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ARIN 47でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2021年4月12日(月)-14日(水)の3日間で、ARIN 47ミーティングが開催されました。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。

ARINでは2020年6月に開催されたARIN 45ミーティングから全期間オンラインでの開催に移行しており、今回もバーチャルでの開催となりました。(現段階では次回ARIN 48ミーティングは現地とオンラインでのハイブリッド、ARIN 49ミーティングは現地開催の予定となっています。)初日・2日目は主にポリシーディスカッションを行い、最終日はメンバー向けの報告・アナウンスなどを中心としたプログラムが行われました。

IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、常日頃からメーリングリスト上で行われており、カンファレンスでのディスカッションへとつながっていきます。この形式はARINに限らず、すべてのRIRで採用されています。

今回のARIN 47ミーティングでは、8件のポリシー提案に関して議論・報告が行われました。

<実装報告>

  1. ARIN-2020-2: Reinstatement of Organizations Removed from Waitlist by Implementation of ARIN-2019-16 (IPv4アドレス割り振り待機者リストから削除された組織の復帰)

<Recommended Draft Policy(一次コンセンサス確認を行う段階のポリシー提案)>

  1. ARIN-2020-7: 4.4 gTLD Micro-allocation Clarification (gTLDに対する割り振りの明確化)
  2. ARIN-2020-8: Clarify and Update 4.2.1.2 Annual Renewal Fee (維持料の扱いについて)

<Draft Policy (一次コンセンサス確認を行う前段階の議論のみ行うポリシー提案)>

  1.  ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)
  2. ARIN-2020-10: Removal of Requirement to Demonstrate Utilization of Reassignments and Reallocations for ISPs Seeking Initial Allocation from ARIN(ARINから初期割り振りを受ける際、ISPの再割振り・割り当ての利用率を設定する条件を削除)
  3. ARIN-2020-11: Add Textual Description for the Number Resource Hierarchy Image in Section 2(セクション2での番号資源管理階層イメージのテキスト説明を追加)
  4. ARIN-2021-1: ASN Clarifications to Sections 2, 8 and 10(セクション2,8,10におけるAS番号の定義明確化)
  5. ARIN-2021-2: Special Use IPv4 Space Out of Scope for Purposes of Determining Waitlist Eligibility(待機リスト利用基準から除外する特殊IPv4アドレスについて)

各提案について以下で簡単にご紹介したいと思います。

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ARIN-2020-2: Reinstatement of Organizations Removed from Waitlist by Implementation of ARIN-2019-16 (IPv4アドレス割り振り待機者リストから削除された組織の復帰)

前回のARIN 46ミーティングでの議論を経て、2020年10月にラストコールをかけられた本提案ですが、その際にメーリングリストで待ったをかける声が多くあがりました。ARIN-2019-16によってアドレスの割り振り/割り当て総数に応じてIPv4アドレス待機リストから一部の組織が削除されました。これを公平性に欠く行為であるとして、待機リストにこれらの組織を戻すべきであるとする賛成派と、枯渇しているIPv4アドレスはより多くの組織に分配すべきであり、必要であればIPv6へ移行すればよいと考える反対派で大きく意見が分かれ、議論が紛糾しました。ラストコールの承認を行うAdvisory Council (AC)はこれを受け、PDPで定められた60日間のうちに理事会承認へプロセスを進めることなく、再度ドラフトポリシーへステータスを戻すことにしました。これに対して、賛成派とする人々がARINのPolicy Development Process(PDP)に存在する異議申し立てのプロセスを行いました。5日間のうちに25の異なる組織に属する人物から異議申し立ての意思表明をメーリングリストで表す必要がありましたが、今回、この意思表明が25名以上確認され、プロセスはARIN理事会での承認へと進められることになりました。このようなプロセスを踏むことは異例のことであると言えます。結果、ARIN理事会は本提案を承認し、2021年3月に実装まで完了しています。今回のミーティングでは本ポリシーはすでに実装が完了しており、17の組織が今回の対象となり待機リストに戻ったと報告しています。質疑では反対派からのコメントがあるかと思いましたが、本ポリシーに伴う割り振りを確認することはできるか?という質問1件のみで淡々と報告は終了しました。

ARIN-2020-7: 4.4 gTLD Micro-allocation Clarification (gTLDに対する割り振りの明確化)

4.4項ではICANNから委任を受けたgTLDオペレーターへの割り振りについて記述されていますが、そのうちの”new gTLD”という言葉について、2012年6月以降に委任されるすべてのgTLDが対象であり、2012年1-4月に募集された新gTLDとの混同を防ぐために修正を行うという提案です。メーリングリスト上では新しいコメントはついていませんでした。ミーティングにおいても反対の声はなく、支持を表明するコメントが数件あったのみでした。本提案は採決が行われ、反対票なしで一次コンセンサスとなりました。次のプロセスへと進めることが決まっています。

ARIN-2020-8: Clarify and Update 4.2.1.2 Annual Renewal Fee (維持料の扱いについて)

セクション4.2.1.2.では料金は年次更新で発生すると規定されていますが、料金はNumber Resource Policy Manual (NRPM)を定義するうえで基準となるものではありません。料金に関する規定はRegistration Services Agreement (RSA)で規定されているため、重複する文言を削除する提案です。削除と共に用語説明をするセクション2にRSAを定義する文章の追加も提案しています。変更による影響はないとみられています。メーリングリストでは一部の参加者から、権利の失効を説明するうえで役に立つことから文言を変えるなどして残した方が良いのではないか、という声も挙がっていました。ミーティングにおいては反対や懸念の声は上がらず、満場一致で一次コンセンサスに至りました。こちらも次のプロセスへと進めることが決まりました。

ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)

前回のARIN46ミーティングから継続議論となっている提案です。ARINでは移転・割り振りを受けた後、12か月間は移転でIPv4アドレスを放出することができないことになっていますが、アドレス移転のために大きなアドレスブロックの一部を切りだすことを防ぐために、細かいアドレスブロックと「交換」することを12ヵ月以内に行うことが実務の上で認められていました。本提案ではこの「交換」が認められることを明文化しようというものです。メーリングリストでは待機リストのアドレスが利用されて、大きなアドレスブロックを得ようとする組織が現れることを懸念する声などがありました。また、ミーティングでも大きなブロックサイズを「交換」するにはARINの事前承認が必要になるのか、また承認はどのような基準で行うか、交換を行う2組織の内どちらがその承認を申請しておかねばならないのかといった質問が挙がっていました。制度面で規定するべき事項が多く、コンセンサスまではもう少し時間が必要となるだろうといった印象でした。

ARIN-2020-10: Removal of Requirement to Demonstrate Utilization of Reassignments and Reallocations for ISPs Seeking Initial Allocation from ARIN(ARINから初期割り振りを受ける際、ISPの再割振り・割り当ての利用率を設定する条件を削除)

IPv4アドレスの初期割り振りを受ける際に、上流プロバイダからの再割振りや再割り当てを受けていない完全に新規の組織に関してはすぐに待機リストに並ぶことができますが、そうでない組織(ISP等)は現在再割振り・再割り当てを受けているアドレスが効率的に利用されていることを証明する必要があります。このステップが存在することで待機リストへの登録順序に不平等が発生しているとし、排除しようというのがこの提案です。メーリングリストにはペーパーカンパニーを利用した不正取得につながるのではないかといった懸念や、制度として当然に必要であるとの声が挙がっていました。ミーティングでは/24以下のアドレスを必要とする小規模ISPをカバーする文言を追加すべきだとの意見や、実際に待機リストへの追加が遅れている組織はどのくらい遅れているのか、静的・動的割り当てに関してどの程度ポリシーの中で考慮されているのかといった質問がされていました。提案目的自体には好意的な意見も見られたので、意見・質問を受けた項目に関して見直しをかけて再度議論になっていくかと思われます。

ARIN-2020-11: Add Textual Description for the Number Resource Hierarchy Image in Section 2(セクション2での番号資源管理階層イメージのテキスト説明を追加)

セクション2の中で番号資源管理の階層構造について、図で示されていますが、これについて文章での説明はありません。現在のままでは視覚障碍者への説明や多言語での説明を行うことができないということで、この図を説明する文章を付け加えようというものです。メーリングリストでもこれに支持する声が多数見られています。ミーティングでも支持の声が多く集まりました。本提案の中に”ISP”と記載の文言を”LIR”に修正する内容を含んでいる点について、それぞれの用語定義の確認はありましたが、これらについても質問者から理解を得ており、コンセンサスとなる日は近いだろうと思われます。

ARIN-2021-1: ASN Clarifications to Sections 2, 8 and 10(セクション2,8,10におけるAS番号の定義明確化)

現在のポリシーにおいてセクション8では移転に関して記載されていますが、これらの文章はIPv4アドレスおよびそれに伴うAS番号の移転に関する記述に読み取れてしまい、AS番号のみの移転に対応できていないと提案者は述べています。これに伴ってセクション8の文言を”IPv4 and/or ASN”等の形に修正し、関連するセクション2 (用語定義)へのAS番号の追加、セクション10.3 (IANAのAS番号分配ポリシー)について文言修正を行うというものです。メーリングリストでは簡易な文言変更の部分に関してはポリシーとして提案しなくても可能なのでは?との声も挙がっていますが、明確化する提案者の意図に関して好意的に受け入れられている様子でした。ミーティングでも支持の声が多くありましたが、セクション10に関してはIANAに関する文章なので、グローバルポリシーの変更に当たってしまうのではないかといった確認もありました。セクション10の扱いを確認し、議論を進めていくことになります。

ARIN-2021-2: Special Use IPv4 Space Out of Scope for Purposes of Determining Waitlist Eligibility(待機リスト利用基準から除外する特殊IPv4アドレスについて)

4.4項(gTLDオペレーターへの割り振り)、4.10項(IPv6実装のためのIPv4アドレス割り振り)は”Special use”と定義しているにも関わらず、待機リストの利用資格として/20以上もしくは同等のアドレスを持つものは申込みできないとしており、これらの特殊アドレスも同等にカウントされています。本提案ではこれらの”Special Use”なアドレスを待機リスト利用資格の判断から除外しようというものです。メーリングリストでは、この提案にあわせて特殊アドレスが正しく目的通り利用されているか検証することはできないか、もしくは特殊アドレスのために予約されたプールのアドレスを公開することはできないか、といったコメントがありました。ミーティングでは特段の指摘事項はなく、賛成多数といった様子でした。次回以降のミーティングで一次コンセンサス確認となるかと思われます。

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以上が今回のポリシー提案になります。関心のあるポリシーはありましたでしょうか。

ARINミーティングは日本では深夜帯での開催となりますので、リアルタイムでの参加は難しいですが、資料や議事録の公開がありますので併せて確認いただけると面白いかと思います。

 

ARINなど、他のRIRでの提案がその後APNICでも提案されることもあり、JPNICは各RIRの動向に注目しています。ブログなどを通して皆様にも情報共有していきますのでぜひご覧ください。