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ICP-2 新RIR設立要件の改定作業:「原則案」に対する意見募集が始まりました。(和訳付き)

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はじめに

新たなRIRの設立要件を規定したICP-2(Internet Coordination Policy 2)は、AFRINICの機能不全を受けて改定に関する検討が進んでいて、JPNICでも適宜情報提供を行っています。

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先日2024年10月8日にこの改定作業の大きな節目として「ICP-2第2版原則案」(Proposed ICP-2 Version 2 Principles) が公開され、意見募集が始まりました。

The NRO Invites Internet Community to Participate in ICP-2 Questionnaire

これはtypeformというプラットフォームを通じて、原則案に含まれる各原則に対する同意の度合いと自由記述によるコメントを提出できるもので、締め切りは2024年11月19日となっています。

またICANNでも同様の意見募集を、標準のパブリックコメントプロセスの一つとして開始しました。

本稿では皆さんからの意見提出をお誘いする意味も含めて、この原則案の和訳をお示しして、現時点でのJPNICの見解を示すものです。

 

ICP-2第2版原則案(和訳(原則群部分のみ)

ガバナンス

権限: 候補RIRの認定、またはRIR認定取り消しは、賛成多数で可決の上でNRO ECが提案しなければならない。ICANNはICP-2に従い、提案承認を決定する最終的な権限を持つものとするが、ICANNはまず各RIRと協議し、その意見を十分に考慮するものとする。

改定: ICP-2は、ICANNと全RIRの合意により改定することができる。

修正: ICP-2の改定がRIRの既存の方針、慣行、定款などと矛盾する場合、RIRがICP-2に準拠していないとみなされる前に、RIRが矛盾する方針、慣行、定款などをICP-2に適合させるための合理的かつ具体的な猶予期間を規定するものとする。

RIRのエコシステム

適用範囲: 全RIRは共同して、地球上のすべての地域が継続的にRIRのサービスを受けられるよう保証するものとする。

サービス地域: ひとつのRIRが責任を負う地域は、多国にわたる広い地理的地域をカバーするものとし、他のRIRの地域と重複しないものとする。

RIRのライフサイクル

認定: RIR候補は、RIRとして認定されるために、ICP-2に規定されたRIRのすべての要件を満たすか、満たすことができることを証明しなければならない。

運営: 認定されたRIRは、監査可能な形で、ICP-2に規定されたすべての要件を継続的に満たさなければならない。

認定取り消し: ICP-2に規定されたすべての要件を継続的に満たさないRIRは、RIRとしての認定を取り消される場合がある。

認定

コミュニティの支持: RIR候補がサービスを提供しようとしている地域の資源保有者は、その候補をその地域にサービスを提供するRIRとして認定することを広く支持しなければならない。

コミュニティのコミットメント: RIR候補は、その地域のコミュニティがRIRを財政的に、またRIRのガバナンスに積極的に参加することで、RIRを支援する意思があることを示さなければならない。

運営

独立性: RIRは、財政的に安定し、独立していなければならない。

非営利: RIRは非営利ベースで運営されなければならない。

コーポレートガバナンス: RIRは、その法管轄区域におけるベストプラクティスに合致したコーポレートガバナンスの手続きに従わなければならない。

会員による統制: RIRの理事会の過半数のメンバーは、RIRの会員によって選出され、理事会はRIRを実効的に統制しなければならない。

コミュニティ主導: RIRは、コミュニティ主導の方針策定プロセスを維持しなければならず、そのプロセスは公開され、透明性があり、中立的であり、公に文書化されていなければならない。

中立性: RIRは、中立的かつ一貫した方法で運営され、方針を適用しなければならない。

透明性: RIRは、そのガバナンス、事業活動、財務に関する包括的な記録を維持し、公表しなければならない。

監査: RIRは、外部の独立監査人による定期的な監査に参加し、ICP-2に継続的に準拠していることを確認しなければならない。

サービス: RIRは、アドレス分配、登録、ディレクトリサービス、および関連する技術サービスを、RIR間の互換性を確保するための標準的なプロトコルおよび仕様を用いて、安定した、信頼性のある、安全で、正確で、説明可能な形で提供しなければならない。

継続性: RIRは、継続性手順と冗長性を維持し、必要な場合に他のRIRがサービスを実行できるような記録共有に参加しなければならない。

乗っ取り防止: RIRは、乗っ取られることを防ぐために、ガバナンス・ルールと管理体制を維持しなければならない。

エコシステムの安定性: 各RIRは、グローバルなインターネット番号資源レジストリシステムの継続的な運用と安定性を確保するために協力しなければならず、そのような安定性を脅かすような方法で運用したり、運用しなかったりしてはならない。

認定取り消し

是正措置: ICANNおよび他のすべてのRIRは、RIRの認定を取り消す前に、ICP-2不遵守を是正するよう、要請があれば、そのRIRを支援するためのあらゆる合理的な支援を提供しなければならない。

移行過程: 認定を取り消されたRIRは、ICANNおよび他のRIRと協力し、認定取り消し決定において指定された後継団体または暫定団体への円滑な業務移管を確保しなければならない。

 

現時点でのJPNICの見解

NRO NCにおけるこれまでの議論を踏まえると、かなりシンプルな原則案という印象でしたが、起草にあたった担当者に聞いたところによると、公開までの間に原則と呼ぶにはあまりに長く冗長になり過ぎたものを、シンプルなものに作り直したとのことでした。

現在のICP-2の体裁も、概要部、導入部の後に原則が10項目連なるという体裁になっています。これを突き合せる形で比較すると、改定提案にあたり書き加えられる要素としては、以下が挙げられます。

  • ガバナンス・セクションにおいて、認定提案者(NRO ECを提案者としている)、文書改定要領を明確化している
  • RIRライフサイクル・セクションにおいて、認定・運営・認定取り消し の三つのライフサイクルを定義し、認定取り消しを盛り込んでいる
  • 運営・セクションにおいては、運営上の要件が大幅に拡充され、法人としてのガバナンス機構の整備、会員による統制、監査、継続性、乗っ取り防止、エコシステム安定性などの要件が盛り込まれている

また、新たに盛り込まれた要素である認定取り消しに関しては、運営要件を満たさなくなった場合にICANNと他のRIRsは当該RIRに対して可能な限りの是正措置を講じること、認定取り消しとなったRIRは、継承団体に対して円滑な業務移管を確保することなどが盛り込まれています。

一通り確認した現時点では、原則を示すものとしてうまくまとめられているという印象を持ちます。意見募集期間中、加えて盛り込むべき項目がないか引き続き検討したいと思います。また、原則の後にはフルドキュメントの検討が始まり、2025年6月に改訂文書最終案を確定する、というのが現時点でのスケジュールです。引き続き注視してまいります。

皆さまにおかれても、もしお気づきの点があれば、是非意見提出を行ってみてください。ICP-2改定作業に関しては、ICANN ASO Webに情報集積ページが設けられていますが、JPNICでは情報提供を続けてまいりますし、ご不明点のお問い合わせに応えてまいります。

 

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