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ARIN 44でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2019年10月31日(木)および11月1日(金)の日程で、米国・テキサス州オースティンにおいて、ARIN 44ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。秋のARINミーティングは通常、NANOG (The North American Network Operators Group)ミーティングに引き続いて開催されます。今回はまず初めに、2019年10月28日(月)~30日(水)の日程でNANOG 77ミーティングが開催され、そのあとARIN 44ミーティングが開催されます。年2回開催のARINと年3回開催のNANOGの両ミーティングの開催回数がともにゾロ目となる珍しい機会となりました 😎

ARIN 44 Webサイト

APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様に、ARIN地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

ARINにおけるポリシー策定プロセスの詳細については、ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介していますので、そちらをご覧ください。

今回のARIN 44ミーティングで議論される予定の提案は11件となっています。以下に抜粋したのは、ARINのホームページに掲載されている現在進行中のポリシー提案の一覧です。今回議論予定の11件に加え、諸事情により実装が保留となっている2件とあわせ、合計13件の提案が確認できます。

提案内容などの詳細は、タイトルに張られたリンクから確認することができますので、ぜひ一度ご覧になられてはいかがでしょうか。

■実装が保留となっている提案:2件

  1. ARIN-2017-12:POC Notification and Validation Upon Reassignment or Reallocation (再割り当てまたは再割り振りにおける新たな連絡先情報の認証の必要性)
  2. ARIN-2018-5:Disallow Third-party Organization Record Creation (第三者による組織情報の作成禁止)

■議論中の提案:11件

  1. Recommended Draft Policy ARIN-2018-6: Clarify Reassignment Requirements in 4.2.3.7.1 (再割り当てにおける要件の明確化)
  2. Recommended Draft Policy ARIN-2019-1: Clarify Section 4 IPv4 Request Requirements (IPv4アドレスの再度の分配までの期間を明確化する)
  3. Recommended Draft Policy ARIN-2019-3: Update 4.10 IPv6 Deployment Block Recommended Draft Policy (IPv6対応のためのIPv4アドレスを分配するためのルール変更)
  4. Recommended Draft Policy ARIN-2019-8: Clarification of Section 4.10 for Multiple Discrete Networks (複数のネットワークを運用する組織へのIPv4アドレス分配基準を明確化する)
  5. Recommended Draft Policy ARIN-2019-10: Inter-RIR M&A (レジストリ管轄地域間の事業譲渡や吸収合併)
  6. Recommended Draft Policy ARIN-2019-15: Hijacking Authorization Not-intended (割り当て先組織により承認された一時的なアドレス利用)
  7. Draft Policy ARIN-2019-12: M&A Legal Jurisdiction Exclusion (事業譲渡や吸収合併における司法権の適用除外)
  8. Draft Policy ARIN-2019-13: ARIN Membership Legal Jurisdiction Exclusion (ARINメンバーシップにおける司法権の適用除外)
  9. Draft Policy ARIN-2019-17: Returned Addresses to the 4.10 Reserved Pool (ARINへの返却アドレスを「IPv6展開を促進するための専用IPv4プール」で管理する)
  10. Draft Policy ARIN-2019-18: LIR/ISP Re-Assignment to Non-Connected Networks (接続しないネットワークへのIPアドレス割り当て)
  11. Proposal ARIN-prop-278: Require IPv6 before receiving Section 8 IPv4 Transfers (IPv4アドレス移転を受ける前にIPv6アドレスの利用を証明する)

ARIN地域でのIPアドレス・AS番号の分配ルールは、NRPM(Number Resource Policy Manual)としてまとめられています。人によりNRPMの解釈に差が出ないよう、記述内容をより緻密に修正する提案が多い印象です。今回はARIN-2018-6ARIN-2019-1ARIN-2019-3ARIN-2019-8ARIN-2019-15ARIN-2019-17ARIN-2019-18が該当します。

ARINでは、希望者にプリントアウトされたNRPMが配布されます。議論の最中には、配布された冊子を手元に用意して、内容を参照しながらマイクの前で質問に立つ参加者もいることから、記述内容をより緻密に修正する提案が多いのは、ARIN管轄地域のお国柄が色濃く反映されているのかもしれません。

RIRからRIRのメンバーに分配(割り振り)されたIPアドレスは、メンバーの運用するネットワークに接続する、エンドユーザのネットワークに割り当てることを原則としています。この原則を維持することが、インターネット上の経路情報の集約につながっています。「12. Draft Policy ARIN-2019-18: LIR/ISP Re-Assignment to Non-Connected Networks (接続しないネットワークへのIPアドレス割り当て)」の提案は、メンバーの運用するネットワークに接続しないネットワークに、IPアドレスの割り当てを可能とする提案です。

特に未使用となっているIPv4アドレスの有効利用、レジストリのデータベースの正確性向上につながることを提案者は想定しているようです。メーリングリストでの議論では、コミュニティの状況に合わせてポリシーを変更していくことに賛成の立場を示すコメントがある一方で、これまでの原則どおり、利用されていない番号資源はレジストリに返却する方針を維持するべきであるという反対のコメントもあり、議論の方向性は定まっていないようです。

APNIC地域においても、「prop-118:No need policy in APNIC region(APNIC地域のIPv4アドレス移転時における要件緩和についての提案)」「prop-119:Temporary transfers(終了時期を定めたIPv4アドレスの一時的な移転提案)」などで、今回同様の論点で議論が行われた経緯があります。ARIN地域での議論によっては、APNIC地域での議論が再燃する可能性もあり、動向を注視しています。



(ARINのFacebookページより)

写真は、2019年4月にバルバドス・ブリッジタウンで開催されたARIN 43ミーティングの様子です。

ミーティング期間中は中継が行われる予定ですので、ご興味を持たれた方はリモートで参加してみてはいかがでしょうか。メーリングリストには、オンライン上での議論の内容やARIN ACによる検討の結果がアーカイブされています。ARIN ミーティング関連のWebページには、ミーティング当日の発表資料、映像や発言録などが公開され、これらを活用すれば、議論を振り返ることが可能な環境が提供されています。また、今回はARINでの提案をご紹介しましたが、JPNIC、APNICのポリシーフォーラムで議論をしてみたいと思う提案がありましたら、ぜひお聞かせください。

2019年11月27日(水)に開催予定の、第37回JPNICオープンポリシーミーティングでは、ARIN 44ミーティングの模様をご紹介する予定です。日本にいながらARINミーティングの状況を把握できるよい機会ですので、こちらもあわせて参加をご検討いただければと思います。

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