JPNIC Blog JPNIC

APNIC 49でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

ip_team 

2020年2月18日(火)~21日(金)の日程で、オーストラリア・メルボルンにおいてAPNIC 49カンファレンス(以下、APNIC 49)が開催されます。昨年までと同様に、APRICOTカンファレンス期間中に同時開催されます。

APNIC 49 Webサイト

APNICでは、ポリシーSIG (Special Interest Group)において、IPアドレス・AS番号の分配ポリシー(以下、ポリシー)に関する議論を行っています。1年を通じて、ポリシーSIGのメーリングリストで議論や意見交換を行っています。ポリシーの改定を行うための提案も、メーリングリストで議論されますが、APNICカンファレンス期間中には顔を合わせての議論を行います。普段はメールでやり取りをする多くの関係者が集まり、この場を利用してメールだけではなかなか理解することの難しい部分をすり合わせ、提案内容がブラッシュアップされていきます。

今回のポリシーSIGでは、以下に記載した、ポリシーの変更提案3点の議論が予定されています。

  1. prop-130 : Modification of transfer policies(移管ポリシーの修正)
  2. prop-133 : Clarification on Sub-Assignments(再割り当ての定義の明確化)
  3. prop-134 : PDP Update(APNICにおけるポリシー策定プロセスの修正)

今回の記事では、これらの提案を簡単にご紹介したいと思います。詳細を確認してみたいという方は、提案のタイトルに張られたリンクからご覧ください。

■prop-130「Modification of transfer policies」
(移管ポリシーの修正)

組織の合併、買収および継承時には「移管」としてIPアドレス・AS番号の分配先を変更することが、ポリシーでは定めてられています。この提案では、移管に関して定められた内容を変更するものです。前回APNIC 48でも議論されましたが、継続議論となりました。提案者により、下記でご紹介する相手方となるレジストリとの関係を正確に記載するよう修正されましたので、その内容をもとに再度議論するものです。

移管は現在、「組織の合併、買収および継承」の場合に限定されていますが、この内容を「組織全体あるいは一部分の合併、買収、継承、組織の再編成や移動」に変更します。また、現在の移管元/移管先はAPNICと契約する組織を対象としていますが、該当の地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)が認める場合には、該当のRIRと契約する組織を移管元/移管先とすることが明記されます。

IPv4アドレス、IPv6アドレスおよびAS番号で記述が異なっているため、上記内容に揃えて記述するようあわせて提案されています。

■prop-133「Clarification on Sub-Assignments」
(再割り当ての定義の明確化)

この提案は、再割り当ての定義を明確化するための提案です。

APNIC 46以降、「prop-124: Clarification on Sub-Assignments」として議論が行われてきましたが、ポリシー改定の必要性を問うコメントが相次いで出されていました。その結果、APNIC 48においては提案が棄却されることになりましたが、提案番号を変えて、再度議論することになった模様です。

「割り当てられたIPアドレスは、申請者自身やエンドユーザが申告した特定の目的のためにのみ使用されるものであり、さらに割り当てされるものではない」となっている割り当ての定義を、「割り当てられたIPアドレスは、運用されるネットワーク内で排他的に使用されるものであり、さらに割り当てされるものではない」と変更するものです。

これまでのメーリングリストやカンファレンス中における議論では、ポリシー改定の必要性についての質問に対して、提案者からの明確な回答はありませんでした。そのため、「現行の内容でIPアドレスの割り当てを受けられない人がいるのか」「IPアドレスの割り当てが必要だが、ポリシーの記述のためIPアドレスの割り当てを受けられないケースがあるのか」といったポイントを中心に、今回も議論が行われることが予想されます。

■prop-134「PDP Update」
(APNICにおけるポリシー策定プロセスの修正)

IPアドレス・AS番号の分配ルールを定めたポリシーは、APNICが発行する文書の一つとして管理されています。ポリシーの内容を変更する際には、提案の提出から実装までの一連の流れを定めたポリシー策定プロセス(PDP; Policy Development Process)に従って、手続きが進むことになります。今回の提案は、APNICのPDPの改定を目的とした提案です。APNIC 46以降、「prop-126 : PDP Update」として議論が行われてきましたが、上記の「prop-124: Clarification on Sub-Assignments」と同様に、ポリシー改定の必要性を問うコメントが相次いで出されたため、APNIC 48においては提案が棄却されました。変更内容を絞り再度議論することになったため、提案番号が新たについた模様です。

具体的には、APNICのPDPを以下の内容へと変更することが提案されています。

  • ポリシー提案は、APNICミーティング開催の4週間前までAPNIC事務局に提出する必要があります。(現状と変更なし)
  • 参加者からの賛成(コンセンサス)の定義を、一般的な合意(General Agreement)からRFC 7282に記述のあるラフコンセンサス(rough consensus)に変更する。提案提出直後からSIGセッションまでの間のSIGメーリングリストでの議論のほか、SIGセッションでの議論内容、電子的な方法での参加者への確認および、AMM(APNIC Member Meeting)での議論をもとに、SIGチェアがコンセンサスかどうかを判断します。(prop-126、prop-134のいずれも赤字部分の追加)
  • コンセンサスとならなかった提案については、議論が反映された新たな内容に6ヶ月以内に更新されなければ、期限切れとなり、議論は中止されます。(prop-126、prop-134のいずれにも含まれる内容で新規追加)
  • APNICミーティング中でのSIGセッションおよびAMMの双方においてコンセンサスとなった場合、引き続き、SIGメーリングリストでのコンセンサス確認を行うこととしています。
    • prop-126では、「このメーリングリスト上で行う手続きを「コンセンサスの確認」から「ラストコール」と呼ぶように変更します。」という文言が含まれていましたが、prop-134からは削除されています。その結果、現状と変更なしとなりました。
  • prop-126には「SIGチェアがPDPに沿った手続きを進めていないと判断できる場合には、APNIC EC(APNIC理事会)に対して異議申し立てを可能とする点を追加します。」という文言が含まれていましたが、prop-134には含まれない形に変更されています。

提案者は、より多くの人がポリシー策定プロセスに参加できるような内容に変更したいと考えていることに変わりはないようです。その一方で、今回の議論でも変更するほどに現状のプロセスに不備があるのか、という意見が出されることも想定されます。


春のAPNICカンファレンスと、秋のAPNICカンファレンスはそれぞれ、「南アジア地域」→「東アジア地域」「オセアニア地域」→「東南アジア地域」の順番で開催されています。日本は東アジア地域に位置しています。
東アジア地域での春のAPNICカンファレンスは、2019年に韓国・太田広域市で開催されました。次回は2023年の開催が予定されています。秋のAPNICカンファレンスは、東アジア地域では2017年に台湾・台中で開催されました。2021年に東アジア地域での開催が予定されています。

ご興味を持たれた方は、次回東アジア地域で開催されるAPNICカンファレンスへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。現地での議論には参加できなくても、リモート参加という手段も用意されています。APNIC 49のページでは、リモート参加の方法を含めて、最新情報が掲載されていますので、ぜひ一度ご覧ください!

APNIC 48 - Day 4

(APNIC 48の模様から。APNICのflickrサイトより)

この記事を評価してください

この記事は役に立ちましたか?
記事の改善点等がございましたら自由にご記入ください。

このフォームをご利用した場合、ご連絡先の記入がないと、 回答を差し上げられません。 回答が必要な場合は、 お問い合わせ先 をご利用ください。