでの運用経験を活かした改善策が反映されており、まさにインターネットそのものの発展を体現しているような印象を受けました。

午後には、北海道総合通信網株式会社(HOTnet)様の、昨年2017年9月にオープンしたばかりの、札幌市内にあるデータセンターを見せてもらいました。できたばかりのデータセンターですので、まだフロアには1/3程度しかラックが入っていない状態でしたが、最新のセキュリティシステムが導入されているほか、ハウジングスペースでの作業を最小限にして、機器をラッキングした後は基本的には快適なワークスペースで作業が進められるような工夫も施されるなど、人に優しく作られたデータセンターだと思いました。

末筆ではありますが、IPv6 Summitへのご登壇、ご協力いただいた方々、データセンターをご案内いただいた関係者の方々、皆様のおかげで北海道での充実した2日間を過ごすことができました。改めて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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