G7・G20エンゲージメントグループについて
dom_gov_team インターネットガバナンス2019年の6月28日~29日に大阪でGroup of Twenty (G20)が開催され、直近の8月24日~26日に主要国首脳会議(Group of seven, G7)が先日フランスで開催されました。前者に関連して、7月9日に開催された第27回日本インターネットガバナンス会議(IGCJ27)の議題の一つが「G20およびBusiness 20 (B20)の経緯と結果について~情報通信・デジタル経済分野を中心に~」でした。調べてみると、B20以外にもG7/20に関連する多くの*20,および*7が存在しましたので、この機会にB20をはじめとするエンゲージメントグループについてご紹介したいと思います。なお、本稿ではG7およびG20そのものについては扱いません。
エンゲージメントグループとは
各国政府から独立した、国際社会におけるステークホルダー(企業、非営利団体、市民団体等)により形成された団体のことを指します。G7/G20で議論される各分野について、提言の発表などを主に行います [外務省, 日付不明]。
G7におけるエンゲージメントグループ
1995年のG7ハリファックス(カナダ)サミットより、G7と市民社会の各組織が相互に認識するようになりました (Hajnal, 2019)。Youth 7に関しては、2011年にYouth 8 & Youth 20として設立されました。2019年にフランスで開催されたG7では、エンゲージメントグループはサミットまでに作業過程全般を通じてすべてのレベル(シェルパ会合、関係閣僚会合、専門家グループ会合)に参加し、G7議長国宛の提言の準備をしたそうです [在日フランス大使館, 2019]。
2019年におけるG7本会合前の、各エンゲージメントグループ会合開催日程およびG7本体の準備会合・大臣会合の日程一覧
Business 7 (B7)
B7はG7と連携する公式プラットフォームを目指しており、G7各国の経済団体が集まり企業活動及びグローバルな貿易活動に影響を及ぼす包括的なテーマに関して勧告を作成します。2016年のG7伊勢志摩サミットに関連するB7東京サミットは一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の主催で2016年5月20日~21日にかけて開催されました。議論の成果は共同提言 [経団連, 2016]に盛り込まれ、安倍首相に手渡されました [経団連, 2016]。共同提言の大項目は以下の通りです。
- 強靭な経済と包摂的な成長の実現
- 貿易・投資に関するグローバル・ルールづくり
- デジタル革命の推進
- 地球規模の課題解決に向けた政策協調
2019年はG7の議長国およびサミット開催地がフランスなので、B7もフランス企業運動(Mouvement des entreprises de France, MEDEF)の主催でフランス・エクス=アン=プロヴァンス(Aix-en-Provence)で開催されました [在日フランス大使館, 2019]。B7共同宣言の大項目は次の通りです (B7 Business Summit 2019 Joint statement, n.d.) 。経団連による抄訳
- 開かれた公正な国際貿易と投資Open and fair international trade and investment
- 環境と調和した変化と生物の多様性Ecological transition and biodiversity
- デジタルへの移行とサイバーセキュリティDigital transition and Cybersecurity
- 新しいグローバルガバナンスと労働の未来New global governance and the future of work
Civil 7 (C7)
C7はG7諸国の市民社会組織や国際連帯関係者が主に集まるエンゲージメントグループで、G7諸国の非政府関係者の提言を国家指導者に対し、政府の説明責任として幅広く推進することを目指します。2016年のG7伊勢志摩サミットでは、C7とは銘打たなかったようですが、日本のNGO・NPOが「2016年G7サミット市民社会プラットフォーム」を立ち上げ、提言活動とキャンペーンを行ったということです [2016年G7サミット市民社会プラットフォーム, 2016]。2019年のC7はフランス・パリで7月1日から3日までかけて行われ、勧告文書が作成・公開されました (C7 2019 Recommendations from the Civil 7: For Solutions to Global Inequalities, n.d.)。
Labour 7 (L7)
L7は労働者の利益を代表し、G7に先立ち労働組合運動の主要メッセージを伝えるエンゲージメントグループで、G7各国の主要な労働組合の集まりとなっています [在日フランス大使館, 2019]。2019年は6月7日にパリでL7会議が開催され、宣言文書を公開しています。
Science 7 (S7)
G7各国の科学アカデミーが毎年集まり重要課題に関する共同声明を準備するエンゲージメントグループです。2019年の会合はフランス科学アカデミーが主催して3月24日から26日までパリで開催されました [在日フランス大使館, 2019]。日本からは日本学術会議が参加しています。
