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.amazon TLDのその後

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前回ブログ記事から1年以上経ちますが、「.amazon」(およびその国際化トップレベルドメイン名である「.アマゾン」および「.亚马逊」)のその後の状況についてお伝えします。

2020年5月末~6月初めに.amazonが委任されました。つまりDNSルートゾーンへ追加され、TLDとして利用できる状況になったということです。本稿では、前回記事以降の状況についてお伝えします。

2019年

コロンビアからの再検討要求

2019年5月15日のICANN理事会決議(内容の概要は次の通り)に対し、コロンビア政府が6月15日に再検討要求19-1を提出しました。

  • アマゾン社が4月17日に提出した提案を受領可能と認め、事務総長に.amazon申請の処理を進めることを指示
  • アマゾン社が4月17日に提出したPIC(=提案)を30日間意見募集にかけること

この再検討要求は理事会説明責任機構委員会(Board Accountability Mechanisms Committee; BAMC) にて検討され、8月14日の勧告では却下という結論となりました。追って9月8日の理事会決議では理事会説明責任機構委員会(BAMC)勧告が採択されました。

ICANN65のGAC勧告

2019年6月にモロッコのマラケシュで開催されたICANN65の最終日6月27日付で公開されたGAC勧告では、次のように記載されています。

GACは、アマゾン川流域諸国8カ国が懸念事項に対応していないとみなすという提案に基づき、.amazon申請を進めるという決定がGACのアドバイスに従っているかどうか、またその理由を書面で説明するよう理事会に要請しています。

GAC勧告の他の部分を見ると、GACメンバーの中でも意見が分かれていることが読み取れます。

GAC勧告に対する理事会の返答

2019年9月8日には、ICANN理事会がICANN65のGAC勧告への返答となるスコアカードを承認しました。これには、GAC勧告にはコンセンサスとなった勧告が含まれておらず、以前の勧告への追跡調査を行った結果を記載したと最初に書かれており、アマゾン社がICANNに対して勝訴した、2017年の独立審査プロセス、さらにはTLD申請当初の意見募集などにも触れながら、相互に合意可能な解決策を見出すというICANN60でのGAC勧告は満たしている、と主張しました。

アマゾン社のPICs

アマゾン社が7月15日付で提出(公開は9月12日)した公益のための誓約(Public Interest Commitments; PICs)案に関する意見募集(5月15日の理事会決議でICANN事務局に指示されていたもの)は、2019年9月13日から10月12日まで行われました。

この中には、ACTOによって予約されたドメイン名の命名および利用ポリシーという部分があり、基本的には以前からアマゾン社が主張している内容から変わっていませんが、次のような内容となっています。

許可されたドメイン名

  • ACTOは自身と加盟国用に9個ドメイン名を登録可能
  • 許可されるドメイン名は、アマゾン地域固有の文化と遺産[1]に対して、根本的かつ十分に認知された意義を持っていなければならない。
  • 以下のカテゴリーは、許可ドメイン名として登録することができない。
    1. レジストリ運営者またはその関連会社が所有する商標
    2. ISO 3166-1規格に記載されている短い形式または長い形式の国名および地域名、またはいずれかの言語でのいずれかの形式の翻訳
  • ACTOが2文字コードである許可ドメイン名を要求した場合、ACTOは以下であると表明する。
    1. ACTOが使用する許可ドメイン名がACTO加盟国の2文字コードに対応していること。
    2. ACTOは、ACTOが対応する政府や国コード管理者と提携していることを誤って表示したり、偽ってほのめかしたりすることがないように、そのような提携、後援、推薦が存在しない場合には、確実に措置を講じるものとする。「2文字コード」とは、ISO 3166-1 Alpha-2規格で規定されている2文字の国コードに対応する第2レベルの文字/文字2文字のASCIIラベルを意味する。
  • 各許可ドメイン名は、以下の基準を満たしていなければならない。
    • 1文字以上であること、数字(0-9)、文字(a-z)、およびハイフン、またはこれらの要素の組み合わせ。始点および終点文字は英数字の文字を使用し、レジストリ運営者が.amazon TLDに設定した、いかなる追加の規則やポリシーも遵守するものとする。
    • 63文字を超えてはならない。ハイフンで開始、もしくは終了してはならない。.amazonレジストリ契約で予約が要求されているものであってはならない。
    • 有効な国際化ドメイン名は、レジストリ運営者がサポートする言語スクリプトでなければならない。
  • 許可ドメイン名の登録は、レジストリ運営者が選択したレジストラを通じてレジストリ運営者が行う。許可ドメイン名は、レジストリ運営者またはその指定したアフィリエイトの名義で登録され、譲渡はできず、レジストリ運営者が選択し管理するサーバに委任される。
  • サブドメインは「WWW」を除き禁止される。

予約ドメイン名

  • アマゾン地域特有の文化と遺産に重要な意味を持つ最大1,500のドメイン名をリストに登録でき、レジストリ運営者は、予約ドメイン名を永久に登録から留保する。
  • ACTOは、.AMAZONレジストリ契約の発効日から2年後までは、ドメイン名をリストに追加するための書面によるリクエストをレジストリ運営者に提出することができる。
  • レジストリ運営者またはその関連会社が所有する商標、.AMAZON TLDにすでに登録されているドメイン名、および.AMAZONレジストリ契約に基づいて予約する必要があるラベルは、予約ドメイン名リストから除外され含めることはできない。
  • 予約ドメイン名リストは、.AMAZONレジストリ契約の期間中有効

