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ARIN 50でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2022年10月20日(木)、21日(金)の2日間で、ARIN 50ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。

今回のARIN 50ミーティングはアメリカ、カリフォルニア州ハリウッドでの開催となります。例年は3日間の会期でしたが2日間に短縮され、各日でIPアドレスポリシーに関するディスカッションやレジストリ運営に関する各種リポート、関連する情報共有が予定されています。

IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、常日頃からメーリングリスト上で行われており、カンファレンスでのディスカッションへとつながっていきます。この形式はARINに限らず、すべてのRIRで採用されています。

今回のARIN 50ミーティングでは、12件のポリシー提案に関して議論・報告が行われます。

<Recommended Draft Policy(一次コンセンサス確認を行う段階のポリシー提案)>

  1.  ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)
  2. ARIN-2022-1: MDN Clarification for Qualification(複数のネットワークを保有する組織の条件明確化)

<Draft Policy (一次コンセンサス確認を行う前段階の議論のみ行うポリシー提案)>

  1. ARIN-2021-7: Make Abuse Contact Useful(Abuse連絡先の利便性向上)
  2. ARIN-2021-8: Deprecation of the ‘Autonomous System Originations’ Field(AS Origin項目の廃止)
  3. ARIN-2022-2: Remove Barrier to BGP Uptake in ASN Policy(AS番号ポリシーにおけるBGP実装の障壁を排除)
  4. ARIN-2022-3: Remove Officer Attestation Requirement for 8.5.5(8.5.5項役員誓約書提出要件の削除)
  5. ARIN-2022-5: Clean-up of NRPM Section 2.11(NRPM2.11項の簡潔化)
  6. ARIN-2022-8: Streamlining Section 11 Policy Language(セクション11文言の効率化)
  7. ARIN-2022-9: Leasing Not Intended(リース許容しないことを明示化)
  8. ARIN-2022-11: Clean-up of NRPM – Introduction of Sections 2.17 and 2.18(NRPMの明確化-2.17,2.18項の導入)
  9. ARIN-2022-12: Direct Assignment Language Update(直接割当の文言アップデート)
  10. ARIN-2022-13: Clean-up of NRPM Section 2.10(NRPM2.10項の明確化)

各提案について以下提案番号順で簡単にご紹介したいと思います。

 


ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)

ARIN46ミーティングから継続議論となっている提案です。ARINでは割り振り・移転を受けた後、12か月間は移転でIPv4アドレスを放出できないことになっていますが、アドレス移転のために大きなアドレスブロックの一部を切り出すことを防ぐために、小さなアドレスブロックを受け取り、大きなアドレスブロックを移転に出すことが実務の上で認められてきました。(アドレスブロックの分散回避のためのリナンバリングにあたります。)本提案ではこの「交換」が認められることを明文化しようというものです。2022年5月2日に最新版が公開されています。メーリングリスト上でコメントは挙がっていませんが、実務上行われてきた行為を明文化するものですので、致命的な課題が指摘されなければコンセンサスに至るものと見込まれます。

 

ARIN-2021-7: Make Abuse Contact Useful(Abuse連絡先の利便性向上)

現在、ARINではAbuse対応連絡先として電話番号・メールアドレスが提供されていますが、電話では自動応答、メールではフィルタリングや自動送信などまともに機能していない組織も多くみられるようです。よりAbuse連絡先を実用的なものとするために、Abuse確認の際に利用されるWebページのURLを表示できるようにするのが本提案です。連絡先をURLにすることで、その先のWebページにて、柔軟にコンタクト方法を選択できるとしています。メーリングリストでコメントは少ないですが、オプションとして追加する分には良いのではないかといった反応が見受けられています。

 

ARIN-2021-8: Deprecation of the ‘Autonomous System Originations’ Field(AS Origin項目の廃止)

ARINでは割り振り/割り当て情報の項目に、Autonomous System Originationsという項目があります。これは、今日のRPKIシステムが作成される以前に作られた項目です。しかし、このデータを利用するためには、ARINとBulk Whoisの利用契約を結び、1日1回作成される数ギガバイトのXMLファイルから情報を抽出する必要があり、利便性は低いものとなってしまっています。今日では利用機会もほとんど無いことから、ポリシー文書から該当する項目(NRPM 3.5項)を丸ごと削除しようという提案です。

メーリングリストではいずれにせよこのデータには問題があるため、どこかのタイミングで廃止する必要があるというのが、概ねの見解のようです。

 

ARIN-2022-1: MDN Clarification for Qualification(複数のネットワークを保有する組織の条件明確化)

現在のポリシー文書では、移転/移管においてIPv4アドレスを受ける条件の一つとして、現在割り振りを受けているIPv4アドレスの80%以上を使用していることを証明することができた場合、/16までの移転を受けることができるとしています。しかし現在の文書では、複数のネットワークを保有する組織に対応した記載になっておらず、この「80%」というのはまとめてなのか、各ネットワークで計算なのか、不明瞭になっています。これを明確にし、「各ネットワークで80%以上」であり、ネットワークを分けて判断することが妥当であることを証明することを求める旨を追記しようというものです。

メーリングリストでは、現状ほとんどコメントがついていません。

 

ARIN-2022-2: Remove Barrier to BGP Uptake in ASN Policy(AS番号ポリシーにおけるBGP実装の障壁を排除)

