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IGF 2025国内事前会合報告

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JPNICが積極的に関わっている「国内IGF活動活発化チーム1」が、IGF 2025国内事前会合を以下の通り開催しました。その名の通り、2025年6月23日から27日までノルウェー、リレストロムで開催されるIGFの国内における事前会合という位置づけでした。

  • 日時: 2025年5月26日(月)14:00-18:00
  • 会場:ハイブリッド (JPNIC会議室および遠隔参加)

会合では、以下の三つのセッションが開催されました。

  1. 児童ポルノのブロッキングと生成AIによるCSAM作成の規制に関して
  2. 違法オンラインカジノサイト問題について
  3. WSIS+20やGDCに向けて、IGFの役割や今後について

以下、各セッションの概要を記載します。

1. 児童ポルノのブロッキングと生成AIによるCSAM作成の規制に関して

  • パネリスト
    • 奥村 徹 (弁護士) 
    • 長瀬 貴志 (弁護士)
    • 武田 勝彦 (特定非営利活動法人チャイルド・ファンド・ジャパン)
    • 吉川 誠司 (Web110)
    • 斎藤 恵子 (ECPAT/ストップ子ども買春の会)
    • 金尻 カズナ (NPO法人ぱっぷす)
  • モデレーター:立石 聡明(一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA) / 一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)) 

生成AIによるさまざまな問題点が指摘されている中、古くて新しい問題でもあるCSAM(児童性虐待コンテンツ)について、 国内外で児童虐待問題に取り組んでいる団体と児童関連犯罪について詳しい弁護士らとともに、 現状と今後について、主に次の内容が議論されました。

CSAM(児童性虐待コンテンツ)犯罪、ディープフェイク、ネットいじめといったデジタル犯罪の現状と対策が主要なテーマとなり、CSAM犯罪対策における制度設計の重要性も強調され、現場の意見を反映させ、実務者にとって使いやすいように構築する必要があること、およびデジタルにおける犯罪は、CSAM犯罪だけでなくネットいじめも深刻な問題であり、法的責任や制度設計において、その多面的な側面を考慮する必要があること、さらにCSAM犯罪対策においては、単なる抑止だけでなく、被害者支援や犯罪者の責任追及も考慮すべき点であり、デジタル技術の進歩が新たな犯罪手法を生み出す可能性があるため、常に最新の情報に基づいた対策検討が求められる、との指摘がされました。また、この問題に関する議論は、専門家だけでなく一般市民にも理解を深めてもらうことが重要である、という意見も出されました。

2. 違法オンラインカジノサイト問題について

  • パネリスト
    • 山下 健一(JAIPA行政法律部会) 
    • 長瀬 貴志 (弁護士)
    • 前村 昌紀(JPNIC)
  • モデレーター:立石 聡明(JAIPA) 

ここ数年で莫大な被害をもたらしているオンラインカジノ。総務省でも検討会が開始されており、 国会での審議もされているこの問題について主に次の論点で議論されました。

インターネットブロッキングに関する技術的および法的課題が主要な論点として取り上げられ、特にオンラインカジノに対するブロッキングの検討や、通信の秘密および表現の自由との兼ね合いが焦点となりました。インターネットアーキテクチャとブロッキングの親和性、ネットワーク事業者の責任と自律分散協調の原則、さらには児童ポルノブロッキングの実態と効果、そしてブロッキングの社会的コストと実装の課題も掘り下げられました。

これらの課題に対し、さまざまな解決策が提案されました。ブロッキングだけでなく複数の省庁が連携した総合的な対策の必要性、端末側でのフィルタリングなど、インターネットアーキテクチャと親和性の高い対策が提唱されました。また、AS番号を持つネットワーク事業者の責任として、違法コンテンツを「自分のネットワークから出さない」原則の徹底と、CDN事業者によるジオロケーションコントロールの活用、さらに運営者への直接的な対策と銀行による決済制限の活用などについても提案されました。

3. WSIS+20やGDCに向けて、IGFの役割や今後について

  • パネリスト:
    • Meni Anastasiadou (国際商業会議所(ICC)情報化社会支援ビジネスアクション(BASIS))
    • Amrita Choudhury (CCAOI [インドの市民団体])
    • 前村 昌紀(JPNIC)
  • モデレーター:加藤 幹之(一般財団法人国際経済連携推進センター(CFIEC)、国内IGF活動活発化チームチェア)

本セッションでは、IGFの在り方の議論に深く参加してきた3名より、それぞれの立場から意見交換が行われました。

IGFの将来については、IGFを一時的なものではなく恒久的な組織として確立し、安定した資金を提供することを提案すべきとの意見でまとまりました。また、IGFは、民間企業、市民団体、技術コミュニティなどさまざまな立場の人々が参加する意義が大きく、国際的な政策議論のモデルになるとの指摘がありました。日本からのIGFへの参加促進方策としては、メーリングリストへの参加やオブザーバーとしての参加から始めることが提案され、また日本の課題をアジア太平洋地域のIGF (APrIGF)で議論し、グローバルIGFにつなげることも提案されました。

最後に

今回は2025年6月のIGFの前に開催するために準備期間が短かったこともあり、簡略版での開催となりましたが、国内での議論がさらに喚起され、IGFへ興味をもつ人が一人でも増えることを願ってやみません。

各セッションの資料や録画は以下にてご覧いただけます。https://www.nic.ad.jp/ja/materials/igf/20250526/


1 旧称「IGF2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」。2025年3月に開催された第60回チーム会合でチーム名変更が提案され、その後メーリングリストにてコンセンサスに至りました。

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