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APNIC 54でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案のご紹介

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2022年9月8日(木)~15日(木)の日程で、APNIC 54カンファレンスが開催されます。

 

今回はAPNIC 49カンファレンス以来、2年半ぶりのオンサイトでの開催となります。開催地はシンガポールで、APrIGF2022等との共催となっています。なお、今回も引き続きオンラインでの参加方法も用意されています。会議への参加にはオンサイト・オンライン問わず、Webサイトからの参加登録が必要となりますので、参加を希望される方はご登録をお忘れなくお願いします。

APNICでは、ポリシーSIG (Special Interest Group)において、IPアドレス・AS番号の分配ポリシー(以下、ポリシー)に関する議論を行っています。平時はポリシーSIGのメーリングリストで議論や意見交換を行っています。ポリシーの改定を行うための提案はメーリングリストで議論されますが、年2回開催されるAPNICカンファレンス期間中はオープンポリシーミーティングと呼ばれる時間でface to faceでの議論を行います。この議論を通じて、提案の改善、コンセンサスの形成へ向けたやりとりが行われます。

今回のオープンポリシーミーティングでは、4点の提案に関して議論が予定されています。なお、前回のAPNIC 53で情報共有が行われました、prop-141: Change maximum delegation size of IPv4 address from 512 ( /23 ) to 768 (/23+/24) addresses(IPv4アドレスの最大割り振りサイズの/23から/23+/24への変更)は、APNICの定める期日までに提案者から手続きが取られなかったため、今回は議論・コンセンサス確認の対象とはなりません。

  1. prop-145: Single Source for Definitions(ポリシー文書における用語定義の集約・統一)
  2. prop-146: Aligning the Contrast(見出しとコンテンツの整合性確保)
  3. prop-147: Historical Resources Management(歴史的PIアドレスの管理方法について)
  4. prop-148: Leasing of Resources is not Acceptable(IPアドレスのリース禁止)

prop-145: Single Source for Definitions(ポリシー文書における用語定義の集約・統一)

現在有効なAPNICドキュメントでは、ガイドラインなどを含めた各文書ごとで用語定義が行われています。文書によっては他文書との参照関係を明示していますが、双方向にその参照関係が明示されていないものもあります。例として「エンドサイト」という用語はAPNIC-127(APNIC Internet Number Resource Policies; ポリシー文書)とAPNIC-114(APNIC guidelines for IPv6 allocation and assignment requests; IPv6ガイドライン)で用語定義がされており、APNIC-114ではAPNIC-127の参照関係が明記されているものの、APNIC-127側ではその参照関係が明記されていません。このような曖昧さを防ぐべく、本提案では用語定義に関するドキュメントを一つにまとめ、各文書にある用語定義はすべて移動するようにしようというものです。APNICにはAPNIC-080(APNIC Definition Document)という用語定義に関するドキュメントがすでに存在しているので、ここにポリシー文書に出てくる用語定義もまとめるようにしようと提案されています。

本提案は特に内容に変更を与えるものではなく、文書の簡潔化に貢献するような変更ですので、問題がなければこのままコンセンサスに至る提案かと考えられます。

 

prop-146: Aligning the Contrast(見出しとコンテンツの整合性確保)

ポリシー文書の3.1項では番号資源管理の目標を記載しています。そのうち、3.1.4項では連続した委譲に関して最大限に努める旨を記載していますが、そのタイトルは”No Guarantee of contiguous delegation(連続した委譲の非保証)”となっています。また、3.1.8項では、申請者とコミュニティでのニーズのバランス調整を図る旨が記載されていますが、“Conflict of Goals(目標の相反)”となっており、タイトルと内容が合致していないように見受けられます。本提案では3.1.4項は“Contiguous Delegation(連続した委譲)”、3.1.8項は“Balancing the goals(目標のバランス)”と見出しを変更することで、内容との整合性を高めようという提案です。

本提案に関しても、直接の内容に変更はなく、文書の整合性を高める提案ですので、大きな問題点が見つからない限りはコンセンサスへ向かうものと考えられます。

 

prop-147: Historical Resources Management(歴史的PIアドレスの管理方法について)