成果物として、以下の三つの文書を作成・公開しています (Institut de France Academie des sciences, 2019)。
- 科学と信頼
- 人工知能(AI)と社会
- インターネット時代の市民科学
Think Tank 7 (T7)
G7諸国の研究機関が集まり主要なテーマに関する分析と提言を表明するためのエンゲージメントグループです。2019年は6月5日にフランス国際関係研究所(IFRI)が議長を務め、パリで本会合を開催しました。T7の作業は、次の三つのテーマに沿って進められ、勧告文書が作成されました。[在日フランス大使館, 2019]
- 途上国における不平等との闘いの目標に照らしたG7諸国の開発政策の実効性
- 国際貿易モデルと、G7各国経済および新興国経済による同モデルの見直し
- グローバルガバナンス、民主主義の擁護、多国間主義の将来
勧告文書中に記載されているT7メンバーのうち、日本からの参加機関は日本国際問題研究所(JIIA)およびJICA研究所となっています。
Women 7 (W7)
W7は女性および少女の権利問題に取り組むG7諸国と途上国の市民社会組織の集まりで、ジェンダー平等が一般市民にとり目に見える課題となることを目標として掲げています。2019年はケア・フランスとエキリーブル&ポピュラシオンの2団体がまとめ役を務め、5月9日・10日にパリでG7ジェンダー平等担当大臣会合と並行して開催されました [在日フランス大使館, 2019]。
Youth 7 (Y7)
Y7はグローバルガバナンスに関する課題への取り組みを希望する、主にG7諸国出身の若者が集まるエンゲージメントグループです。2019年には6月9日から14日までユースサミットとして会合がパリで開催されました [在日フランス大使館, 2019]。G7首脳宛の最終宣言として行動要請文書が公開されています。
G20におけるエンゲージメントグループ
G20が開始したのと同じ年である2008年には既にBusiness 20 (B20)およびLabor 20 (L20)が設立されています (Alexander & Loschmann, 2016)。前者は2010年に、後者は2011年に正式に承認されました。2014年にオーストラリア・ブリスベンで開催されたG20サミットでは、エンゲージメントグループという用語が使われるようになりました (Hajnal, 2019)。
Business 20 (B20)
経営者/ビジネス界の声を代表してG20にポリシーを提言することを目的として設立されたエンゲージメントグループです。G20に関するエンゲージメントグループとしては最初に設立されました。2010年に初会合が韓国・ソウルで開催され、以降毎年開催されています [2019, 日付不明]。2019年のB20東京サミットは経団連が事務局となって開催しました。
Civil 20 (C20)
非政府組織/市民社会が透明で包含的なプロセスを通じて、高レベル政策文書を議論・作成・G20に提出するため、またG20に影響を及ぼすためのエンゲージメントグループです [C20, 日付不明]。2010年の韓国での会合が最初の活動となっています (Alexander & Loschmann, 2016)。固定した構造や人員、オフィスを持たず、毎年代表者も交代しています。C20の成果は最終声明文書を反映したものになります。2019年においては、作業部会が10作られ議論されたと思われ [Working Groups, 日付不明]、4月18日にはC20が作成したポリシーパックが安倍首相に手渡されています (PRESS RELEASE: C20 Representatives Submitted C20’s “Policy Pack” to PM Shinzo Abe, Chair of the G20 Osaka Summit, 2019)。直後の4月21日から23日までC20サミット2019が東京で開催されました (Final Program Agenda of C20 Summit is out now!, 2019)。
Labour 20 (L20)
L20はG20レベルで労働者を代表するため、G20諸国の労働組合および国際的な労働団体からなっています。2019年の8月29日から30日にかけて、日本労働組合総連合会(連合)及びInternational Trade Union Confederation (ITUC)、Trade Union Advisory Committee to the OECD (TUAC)の共催でL20会合が東京で開催されました [連合, 日付不明]。
Science 20 (S20)
2016年にG20諸国の国立学術会議が集まり設立され、翌2017年に初めてG20サミット向けに科学技術関連の勧告を提出しました。G20大阪サミット関連会合として、2019年3月6日にS20 Japan 2019が日本学術会議の主催で開催されました。テーマは「海洋生態系および海洋環境保護への脅威~関心事項:気候変動および海洋プラスチック廃棄物」となっています。 [S20 Japan 2019, 日付不明]。
Think 20 (T20)
