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APNIC 53でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案のご紹介

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2022年2月28日(月)~3月3日(木)の日程で、APNIC 53カンファレンスが開催されます。

 

今回も新型コロナウイルス感染症の状況を考慮し、オンラインでの開催を選択することとなりました。APNICでは、APNIC 50カンファレンスよりオンラインでの開催を行っています。会議への参加には会期開始までにWebサイトからの参加登録が必要となりますので、参加を希望される方はご登録をお忘れなくお願いします。

APNICでは、ポリシーSIG (Special Interest Group)において、IPアドレス・AS番号の分配ポリシー(以下、ポリシー)に関する議論を行っています。平時はポリシーSIGのメーリングリストで議論や意見交換を行っています。ポリシーの改定を行うための提案はメーリングリストで議論されますが、年2回開催されるAPNICカンファレンス期間中はオープンポリシーミーティングと呼ばれる時間でface to faceでの議論を行います。この議論を通じて、提案の改善、コンセンサスの形成へ向けたやりとりが行われます。

今回のオープンポリシーミーティングでは、3点の提案に関して議論が予定されています。

  1. prop-142: Unify Transfer Policies Text(移転ポリシーテキストの統一)
  2. prop-143: ASN to Customer(AS番号のエンドユーザーへの割り当て)
  3. prop-144: Reserve pool under Experimental Allocation Policy(実験用割り振りアドレスのリザーブプール確保)

prop-142: Unify Transfer Policies Text (移転ポリシーテキストの統一)

APNIC52から、ポリシー文書における冗長な記載や用語の不統一に関して整理を行い、誰が見てもわかりやすいポリシーにしていくためワーキンググループを組成し、活動を行っています。この提案はその活動の一環となる提案です。

現在の移転に関して規定しているポリシーでは、番号リソース(IPv4, IPv6, AS番号)の3つにそれぞれ分けて記載されています。本提案ではそれらの文書を一つにまとめることを提案しています。

対象となるのは以下のセクションです

Part 5: Resource Transfers
           11.0. Intra/Inter-RIR Transfers
           11.1. Conditions on the Resources to be transferred
           11.1.1. Historical IPv4 Resources
           11.2. Conditions on the Source of the transfer
           11.3. Conditions on the Recipient of the transfer
           12. Mergers & acquisitions
           12.1. Updating registration details
           12.2. Effect on membership agreement
           12.3. Consequences for delegations

APNIC事務局からは本提案の実装の際の影響として、現在移転公開履歴について8.1 (APNIC地域内でのIPv4アドレス移転), 8.2 (RIR間でのIPv4アドレス移転)のみ作成・公開しているが、本提案により各リソースの移管処理やAS番号の移転履歴(過去分を含む)についても作成・公開する必要があることを懸念として表明しました。

2月17日(木)に開催されたAPNIC 53 Policy Proposals Webinarでは本件について触れられ、コンセンサス確認を 1.ポリシー文書の統一の可否 と 2.移転履歴を現行のままor全部公開に変更 の2つで行われることが提案されました。1についてはおおむね問題はないでしょうが、2についてはどのような意見が出てくるのか注目してみたいと思います。

 

prop-143: ASN to Customer(AS番号のエンドユーザーへの割り当て)

APNICではLIRが顧客の代わりに申請を行い、AS番号の割り当てを受けることができます。ただしこの条件として、「申請したLIRとのコネクティビティを喪失した場合には、このAS番号を返却しなければならない」と定められています。この条件はここでいう「顧客」がコネクティビティを提供するLIRを何らかの理由で変更したり、自身がAPNICやNIRの会員となる際に不便に働くものとなってしまっています。本提案ではこれらのシチュエーションにおいて、同じAS番号を継続して使用できるように文言を変更しようという提案です。

事務局の影響予測では用語の統一などが指摘されましたが、2月21日に公開されたver.2で既に修正が完了しており、大きな問題はなくコンセンサスへ向かっていくことが予想されます。

 

prop-144: Reserve pool under Experimental Allocation Policy(実験用割り振りアドレスのリザーブプール確保)

APNICでは実験用のIPv4アドレス割り振りを5.7項にて定めています。ただしこれはその条件を定める文書であり、アドレスプールが確保されているわけではありません。現在のIPv4アドレス枯渇の状況から、必要な時に割り振りを受けられるか提案者は懸念しています。本提案では実験用のIPv4アドレスとして/21を実装後5年間確保しようという提案です。あわせて、5.7.5項で使われている“IP resource application fee” (IPアドレス申請費)を”assessment of a Member’s annual fee” (メンバーシップ費の審査)と変更することで実運用に合わせ、整合性をとろうという提案です。

事務局の影響予測では、5年後失効した際は再度確保することを推奨するのかしないのか明確ではないといった指摘があったほか、APNICでは過去5年間で6件(いずれも/24)の実験用アドレスのリクエストがあったことを明かしています。確保するサイズとして/21が適切であるかどうかは議論が起こるポイントであると思われます。

 

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以上3件のポリシー提案をご紹介してまいりました。前回のAPNIC52で最も注目され、継続議論となったたポリシー提案であるprop-141: Change maximum delegation size of IPv4 address from 512 ( /23 ) to 768 (/23+/24) addresses (IPv4アドレスの最大割り振りサイズの/23から/23+/24への変更)は新しい版が発行されたものの、期限日までに出てこなかったため、次回のAPNICカンファレンスに回ることになるかと思います。今回は文章の簡略化・整合性の確保などが中心ですので大きく議論が荒れることはなさそうですが、節々では議論が必要そうな点も含んでいます。気になるものはぜひAPNICのWebページも確認する、カンファレンスに実際に参加するなどして追ってみてください。カンファレンスでの議論結果に関してはJPNICのメールマガジン-JPNIC News & Views-でご報告を予定しています。

オンラインで無料ですので、ぜひこの機会に参加してみてください。

 

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