APNICでは現在、歴史的経緯をもつプロバイダ非依存アドレス(以下、歴史的PIアドレス)の割り当て先組織を明確化する取り組みを行っています。APNIC EC(理事会)では、2023年1月1日までにこれらの歴史的PIアドレスについて、継続利用の手続きが完了しない場合に対象のアドレスを回収し、データベース上ではAPNICによる予約済みアドレスとして登録することを決定しています。対象となる歴史的PIアドレスをAPNICの管理下に置くことで、ルーティングセキュリティの強化やインターネットの安定運用に貢献できると考えられています。(参考となるAPNICブログの記事)

本提案は、上記の取り組みの結果回収された歴史的PIアドレスについて、12ヶ月の猶予期間を経て、割り振り・割り当て可能なアドレスプールに入れることを目的とした提案です。12ヶ月の猶予期間中に、割り当て先組織からの申し出や、所定の手続きが完了した場合には、その組織への割り当てとしてAPNICデータベースの登録が元に戻されることになります。

ポリシーSIGのメーリングリストでは、APNIC事務局より以下のようなデータが示されています。

現在確認できているAPNIC管理下にない歴史的PIアドレス3,932プレフィックスのうち、885個がルーティングテーブル上で確認されており、その内訳は以下である。

  1. APNICと契約を結び、管理を開始した組織:81
  2. 契約を結ぶべく、手続き中の組織:175
  3. メールに対して応答の無い組織:581
  4. 連絡先不明の組織:44
  5. 不要とし、返却を済ませた組織:4

参照:https://mailman.apnic.net/hyperkitty/list/sig-policy@lists.apnic.net/thread/XDIITMSYNORICFKMTJ5ENOLFU77KXUX3/

これに対して、何人かの投稿者は応答の無い組織があまりに多く、他の組織への割り振り・割り当てが実行された際の影響の大きさを懸念する声を表明しています。

本提案は今回から議論が行われますが、APNIC事務局としては数年前から歴史的PIアドレスの確認作業は行っているものであり、回収されたアドレスが死蔵されることなく活用される方向での議論のため、おおむね賛成の方向で話は進んでいくのではないかと推測しています。一方で、新たなIPv4在庫の登場はIPv6実装の推進を妨げる可能性もあるので、その点での懸念が残るというのが問題点として考えられています。

なお、本提案の対象はAPNICから直接割り当てられている歴史的PIアドレスです。JPNIC管理下で各組織に割り当てられている歴史的PIアドレスは、すでに割り当て先組織の明確化が完了しており、このたびの対象には含まれません。

 

prop-148: Leasing of Resources is not Acceptable(IPアドレスのリース禁止)

現在のポリシー文書では、IPアドレスの割り当ての際は直接接続であることを要件としていますが、明示的にリースを禁止する文言はありません。本提案では、リース禁止の文言を明記し、APNIC事務局はリースの疑いを調査・通報を受ける制度を設置し、判明した場合にはデータベースからの削除対応を求めています。

提案者は、リースは明示的に禁止されていないものの、これまでも許容されていないものと認識しています。APNICも、リースは許容されるものではないとのスタンスで、これまでも対応しています。しかし、実態としてリース事業者は存在しており、積極的な対処はできていませんでした。提案者は明示化することでこれらの対応整備を期待しています。

メーリングリストでは、提案者および賛同者と、反対派およびびリース事業者の対立構造になっています。ポイントとして、

  • リースの定義・判断基準
  • 調査方法・通報制度の実装方法

の2点が主となっています。リースの定義について、ARINではリースを割り振り基準となる利用率計算に加算するポリシー提案が行われていたことから、リースは許容されている、あるいは加算しなければ問題はない等の意見が見られています。また、本提案を実装することで、多くの受益者(リース利用者)が接続性を失い、APNICへの訴訟問題が多く発生するとの意見も見られています。

現状折衷するような様相ではないですが、双方の歩み寄りもしくは強硬姿勢がどのようにOPMでの議論で展開され、結論付けられていくのか、注視が必要かと思われます。

本提案は、APNICで実装となった場合、NIRでも同様の実装が求められています。JPNICにも影響のある提案ですので、ぜひ皆様にも注視いただければと思います。

 


以上4件のポリシー提案をご紹介してまいりました。特にprop-148は注目を集めるポリシー提案ですので、注視いただければと思います。気になるものはぜひAPNICのWebページも確認する、カンファレンスに実際に参加するなどして追ってみてください。カンファレンスでの議論結果に関してはJPNICのメールマガジン-JPNIC News & Views-でご報告を予定しています。

APNIC54カンファレンスは、オンラインでも参加できます。無料参加できますので、ぜひこの機会に参加してみてください。

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