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News & Views コラム:人材育成とインターネットとラクダ

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メールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでもご紹介しています。2024年11月は、同月に開催したInternet Week 2024のためにプログラム委員としてプログラム作りなどにご協力いただいた、WIDE Project/慶應義塾大学のコリー・ルークさんのコラムでした。インターネットが発展するほど、コミュニティの資産を共有したり引き継いだりする場や意志が重要度を増すことを痛感します。

 


私のインターネットコミュニティ(特にインターネットガバナンス)との関わりは、2018年に韓国で開催されたAsia-Pacific Internet Governance Academy (APIGA)で始まりました。ここ数年の主な研究・勉強はネットワークセキュリティに関するものですが、インターネットの歴史的背景(インターネットを形成した時の「なぜ」と「どうやって」)については、大学に入学してから絶えず私にとって非常に興味深いものであり続けています。APIGAは初めての大きな参加経験となり、その後、ICANNの大学生向けのNextGenプログラム、ISOCのIGF Youth Ambassadorプログラムなどにも参加しました。

ICANN NextGen

ISOC Youth Ambassador Program

ここ数年、日本の高齢化問題がニュース等で取り上げられてきていますが、インターネットコミュニティはどうなっているか、と個人的に考えてみる回数が最近増えています。インターネット自体は誕生して50年以上の歴史があり、人間の平均寿命からすればまだ短いものとなっています。ですが、時が経つにつれ、特にセキュリティに関わる初期の設計上の取り決めが現在のインターネットにまだ影響を与えていると言われています。例えばRPKI、DNSSEC、DMARCのような追加策の仕組みが必要とされ、一般的に推奨されるようになってきました。

DNSを例に挙げると、現代のDNSで使用されるプロトコルや操作の複雑さの観点から、DNSは「ラクダ」と呼ばれることについて、IETFに参加したことのある人はご存知かもしれません。本コラム執筆時点において、DNS関連のRFCは少なくとも297件あり、その多くは時間が経つとともに「historic」「obsoleted」やその他の理由で更新されています。現在もDNSがインターネットに不可欠なプロトコルとなり、進化し続けていることに驚くところですが、この分野の初心者にとって、これらをすべて理解することが不可欠でしょうか?もし答えが「はい」だとすれば、初めてDNSを触れて勉強しようとする学生は悩むことが多いでしょう。当初の設計や議論のエッセンスはどういった形でコミュニティの資産として引き継がれると望ましいでしょうか?

DNS Camelについて

DNS CamelのRFC一覧

JPRSのまとめ

そういった中、インターネットが日常生活のために不可欠とみなされ、重要インフラとして取り扱われることになってきました。サイバーセキュリティに対する意識もますます社会に浸透し、secure by designと呼ばれるような全般的な運用・設計と関連する見直しも現れました。こういった見直しが行われる中で、初めてインターネットを触る若手の方は運用、セキュリティ、その上のさらに自分の目的に直接関連するアプリやweb開発なども考える必要あり、混乱することが多いでしょう。

今年もInternet Weekが開催されます。2024年11月19日からオンラインWeekが、11月25日からは浅草橋のヒューリックホール&カンファレンスでカンファレンスWeekが開催される予定です。心が若いインターネット老人にも若手の大学生にも、さまざまなレベルに合わせたプログラムが用意されています。セキュリティに限らず、コミュニティの資産を共有・引き継ぐ場としていただけると思うので、多くの方の参加を心よりお待ちしております。

 


■筆者略歴

Korry Luke (コリー ルーク)

米国ハワイ州ホノルル市生まれ。2015年に留学生として来日し、現在は慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の博士課程に在学中。WIDEプロジェクトの運営委員、Internet Week 2024プログラム委員を務める。平日は大体アロハシャツを着る人。

 

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