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JPNIC総会座談会「ネットワークを支える仲間を増やしたい!地域の力でつなぐ未来」レポート

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■ はじめに

2025年3月17日(月)に開催したJPNIC第76回総会の後、各地域NOGの代表者にお集まりいただき「ネットワークを支える仲間を増やしたい!地域の力でつなぐ未来」というタイトルのもと、座談会を開催いたしました。本稿では、この座談会について紹介したいと思います。

■ 地域NOGとは

まず、「地域NOG」について簡単に説明します。日本のインターネット技術者が集い、技術的事項・オペレーションに関して議論、検討、紹介するコミュニティとして代表的なものに「JANOG (JApan Network Operators’ Group)」があります。近年のJANOGオフラインのミーティングでは、数千人が集まる大規模なコミュニティとなってきています。これに対して、各地域において「近くの人との連携を取りたい」「地域での活動を盛り上げたい」などといったきっかけから、ここ十数年の間に、それぞれの地域で有志の声掛けから始まったのが地域NOGです。それぞれの地域NOGは、大きな活動趣旨としてはおおむね同じ方向を向いていますが、運営方法や考え方などはそれぞれ特徴があります。今回の座談会では、それぞれの今後の活動がより良いものになるよう、現状の課題などを共有し、登壇者だけでなく、会場に参加いただいた方も交えて意見交換や議論を行いました。

■ 登壇者と議論のキーワード

今回の座談会では、各地域NOGの代表者として以下の皆様にご登壇いただきました。

TDNOG(北海道・東北) 鵜野 直樹 氏 (株式会社帯広シティーケーブル)
ENOG(新潟県) 金子 康行 氏 (株式会社グローバルネットコア)
NaniwaNOG(関西) 奥野 悠 氏 (クラスメソッド株式会社)
3SNOG(中国・四国) 西田 貴之 氏 (株式会社エネコム)
QUNOG(九州・沖縄) 芝村 正志 氏 (株式会社シナプス)
ChuNOG(中部) 水野 稔晴 (JPNIC)
TDNOG 鵜野 直樹 氏
TDNOG 鵜野 直樹 氏
ENOG 金子 康行 氏
ENOG 金子 康行 氏
NaniwaNOG 奥野 悠 氏
NaniwaNOG 奥野 悠 氏
3SNOG 西田 貴之 氏
3SNOG 西田 貴之 氏
QNOG 芝村 正志 氏
QNOG 芝村 正志 氏
ChuNOG 水野 稔晴
ChuNOG 水野 稔晴

最初に皆様から、各地域NOGのご紹介と、めざすところや課題と感じていることを共有いただきました。この中で上がったキーワードは、以下の通りです。

  • エリア内参加者
  • 参加者層の幅
  • 地域NOGの役割
  • 学生支援、人材育成
  • 活動の内容
  • 地域NOGの役割、どこまでやるか
  • 他地域NOGとの分散、連携
  • 継続するにはどうするか
  • 教育機関との連携
  • 他分野との連携
  • 地域との連携・貢献

これらのキーワードのうち、いくつかを掘り下げる形で議論を行いました。

■ 地域NOGの役割や適切と感じるコミュニティの規模について

一つ目に「地域NOGの役割」を取り上げ、皆さんがどのような目的を持って各NOGを立ち上げたかをお聞きしてみたところ、「地域の技術者をつなげたいというところから徐々に業界に興味を持ってもらって業界を盛り上げたい」「学生とのパイプを作りたい、学生の受け皿となりたい」「地元のコミュニティであれば参加しやすい」というコメントがありました。「地方ではワンオペに近い事業者もあって、JANOGへは行きづらく、地元のコミュニティの存在はありがたい」といった声もあるようです。

また「コミュニティの規模」の話題にも触れました。それぞれNOGの参加者数としては60~200人という範囲でしたが、参加者同士のコミュニケーションを考えると、おおむね「これくらいがよい」から「もう少し減らしてもよい」といった感想が述べられました。JANOGは大変有益なコミュニティではありますが、身近な人々と顔が見える範囲で関係性を築くには、規模の大きさが壁になることもあるようです。