AS番号分配ポリシーは、2バイトASしかなかった時代に作成されました。その後AS番号の枯渇予想に対応するべく4バイトASが登場したことにより、現在は在庫に余裕がある状況となっています。よって現在の2バイトASのみを前提とした分配条件を見直し、不要なプロセスは取り除くべきであると提案者は主張しています。また、現在は内部においてプライベートASの使用が推奨される文言がポリシー上にありません。本提案ではプライベートASの利用を推奨する文言を明記するとともに、新規AS番号取得者に対して細かな条件なく割り当てが行われるようにし、BGPの立ち上げ・運用に集中できるよう簡略化を図ろうという提案でした。

メーリングリストでは賛成の意見が何件か見られます。ただし、2個目以上のASを取得する際の手数料について改訂が必要なのではないかなど、料金面での見直しに関して一部注目を集めているようです。

 

ARIN-2022-3: Remove Officer Attestation Requirement for 8.5.5(8.5.5項役員誓約書提出要件の削除)

現在のIPアドレス・AS番号の移転プロセスでは、移転対象組織役員の移転を認める誓約書の提出が必要となっています。このプロセスは移転進行を遅らせるものであるため、関連する文言を削除しようという提案です。

組織役員の署名で誓約書を作成するのは非常にハードルが高く、手続きが簡略化されるため喜ばしいという反応がある一方で、このプロセスを無くすことはリスクを増大化させる懸念が表明されていました。意見が入り乱れている提案ですので注意深く追いかけたいと思います。

 

ARIN-2022-5: Clean-up of NRPM Section 2.11(NRPM2.11項の簡潔化)

2.11項、用語定義における「コミュニティーネットワーク」の定義文書の記述を見直す提案です。内容的な変更はほとんどないように見受けられます。

 

ARIN-2022-8: Streamlining Section 11 Policy Language(セクション11文言の効率化)

セクション11では実験用アドレスの割り当てに関して定義されています。現在の文書では割り当てに影響しない文言が数多く含まれている状態になっているとし、不要な文言を削除し簡潔で効果的な文書にしようというのが本提案です。

メーリングリストでは現状コメントは出ていないようです。

 

ARIN-2022-9: Leasing Not Intended(リース許容しないことを明示化)

インターネット番号資源は”財産”として”所有”されるものではなく、上位レジストリからの”委任”を受けて対象アドレスを”利用”することができるものです。この概念はポリシーにおいてIPv6アドレスの項(6.4.1. )に記載がありますが、IPv4アドレス・AS番号の項には記載がありません。本提案ではこの6.4.1項をポリシー文書の先頭に持ってきてIPv4アドレス・AS番号にも係る文言であることを明確化し、加えて割り当ては顧客へ提供される接続サービスに利用する(いわゆるリースには利用できない)ことを明記しようという提案です。

アジア太平洋地域を管轄するAPNICでも先日開催されたAPNIC 54カンファレンスでリースの禁止を明文化する議論が行われましたが、こちらはコンセンサスには至りませんでした。APNICにおける今後の議論にも影響を与えうるトピックスだと思いますので、注目して動向を追いたいと思います。

現段階でメーリングリストではリースの定義とは何なのか、ポリシーに書かれていない行為はすべて禁止されているのか、他のRIRではリースが禁止と解釈できるようになっているとしているがRIPEではリースはできている(真偽は不明)、親会社から子会社などへネットワーク構築に伴いアドレスを貸し出す行為もリースなのか、といったように混沌としています。提案文書内でリースの定義がないことから、定義を追記して再提案すべきとの声もあります。現行のままであれば、反対という声が多いのが現状となっています。

 

ARIN-2022-11: Clean-up of NRPM – Introduction of Sections 2.17 and 2.18(NRPMの明確化-2.17,2.18項の導入)

セクション10では「IANA」「インターネット番号資源」というワードが用いられていますが、その定義が存在しませんでした。本提案では新たに2.17、2.18項としてそれぞれの用語を定義する文書をつけようという提案です。

 

ARIN-2022-12: Direct Assignment Language Update(直接割当の文言アップデート)

ARINではARIN-prop-300の実装に伴い、PAアドレスとPIアドレスの料金計算は同一テーブルで行われるようになりました。これに従い、これまで「割り振り(Direct allocation)」「ARINからの割り当て(Direct Assignment)」と区別してきた記載を「ARINが委任したIPv4アドレス(ARIN-issued IPv4 addresses)」と書き換えようというのが本提案になります。

メーリングリストでは、ポリシー文書以外の文書との整合性に気を付けるべきであるとのコメントが出ています。

 

ARIN-2022-13: Clean-up of NRPM Section 2.10(NRPM2.10項の明確化)

2.10項「エンドサイト」の定義をより明確にするため、以下の文言を既存の文言に追記しようとしています。

“エンドポイントとは、IPv6アドレス空間を必要とするネットワークにおいて、分割不可能な最小の物理的または仮想的な点のことです。”

メーリングリストでは明確化になっていないのではないか、抽象的でわかりにくいとのコメントがありました。

 


以上が今回のポリシー提案になります。関心のあるポリシーはありましたでしょうか。

ARINミーティングは日本では深夜帯での開催となりますので、リアルタイムでの参加は難しいですが、資料や議事録の公開がありますので会議後に確認するだけでも意義があるかと思います。

ARINなど、他のRIRでの提案がその後APNICでも提案されることもあり、JPNICは各RIRの動向に注目しています。特に今回のARIN-2022-9などはAPNICでの議論に近い提案ですので、注目していただければと思います。また、ブログなどを通して皆様にも情報共有していきますので、ぜひご覧ください。

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