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News & Views コラム:オンラインゲームとインターネットの遅延

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メールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでも紹介しています。今月は、Internet Week 2019でプログラムの企画をご担当いただいている、国立研究開発法人情報通信研究機構の森好樹さんによるコラムです。オンラインゲームで遊んでいる際に起こるインターネットの遅延について、考えられる原因を教えてくださっていて参考になります。


オンラインゲームを遊んでいると、時々発生するワープやカクカクする「ラグ」。これは、「相手に対してデータを送信して戻ってくるまでの時間」が遅いことなどが要因です。最近では、Ping値などと言われていますが、RTT(ラウンドトリップタイム)が正式名称で、単位はmsec (1,000分の1秒)となります。一般的なゲームは1秒間に60回ほど画面(フレーム)の更新をしています。そのため、RTTを33msec以下にできれば、1フレーム(1000msec/60フレーム=16.7msec)の遅延で繋がっていることになり、多くのゲームで快適に遊べると思います。

今回は、通信での遅延部分の原因について考えてみたいと思います。

●物理的な距離による遅延

光ファイバーであっても、距離により遅延が発生します。国内であっても、RTTは東京-大阪間は10msec、東京-九州間は20msecほどになります。また、対戦相手が同じマンション内にいても異なるプロバイダの場合は、東京もしくは大阪まで通信してからマンションまで折り返すこともあります。どうしても遅延を防ぎたいのであれば、ゲームサーバや折り返し地点の近くに引っ越すのが一番です(笑)。

●通信機器の不具合と接続方法による遅延

ファームウェアの不具合からマルウェア感染まで、理由はさまざまありますが、ルータやONU(光回線終端装置)のファームウェアのアップデートと再起動で改善することが多いです。また、カテゴリ7のケーブルはネットゲームに最適で遅延が改善できるという主張も見かけますが、家庭用のインターネットではケーブルで遅延が変わることはないため、騙されてはいけません。ただし、無線LANより有線で接続するほうが安定しているのは事実です。

●プロバイダの混雑による遅延

Windows Updateや夜間などプロバイダが混雑している時には、遅延が発生することがあります。また、他の居住者の利用による混雑から「マンションタイプはゲームに向かない。」という主張もありますが、戸建てタイプであっても電柱や局舎で他の利用者と分岐しているため、マンション・戸建てのどちらでもプロバイダの混雑による遅延の可能性があります。

●経路による遅延

同じゲームであっても、経路の影響でプロバイダAはRTTが5msec、プロバイダBでは100msecということもあります。経路の問題であれば、ゲーム用のVPNサービスを使うことで解決できるかもしれません。トレースルートの結果をゲームのサポートに送って問い合わせてみるのも一つの手です。

インターネットは基本的にはベストエフォートの世界ですから、遅延時間の保証はありません。しかし、原因を探ることで遅延が解消できることもあります。この情報が皆様の参考になればと思います。


■筆者略歴

森 好樹(もり よしき)

2010年に通信ネットワーク事業者にてNOC/SOC業務およびNW構築業務を経験。
2017年より情報通信研究機構にて、ダークネット宛のパケットの分析業務に従事。2018年よりInternet Weekプログラム委員を務める。

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