RIPE 84での話題について
ip_team IPアドレス 他組織のイベント2022年5月16日(月)~20日(金)の日程で、RIPE 84ミーティングが開催されました。RIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)は、世界に五つある地域インターネットレジストリ (RIR; Regional Internet Registry)のうち、ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIRです。
RIPE 84ミーティングはドイツ・ベルリンでのオンサイトとオンラインでのハイブリッド開催となりました。オンサイトの会場が用意されるのは2019年10月のRIPE 79ミーティング(オランダ・ロッテルダム)以来となりました。
APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様に、RIPE NCC地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。
今回のRIPE 84ミーティングは前回と同じく、従来のオンサイト開催時と同じく5日間での開催となっています。1コマ(ワーキンググループ)あたりの時間枠は前回は60分としていましたが、オンサイト再開に伴い、90分単位に戻る形となりました。タイムラインおよび各セッションの詳細は、以下より参照可能となっていますのでぜひチェックしてみてください。
RIPE NCCのポリシー提案の進行状況はWebサイトで確認できますが、現在、進行中のポリシー提案は1件です。
2022-01:Personal Data in the RIPE Database
本提案はDatabase WGで議論が行われる提案です。EU一般データ保護規則(GDPR)に則れば、自然人(個人)の個人情報は正当な理由なく登録することはできません。RIPEデータベースはGDPR施行以前から存在してきたため、ポリシーはGDPRに則さない形となっていました。データベースに登録される情報は基本的に法人に関する情報で十分であり、割り振り/割当先が自然人である場合を除き、個人名などの情報は登録する必要がありません。本提案ではGDPRに則し、必要のない個人情報を登録することはない旨をポリシー上に明記する提案となっています。
また、提案中は1件のみでしたが、アドレスポリシーWGでは興味深いディスカッションが1件行われましたので紹介したいと思います。
Concept Policy Proposal – Remove Policy for Mandatory IPv4 PA Assignment Registration in the RIPE Database
こちらは、PDPプロセスに入る前の事前ディスカッションとして行われたプログラムです。IPアドレスの割り当てを行った場合、データベースへの登録を行う(JPNICでいう割り当て報告申請を行う)のは義務となっています。ですが、このうちLIR⇒第三者への割り当ては当然必要ながら、LIRが自身へ割り当てる、インフラ割り当てに関して、提案者は疑問を持ちました。インフラ割り当て報告を行う意図は、IPアドレスの使用率に加算し、追加割り振りを受ける際の基準を満たすためだったと提案者は言っています。IPv4アドレスが枯渇し、追加割り振りを受けることがほとんどなくなってしまった今、インフラ割り当て報告は義務ではなく任意(推奨)にレベルを落としてもよいのではないかというのが本提案です。ネットワーク運用上でも、インフラ割り当て報告は行わなくても、割り振り先が判明していればそこにコンタクトをとることができるので支障はなく、労力を割く意義が存在しないとの考え方でした。一方でRIR間での移転の際にはIPアドレス使用率が要件となることがあることから、今後移転を検討している組織などに混乱を与える可能性があります。本稿執筆時点で、メーリングリストでいくつかの投稿を確認できていますが、あまり否定的な意見は強くないように見えます。ただし、レジストリとして割り当てはすべて正しく登録されるべきである、というような反対意見も一定数見られています。
現段階ではRIPEで話が挙がったレベルですが、今後の議論の状況によっては、APNICでもポリシー提案が行われる可能性があります。レジストリの根幹業務を変更するような提案ですので、引き続き注視しながら、皆様のご意見なども伺ってみたいと思います。
これらの議論は終了後アーカイブ・資料等の公開もあるかと思いますので、気になるものがありましたらぜひチェックしてみてください。
JPNICブログでは引き続きRIRのIPアドレスポリシー関連の話題をお知らせしていきます。その他の記事もぜひお読みください。