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IGF 2021報告会レポート

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2022年2月3日にJPNICからも職員が参画している「IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」が主催となり「IGF 2021報告会」を開催しました。本稿ではその内容を簡単にご紹介します。

プログラムの概要

(発表者敬称略)

オープニング

  • 総務省 国際戦略局長 田原 康生

1. IGF 2021報告(様々な視点/立場から見たIGF2021)

  • モデレーター 一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会 立石 聡明
  • 報告者
    • 政府セクター:総務省国際戦略局 飯田 陽一
    • ビジネスセクター:一般財団法人国際経済連携推進センター 横澤 誠
    • 技術コミュニティ:株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文

2. パネルディスカッション(テーマ:信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)・国際データガバナンス)

  • モデレーター 総務省国際戦略局 飯田 陽一
  • パネリスト
    • ビジネス 一般財団法人国際経済連携推進センター 横澤 誠
    • 技術   一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター 小宮山 功一朗
    • ユース  関西学院千里国際高等部 渡辺 加奈

3. パネルディスカッション(テーマ:国内のインターネットガバナンス関連活動の組織化について)

  • モデレーター 一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) 前村 昌紀

最初に、総務省 国際戦略局長 田原 康生様より、開会のご挨拶をいただきました。デジタル田園都市国家構想、DFFT、IGF 2023日本開催などについて触れられました。

1. IGF 2021報告

IGF 2021報告では、3つのステークホルダーの立場から3名の方にご報告いただきました。総務省の飯田氏からは、第16回インターネットガバナンスフォーラム(IGF 2021)の全体概要に加え、日本政府が開催および参加したハイレベルセッション、閉会式での金子総務大臣挨拶(ビデオレター形式)などについてご報告いただきました。

国際経済連携推進センターの横澤氏からは、「ビジネス界から見た昨年度のIGF2021の状況」と題して、ビジネス界からの率直なフィードバックについてご報告いただきました。COVID-19の流行もあり、イベントの準備期間が十分でなかったため影響があったこと、ウェブサイトに問題が起きたこと、ズームボミング(遠隔会議へ不適切な画像や音声などを送り付けたりするなどの荒らし行為)で多くのセッションが中断されたこと、セッションの長さ(2時間)が適切であったこと、政府や企業をIGFに招くための努力の継続の必要性、セッションによっては登壇者の多様性に欠けたものもあったこと、などについてフィードバックがあったとのことです。これらは、追ってICC-BASIS(国際商業会議所 情報社会支援のためのビジネスアクション)のウェブサイトにて公開される予定とのことです。

堀田氏からは、Workshop #175 Clash of Digital Civilizations: Governments and Tech Giantsセッションについて報告がありました。モデレーターの重要性、欧州でアルゴリズムの法律への適合状況を公開する動き、フランスでフェイクニュース規制が導入されたこと、サイバー攻撃のデータベース整備の動きなどが紹介され、全体的に議論をして成果を出すというよりも各人が情報を共有するという印象を受けたこと、といった考察が述べられました。

議論の時間では、いわゆるGAFAからのIGFへの関与、IGF 2021全体テーマである“Internet United”の意味するところ、IGF 2021のセッションのうち日本で議論可能なものはどういったものか、などが採り上げられました。最後の点については、例えばアクセスの問題についても、過去の経験を伝えることは可能だろうし、日本特有の課題である災害や高齢化についても、何でもデジタルに結び付ける風潮からすると十分アジェンダとなり、日本らしさを出せるのではないか、ジェンダーについての議論もできるのではないか、法律やプロセスの理念は国によって違うので、そういった話が日本から出てくるとおもしろいのでは、日本での導入例と他国の導入例を比較するとおもしろいのではないか、などのコメントがありました。

2. パネルディスカッション(信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)・国際データガバナンス)

まずDFFTの考え方について、飯田氏よりプレゼンテーションがありました。データの自由な流通と、トラスト(プライバシーおよび知的財産保護・セキュリティ確保・消費者保護など)の保護は相対立する概念で、前者は米国が重視し、後者は欧州が重視して両者が対立する構図で、そのバランスを取る努力がなされてきましたが、相対立するものではなく相互補完するものとして定義し、どちらかを取るのではなく両者とも進めるのがDFFTということです。

横澤氏からは、DFFTの全体設計はこれから、そのうちのトラストの設計をどうしていくかが重要、一方日本におけるデジタル変革は遅れていること、なぜDFFTが経済を動かすのか、越境データ流通状況、などについて発表いただきました。

小宮山氏からは、プライバシー保護の立場(欧州)と国家安全保障の立場(米国、中国)があること、DFFTの対象をデータ全般から狭めれば賛同者が増えるのではないか、国家がプラットフォーマー/Big Tech/Tech Giantsよりも国民のプライバシーをきちんと守れるのか、データローカライゼーションは独裁国家に武器を与えることになるのではないか、などが話されました。

