News & Views コラム:既視感のある情景
pr_team コラムメールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでもご紹介しています。2024年3月の終わりに、IPv4アドレス在庫枯渇対応を含めたIPv6の社会実装のために2001年から活動してきたIPv6普及・高度化推進協議会(v6pc)が、活動終了を迎えました。そこで2024年4月には、そのv6pcに関連する活動で大変貢献なさりv6pcから表彰をお受けになった、住友電気工業株式会社の宮田宏さんのコラムを掲載しました。現在は、必然の巡り合わせのように出会った5G移動体通信のミリ波利用を推進するために、精力的に活動なさっています。
2024年3月、IPv6普及高度化推進協議会(v6pc)が最後の総会を迎えました。20年以上の活動を経て、IPv6が十分に普及し、役目を終えたというわけです。
v6pcと言いえば、私にとっては江﨑先生のもとでサーティフィケーションWGの副座長を10年近くやらせていただいた思い出の場です。そのサーティフィケーションWGは、グローバルなIPv6の認定活動であるIPv6 Ready Logoの活動を、日本として支える母体となってくれた団体でもあります。思えば、IPv6 Ready Logoの第1回会合は2003年にスペイン・マドリードのMarriott Hotelで開催されたIPv6 Summitの横で行われました。今でもその時の様子を鮮明に思い出せます。懐かしい思いを胸に、v6pcの最後の総会に参加してきました。
既存技術が使われている中で、ある技術が世代交代をしていくのはとても大変なことです。特にIPv6はIPv4と互換性がありません。加えて、インターネットと言えば自律分散システムの代表格でもあるわけですから、”いっせいのせ”で置き換えられるものでもありません。さらに言えば、既存技術には延命技術がつきもので、新技術よりは、より変化の少ない延命技術が好まれて使われるという背景もあります。結果、20年以上の時間がかかったということになります。
さて、今私はモバイル系のビジネスに関わっています。モバイル系のトラフィックも年々増加しており、通信帯域を補うため、5GではSub6とミリ波という二つの周波数帯が追加され、それぞれ100MHz、400MHzの周波数幅が割り当てられました。400MHzという広大な帯域幅を割り当てられたこのミリ波こそが、5Gの特徴である低遅延や広帯域を提供してくれるものです。私は間違いなく必要になると信じて、このミリ波に関わる仕事をしています。しかしながら、使い勝手で言えばこの二つはまったく違います。LTEの時の知識が多く応用可能なSub6と、まったく違う性質のミリ波。オペレータがSub6を優先するのは至極当然に思います。事実、残念なことにミリ波の普及はSub6に対してとても遅れています。
この情景、まさに20年前に見たものと重なって見えて仕方ありません。IPv4とIPv6の関係が、Sub6とミリ波の関係に重なります。私がミリ波推進のために初めて参加した国際会議は2022年、スペイン・マドリードのMarriott Hotel。まさに19年前に訪れた所とまったく同じホテルでした。因縁を感じずにはいられません。これまでの学習を活かせるのか、試されている気がしてなりません。
■筆者略歴
宮田 宏(みやた ひろし)
元IPv6普及高度化推進協議会 サーティフィケーションWG副座長、元IPv6 Ready Logo Program技術責任者。現在、住友電気工業株式会社でO-RAN Allianceに関わる。