許可ドメイン名の利用の制約

  • 許可ドメイン名はレジストリ運営者または関連団体のウェブサイトを指し示すか、既存のウェブサイトへリダイレクトすることができる。
  • ウェブサイトのコンテンツはすべてレジストリ運営者に送付しなければならない。
  • ダイナミックコンテンツ、利用者生成コンテンツ、実行可能ファイル、個人データは禁止

同PICsに対しては、ブラジル、エクアドルおよびACTOが意見を提出しました。

いずれも、ICANN理事会に対して、TLDの委任を行わない決定を行い、相互に受け入れ可能な解決策を探るよう求めています。

ICANN66のGAC助言

ICANN66モントリオール会議のGAC助言(11月6日付)には、概ね次のように記載されてています。意見が割れたため、コンセンサスに至らず両論併記となりました。

  • あるGACメンバーは、相互に合意可能な解決策がないまま「.amazon」アプリケーションを許可することは、これまでのGACの助言(ICANN60アブダビ会議のもの)と矛盾すると表明し、当事者が相互に合意可能な解決策に到達することを促進するために、可能な限りの手段を尽くすようGACが理事会に要請すべきと述べた。
  • 他のGACメンバーは、この問題に関するすべての関連するGACの助言は理事会によって対処されており、これ以上のGACの助言は必要なく、適用されるIRPの決定に従って申請をこれ以上遅らせるべきではないとの考えを表明しました。

12月17日付のICANNからACTOへのレター

ICANNとアマゾン社がレジストリ契約の締結をもうすぐ行う旨を通告しています。

12月19日のICANNブログ記事

アマゾン社とICANNとのレジストリ契約締結がなされたのと同日の12月19日付で、ICANN事務総長Göran Marby氏によるブログ記事が投稿されました。内容はこれまでの経緯を振り返り、淡々と(新gTLD申請者ガイドブックに記載された手順である)委任前テストおよび委任に進む旨のものでした。PICに対してACTOおよびその加盟国から呈示された懸念については、注意深く検討したとあります。

2020年

1月14日のACTOからICANNへのレター

2019年12月17日付のICANNからのレターに対し、強く反発する内容のものです。

ICANN67での議論

GAC会合において、.amazonに関するものは公式の議題にはありませんでしたが、GACメンバーかつACTO加盟国であるベネズエラが議事録に.amazonに関するステートメントの追加を要求しました。主な内容は、2019年5月の理事会決議およびアマゾン社が提出したPICの内容に反対する、というものです。

5月13日のICANNからACTOへのレター

1月14日のレターへの返事で、やれることはすべてやったが、相互に合意可能な解決策には至らなかった、独立評価プロセスおよび理事会決議などがあり自分(事務総長Göran Marby氏)としては進めざるを得なかった、という内容になっています。

5月21日のACTOからICANNへのレター

ICANN、アマゾン社、ACTOの三者でウィン-ウィン-ウィンの関係を築くべく再交渉を呼びかけています。

5月28日から6月3日にかけてのTLD委任

6月4日には、IANA TLDデータベースのすべての動きをツイートしているアカウントが、.amazonがIANA TLDデータベースに登録されたことを伝えました。6月5日に、.amazonがルートゾーンに入ったことを観測した技術者のツイートが流れました。IANAウェブサイトの記載によれば、3TLDとも5月28日に登録され、6月3日に最終更新が行われたとあり[.amazon .アマゾン .亚马逊]、IANAによる委任レポートはいずれも6月2日付となっています[.amazon .アマゾン .亚马逊]。

7月21日のICANNからACTOへのレター

ICANNとアマゾン社間のレジストリ契約が締結されたこと、および.amazonおよび他2つのIDN gTLDが委任されたことを伝え、PICの実装についてはアマゾン社とACTO間で議論が必要だが、ICANNは両者間の交渉を仲介することはもはや行わず、二者間で行って欲しい旨が記載されています。

最後に

2012年のgTLD追加募集開始より足かけ8年経ってようやく.amazon他TLDが委任され、形としては使用できるようになりました。しかし本稿執筆時点では、アマゾン社は.amazonを使ったウェブサイトではWHOISとエンドユーザー向け規約位しか提供しておらず、今後どのように使っていくかの発表はないようです。またACTO側は納得しているようには見えず、そのまま引き下がるとは思い難いです。そのため、今後どのような手段に出るのか、ICANNが勧めるようにアマゾン社とPICの実装の調整に入るのか、ICANNとの紛争解決を模索するのか、さまざまな可能性が考えられます。後者の場合、ICANN内の説明責任機構が再度使われるのか、ICANN外の紛争解決機構が使われるのか、動きが注目されます。

[1] アマゾン地域にある国々の先住民族のグループ名、国のシンボル、および英語、オランダ語、ポルトガル語、スペイン語でのACTO/OTCA、文化、遺産、森林、河川、熱帯雨林を意味します。

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