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APIGA2023参加レポート

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政策主幹の前村です。APIGAはAsia Pacific Internet Governance Academyの略で、「アピガ」と発音します。ICANNと、韓国インターネット振興院(KISA; Korea Internet and Security Agency)が共催し、韓国で開催される若年層向けのインターネットガバナンスに関する能力開発プログラムです。感染症禍では中止を余儀なくされつつ、昨年2022年は、オンラインのフォーマットを敢行したのですが、今年はオンサイト開催が復活。2023年7月24日(月)から7月28日(金)まで、ソウル市内のホテルで開催されました。筆者はいくつかのセッションの講師として招待され、水曜日までの日程に参加しましたので、その内容をご紹介したいと思います。詳細に関してはAPIGA2023のカンファレンスページをご覧ください。

集まる人々

APIGAはICANNとKISAの共催ですが、協力団体として、APNIC、DotAsia OrganizationAPTLDTWNIC、JPRS、auDA、ISOCなどが名を連ね、各団体の担当者やコミュニティメンバー(私もこの中に含まれます)が、講師を分担します。いわば、それぞれの現場の最前線でプロセスを回している担当者が直接指導するということになります。これに加えて、APIGAの卒業生(Almuni)がメンターとして受講するフェローを支援するとともに、セッションを担当することもあります。

このプログラムを受講するのは、応募して選考されたフェローたちです。KISAが韓国から半数、ICANNが韓国以外を半数選考し、今回は総計40人くらいが参加しました。最初に全員が自己紹介をしましたが、サイバーセキュリティなど技術系だけでなく、政策系の学生、同様の若い社会人や、協力団体の若手の参加もありました。毎年日本からも参加者がいらっしゃり、今年はJPRSの若手社員の方がご参加なさっていました。

プログラム

インターネットガバナンスという言葉でカバーする範囲は実に様々さまざまですが、APIGAにおいては、インターネット基盤のガバナンスにきちんと軸足を置きながら、インターネット上のガバナンスに関しても、座学とグループワークを通じて理解を深めます。5日間のプログラムは生易しくなく、APNIC、ICANN、IGFに関しては、模擬会議(Mock Conference)を行います。

APNICの模擬会議では、クイズで肩慣らし後、Policy SIGの議論とコンセンサスコールの模擬を行いました。「個人に対する割り当て情報は、希望に応じて非表示とするべきだ」という提案が提出され、私がSIGチェア役を務めて質疑応答を行いました。10分ほどの議論の後にコンセンサスコールを行い、Policy SIGの流儀に倣ってコンセンサスをコールしました。APNIC会議に出たことがない参加者にも取り組みやすい模擬プロポーザルで、賛否ともに意見が提出され、良い議論だったと思います。

ICANNとIGFに関しては、ブリーフィングの後いくつかのグループに分かれて、3日間に渡ったグループワークを行います。ICANNでは、少し単純化してコミュニティをGNSOの契約者会議、GAC、At-Largeの3つに分けてそれぞれの立場から、現在進行中のgTLD次期ラウンド検討テーマの一つでもある、申請者支援プログラム(Applicant Support Program; ASP) に関する議論を行いました。それぞれのグループのなかでも、GACであれば各国代表、GNSOは各レジストリ・レジストラなど、ポジションの違いも意識しながらの議論です。写真はIGFに関するグループワークで、こちらは「セッション提案を書き上げる」ことが課題です。各グループ、メンバーの問題意識をポストイットでボードに張って、テーマの絞り込みを行っていきました。

このような作業を行うために、参加者には予習教材がたんまり提示されるのですが、やはりICANNの組織構造やgTLD政策のコンテキストや事実関係はなかなかに難しそうでした。残念ながらこれら2つの模擬会議本番までは拝見できなかったのですが、静かな始まりから徐々に温まり、議論が活発になり、そしてリーダーが自然と決まっていくのは、いつ見てもいい風景だと思います。

秀逸なカードゲームIPGO/DNSGO

順番が前後しますが、1日目に行ったゲームを紹介します。カードゲームを通じてIPネットワークの構築とDNSの動きを理解する、IPGOとDNSGOです。APNICとDotAsiaが開発したものです。IPGOでは、全世界を256個の端末、5つの島国、8つのISPで模擬し、それぞれのISPが接続するホストの数だけAPNICからIPアドレス分配を受け割り当てし、リボンの通信ケーブルで相互接続を行い、エンドトゥエンド通信テストを行う、というと、楽しそうな様子が分かるでしょうか。そして、これらの中にはリゾルバやルートや各層のネームサーバーがあり、ホストネームの問い合わせを行います。DNSGOはなんとDNSSECにも対応しており、ネームサーバーは問い合わせに対する回答内容を書き込んだ紙に手で署名をして、それが予め手元にあった署名と一致するか検証する、という仕組みなっています。そして実際にキャッシュポイズニングを模擬して、それを食い止める、というものです。IPGOは現在スマホアプリを開発中とのことで、こちらも楽しみです。

おわりに

講師や参加者とはランチやディナーも共にします。ホテルは明洞地区でレストランには事欠かず、毎回違うレストランに行っては、いろいろな韓国料理をいただきました。金曜日午前の修了式の後には、市内観光も付いていたりして、APIGAで築いた交友は、SNSなどに場所を変えて長く続くようです。

運営団体の前線で働く職員が指導する中、RIR、ICANN、IGFのプロセスや議論を、実戦さながらの演習を通じて学ぶというのがAPIGAの醍醐味と言えます。講師として参加しても、同僚の説明のしかたや捉え方が参考や勉強になることが多いです。

今年は10月にIGF2023が京都で開催されますが、今後も若年層への働きかけを活発化して、APIGAに参加したい、という若い方が増えていくと良いと思います。

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