■ 若い世代の参加を促すための取り組み

続いて、「学生支援・人材育成」の流れから「学生の参加を促すための工夫など」について議論が交わされました。学生の経済的な支援のための協賛を募るといった話のほか、学生がインフラに触れる機会が無く、インフラを知らない・興味を持つ機会が無いのではという課題が挙げられました。確かに昨今の大学などでは、レイヤが高い技術(プログラミングやセキュリティ関連など)の人気が高いように見受けられます。一方で、自宅でAS番号を取って運用するような人もいるという事例が共有され、このような方々との連携も検討できると思われます。

インフラに触れる機会を増やしたいという想いから、QUNOGやNaniwaNOGでは、ミーティング時のネットワーク構築を行うNOC (Network Operation Center)の活動を行っているといった事例の紹介がありました。地域NOGイベントでのネットワーク構築運用の規模感が、学生の経験としてちょうどよく、参加しやすいと考えられるとのことでした。

■ 参加者の皆様からのコメント

学生や若年層にインフラへの興味を持ってもらうにはどんなことができるのか、会場にもコメントを求めてみました。「ハッカソン(技術者等が集まって集中的に作業・開発するイベント)のようなイベントを実施し、その結果に感動した」「学校でもネットワークに触れる機会は少ない → NOGとの連携、作って壊す経験ができるとよいのではないか」「学校で扱う題材のレイヤが上がってきていて、インフラに興味を持ってもらう機会が減っている」などのコメントがありました。

学生側がどう感じているのか、学校と連携するにはどうしたらよいかという視点の話に移ると、会場にいらっしゃった大学の先生方からさまざまなコメントいただきました。「開催時期を考えてほしい(学生の休みなどに合わせてほしい)」「興味を持ってもらうのに時間がかかるため、早い段階(1年生や2年生)から関わるのが重要」「学生はデジタルサーティフィケイトを欲している。(就職活動のため)学生時代の活動をPRすることを考えている」「興味を持っている人は、いるところにはいる。支える対象があると頑張れるという人もいる」「学生が最初から最後まで何かを作り上げる・完成させる機会があるとよいのではないか → 俯瞰的に見るといった経験が今後の人生に活きる」これらのコメントは、登壇者一同、今後の活動に活かしていけるアドバイスとなりました。

会場の参加者からは、イギリスのUKNOGが1人で運営されていたことから解散してしまったという、NOGの活動としては残念な事例の紹介もありました。さまざまな想いを持って活動している各地域NOGが、今後継続していくためにはどうすればよいかという観点では、「運営している人たちがまず楽しむ」「周りもうまく巻き込みながら引き継いでいくのが必要」といったコメントがありました。

■ おわりに

今回の座談会では、地域NOGの役割、学生支援、地域NOGの継続といったトピックで、登壇者と会場の皆様との間で、熱量ある意見交換が行われました。90分という時間は思いの外あっという間で、話し足りないという雰囲気の中、終了となりました。それぞれのNOGには、既に成果を上げているところもあれば、これから活動が期待されるところもあります。今回の議論や会場からのコメントで、ヒントを得られたという声も登壇者からありました。座談会やこの記事から地域NOGに興味を持っていただいた方、何かアイデアなどお持ちの方は、ぜひオフラインのミーティングへ足を運んでみてください。また、2025年7月30日(水)~8月1日(金)に島根県松江市で開催されるJANOG56にて、地域NOG BoFの開催も予定されています。こちらにもぜひご参加いただき、意見交換をしていただけると幸いです。

JANOG56ミーティング

 

なお、本座談会の模様については、YouTubeのJPNICチャンネルで動画を公開しております。当日話された内容だけではなく、会場の雰囲気なども感じていただけるかと思いますので、こちらも併せてご覧ください。また、よろしければチャンネル登録もぜひお願いいたします!

座談会「ネットワークを支える仲間を増やしたい!地域の力でつなぐ未来」

YouTube JPNICチャンネル

 

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