渡辺氏からは、若者のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用方法、問題点および改善案についてお話しいただきました。若者は大人の想像外の使い方をすることで抜け穴が発生し、そこから問題が起きることが大いにあるため、大人は若者がSNSの利用目的およびどのように利用しているかを突き詰めて改善策を練るべき、との結論でした。

議論の時間になり、飯田氏より各登壇者に向けて質問が投げかけられました。以下、質問と回答です。

  • DFFTに関してセキュリティ関係で議論すべき点:GDPRが欧州で導入された後にアップル社がiOSでクッキーの保存期間を短くしたため、それまでの形態でのトラッキング広告が終了するという事態が発生したように、政府民間が同じベクトルに向けて動くことが重要だと思う。(小宮山氏)
  • DFFTが日常生活にどのような影響を与えるか:例えばAIにおけるAIスピーカーのように、具体的なメリットの例が明確に示されるのが大前提。(渡辺氏)
  • DFFTの取り組みでどのあたりが大事になってくるか:国の役割と民間企業の役割をインターネット上でどう分担して整合させるかということが、DFFTのT(トラスト)の構成要素の一つであり日本的な課題だと思っている。(横澤氏)

飯田氏より、各ステークホルダーがどのように協力できるのか、インターネットガバナンスのマルチステークホルダーアプローチをどのように実現していけるのかを考えて世界に発信したい、というのが来年IGFを日本で開催したいという思いの核心であり、日本のガバナンスの成功事例を世界に発信し、世界での成功事例を日本が吸収できるとよく、少しでも日本のインターネットがよくなっていくことに寄与したい。それには政府だけがやるものにはしたくないという思いがある、との発言がありました。

3. パネルディスカッション(テーマ:国内のインターネットガバナンス関連活動の組織化について)

本セッションはパネルディスカッションと案内していましたが、パネリストだけが議論するのではなく参加者に加わってもらいたいとの意図から、パネリストなしで誰でも議論に参加できるセッションとなりました。

JPNICの前村より、EuroDIGの費用構造および、事務局代行業者を使った場合のコスト試算が示され、論点として以下の4点が挙げられました。

  1. 事務局の規模
  2. どの程度拠出してもらえそうか
  3. 事務局組織の運営と、会合内容の運営は分離可能か
  4. 意思決定は拠出者なのか、コミュニティメンバーからなのか

EuroDIGの年間支出は1800万円程度でそれほど大きくないものの、毎年の会合開催は開催地ホストが費用を負担するというのが難儀なのでは、という観測が示されました。

参加者からの意見の概要は、概ね以下の通りとなりました。

  • 3.については、可能かというよりも、分離しないと組織が運営できない、組織運営の対象は絞っておく必要がある。
  • 人件費の部分をどれだけ事務局で持つのか、人を出して費用を節減する余地、インターンを募る、費用をどうやって集めるのか、法人会員と個人会員に分けるが投票権は拠出額にかかわらず平等、理事会など意思決定の仕組み、などを考えた上でビジネス界やさまざまな団体に打診していければよいのではないか。
  • 運営の話と、国内IGF活動の議論の投票権とは別で、後者をスポンサー費用を払って購入するというのは違うと思う。事務局組織の会員と、NRI活動を行うメンバーは分けなければならないのではないか。法人会員と個人会員の両方を導入する場合、個人会員がどういう場面で参加するのか、組織内部の議論に個人会員が参加できるようにはすべきでないのでは。
  • スポンサーという概念を導入すると、ビジネスの声が強くなり、寄付とは違ってしまう、費用を各ステークホルダーがどう応分に負担するか、企業の社会的貢献という観点でインターネットで商売をしている企業のコミュニティへの還元は当然で、企業への我田引水的なものにならないか懸念する。
  • 誰から拠出を募るのか、誰から断るのかは考えないといけない。グレーゾーンのところから寄付が来てしまうことを考えたら、拠出額と発言権が連動するのはまずい。

これらを受け、前村より、新たな論点も発生したので、ドラフトを作成して活発化チームの会合に提示したい、との考えを述べて締めくくりました。

登壇者の皆様には、パンデミックのためオンライン参加となったため、通常業務に加えてIGFに参加いただいた上で報告会へのご準備をいただき、厚く御礼申し上げます。参加いただきました皆様も誠にありがとうございました。参加がかなわなかった方も、録画および資料を掲載していますので、ぜひご覧ください。

今後、IGF 2022に向けて国内事前会合が開催されることになりますので、「IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」の活動にご参加いただき、日本で開催されるIGF 2023に向けて、活動の輪が広がっていくことを切に願っています。

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