シンクタンクが集まってG20に向けた研究および政策助言を行うネットワークです (About T20, n.d.)。2019年のT20サミットには、日本の三つの主要シンクタンクであるアジア開発銀行研究所(ADBI)、日本国際問題研究所(JIIA)、国際通貨問題研究所(IIMA)の主導で、世界のトップクラスの政策専門家が一堂に会し10のタスクフォース(TF)の専門家による実証的な研究と分析を通して政策提言がコミュニケとして発表されました [G20大阪サミットに向けたコミュニケを発表Think20(T20)Japan, 日付不明]。
Urban 20 (U20)
国家レベルのG20の議論に都市の経験や意見を反映させるため、2017年にブエノスアイレス市長及びパリ市長により設立された都市によるプラットフォームです。日本からは、東京都と大阪市が加盟しています。第1回U20メイヤーズ・サミットが2018年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催され、第2回U20メイヤーズ・サミットが2019年5月に東京で開催(主催:東京都)されました。第2回のテーマは次の通りでした。
- Climate Action(気候変動対策)
- Social Inclusion and Integration(社会の包摂及び統合)
- Sustainable Economic Growth(持続可能な経済成長)
Women 20 (W20)
W20とは、G20のエンゲージメントグループのひとつであり、女性に関する政策提言をG20に向けて行う組織体です。W20の第一の目的は、2014年G20ブリスベンサミットで採択された“25 by 25”宣言、具体的には「2025年までに就労率の男女差を25%縮小する」という目標の履行とのことです。2019年のW20会議は3月22日に東京で開催され、翌3月23日にはW20 Japanコミュニケが安倍首相に手渡されたとのことです [ABOUT W20, 日付不明]。
Youth 20 (Y20)
Y20は若者(30代以下のG20の議題に精通しているプロフェッショナル)の意見をG7に反映させるためのもので、アジェンダは大きく分けて以下の三つとなっています。2019年のY20サミットは5月27日から30日にかけて開催されました。 [Y20 Summit 2019, 日付不明]。
- ビジネスと環境(Business and Environment)
- 労働の未来(Future of Work)
- 国際貿易(International Trade)
引用・参考文献
- 2016年G7サミット市民社会プラットフォーム. (2016). 参照先: http://cso-g7-ise-shima-summit2016.blogspot.com/
- 2019TokyoB20. (日付不明). About B20. 参照先: B20 Tokyo 2019: http://www.b20tokyo.org/about/
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- ABOUT W20. (日付不明). 参照先: Women20 Japan 2019: https://w20japan.org/index.html#ABOUT
- Alexander, N., & Loschmann, H. D. (2016, 12 9). The Solar System of G20: Engagement Groups . Retrieved from Heinrich-Boll-Stiftung The Green Political Foundation: https://www.boell.de/en/2016/12/08/solar-system-g20-engagement-groups
- B7 Business Summit 2019 Joint statement. (n.d.). Retrieved from http://www.elysee.fr/admin/upload/default/0001/05/517900fa463ea5078ac179d89ec95fa7e5ce4280.pdf
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C7 2019 Recommendations from the Civil 7: For Solutions to Global Inequalities. (n.d.). Retrieved from
http://www.elysee.fr/admin/upload/default/0001/05/9119d77928b977dc62a3c077948a208e9966ec2a.pdf - Call to action on G7 Leaders to pave the way for a fair future. (2019, 6 14). Retrieved from https://uploads.strikinglycdn.com/files/a68d096f-6301-4855-9711-948ac99b4ba5/De%CC%81claration%20finale.pdf
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