IGF 2025報告
dom_gov_team インターネットガバナンス 他組織のイベントインターネットガバナンスフォーラム(IGF)は、2003年および2005年に開催された世界情報社会サミット(WSIS)で設置が定められ、各国政府、企業、市民社会、技術コミュニティなどが集まって、現在のインターネットにおける課題について包括的に議論を行うことを目的とした、国際連合(United Nations, UN)主催のフォーラムです。IGFは国連主催の会議でありながら、加盟国政府だけでなくインターネットのあらゆるステークホルダー(関係者)に門戸が開かれていることが、大きな特徴と言えます。IGFではインターネットの基盤、基盤上の公共政策、および議論を行う仕組み自体も議論の対象となっています。IGFについて詳しくお知りになりたい方はインターネット10分講座をご覧ください。
IGFは2006年にギリシャ・アテネで第1回会合が開かれて以来、毎年開催されており、今回の第20回インターネットガバナンスフォーラム(IGF 2025)はノルウェー・リレストロム(Lillestrøm)で2025年6月23日から27日まで開催されました。
これまで、IGFは9月から12月の間に開催されてきましたが、今回は世界情報社会サミット20周年評価(WSIS+20)のためでしょうか、それとも開催地の秋は寒すぎるためでしょうか、6月という早い時期の開催となりました。そのためIGFのプログラム委員会的な位置付けのマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)も、筆者が出席したNRI調整役の会合も1月末には始動しました。前者は通常の公募手続きは取らず、MAGメンバー経験者だけが応募できるという特別ルールでメンバーが集められました。セッション募集の締め切りも3月中旬と非常に早くなっており、関係者は大変だったと思います。
WSIS+20には本会合もプロセスの一部として組み込まれており、関連セッションが多数あったという意味で、およびIGFの今後について議論が深まったという意味で特別なIGF会合だったという見方も可能です。また人工知能(AI)など議論の対象が広がっており、IGFから名称を変更する提案も出ており、その意味でも岐路に立っているのかもしれません。
開催地
リレストロムはオスロから直線距離で約17km(郊外鉄道で8分)、オスロ空港から約26km(同12分)のところにあります。会期中は空港 – リレストロム – オスロ中央駅間、さらにはオスロ市内の地下鉄、バス、路面電車の特定区域内ではIGF参加証が切符代わりに利用できるようになっており、つまりホスト国ノルウェー政府が会議参加者の電車賃を負担してくれた形です。ちなみに今回参加証は完全デジタルで、物理的な参加証は配布されませんでした。リレストロム駅を一歩出てみると郊外の住宅地といった趣で、ホテルやレストランの数は多くないので、筆者を含む多くの参加者はオスロ市街地に宿泊し毎日電車で通っていました。
オスロ中央駅にて。ピンク色のTシャツを着ているのがIGF参加者向け案内係の方々
開催中、毎日のように雨は降りましたが、長くは降り続かず、午後から夕方は晴れている日が多かったように思います。最低気温は摂氏11度程度、最高気温は18-20度程度でした。6月のオスロの平均相対湿度は61%で、東京より乾燥しているように感じました。オスロ・リレストロムとも北緯60度近くに位置するため、夜遅くに宿舎に戻っても東京の感覚では夕方のように明るく感じました。
23時前の街の風景
会場
会場となるNOVA Spektrumはリレストロム駅から歩いて10分弱のところにあります。駅を出たところにも案内係の人がいて、参加者が迷わないよう誘導していました。
ワークショップなどが開催された部屋
特段広い会議場ではなかったと思いますが、メインセッション用の広い部屋が二つあり、その奥のスペースを区切りワークショップなど向けに割り当てられた部屋数はIGF 2024の10から6に減ったものの、各部屋はかなり広くなりました。各部屋が完全に区切られてはいないので発表を聞くために同時通訳用レシーバーを付けないといけないのはIGF 2024と同じですが、音響・映像設備がしっかりしていることと、その運用がスムーズだったため、ロジスティクスに起因する問題は2024年よりはるかに少なかったと思います。
セッション開催風景
参加状況
IGF 2025への参加状況は次の通りとなっています。
- 参加登録者:9,435名以上(国連加盟国の85%より)
- 現地参加者:3,435名(165ヶ国より)
- オンライン参加者:6,000名以上
テーマおよびセッション数
テーマおよびセッションの数は、次の通りとなっています。
全体テーマ:Building digital governance together(デジタルガバナンスを共に構築していこう)
個別テーマ:
- Digital Trust and Resilience(デジタルの信頼と回復力)
- Sustainable and Responsible Innovation(持続可能で責任あるイノベーション)
- Universal Access and Digital Rights(ユニバーサルアクセスとデジタルの権利)
- Digital Cooperation(デジタル協力)
セッション数:262セッション(以下主な内訳)
- Workshops: 52
- Open Forums: 54
- Launch & Award: 9
- Lightning Talks: 35
- Networking Sessions: 10
- Day 0 Events: 34
- Main Session: 9
- High-level Leaders Session: 6 (Global Youth Summitを含む)
- NRI Sessions: 5
ワークショップは、400件の応募があった中から51が選ばれたということです。他の種別も含めると、730以上のセッション提案があったということです。
主なセッション
開会式
まず民俗楽器のソロ演奏と同時に、北欧神話上の大樹、イグドラシル(世界樹)がワールドワイドウェブに変貌するという、古い神話から着想を得た芸術の旅に出発しようという内容のナレーションが入り、次いでノルウェーだけでなくアフリカの音楽の要素も含むと思われるバンドの演奏がありました。
その後、国連事務次長リ・ジュンファ(Li Junhua/李军华)氏より国連事務総長アントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)氏のビデオメッセージが放映される旨紹介されました。グテーレス氏は、IGFが20周年を迎えたことを祝うとともに、未来のための協定(Pact for the Future)およびグローバルデジタルコンパクト(GDC)が「IGFをインターネットガバナンス問題における主要なマルチステークホルダープラットフォームとして認識したこと」などに言及しました。また、国連で「AIに関する独立国際科学パネル」および「AIガバナンスに関するグローバル対話」の設立準備に向けた交渉が進められていること、およびマルチステークホルダー作業部会がデータガバナンスと持続可能な開発に関して原則を策定中であることについても言及がありました。さらに、デジタルリスクが加速する中、我々も対応(具体的には以下の点を加速)しなければならないと述べました。
- 手頃で有意義なインターネットアクセスを拡大し、2030年までに普遍的な接続を実現することで、デジタル格差を埋める
- スキルギャップを埋める
- オンライン上のヘイトスピーチに対抗
- 情報の完全性、寛容、尊重を促進
- 少数の者によるデジタルパワーと意思決定の集中に対処
- デジタル空間における多様性、透明性、信頼の向上を促進
グテーレス国連事務総長からのビデオメッセージ
次に、ノルウェーのデジタル化・公共ガバナンス大臣であるカリアンヌ・トゥン(Karianne Tung)氏より、第20回IGFの開催地としてノルウェーが選ばれたことを誇りに思うと述べ、ノルウェーは、オンラインとオフラインの両方で民主的価値、透明性、人権に深くコミットしており、これらの価値がデジタルガバナンスへのアプローチの中心にあることを強調し、IGFのユニークなマルチステークホルダー対話モデルがかつてないほど重要になっていると述べました。かつては平等化のためのツールと見なされていたインターネットが、現在では世界の多くの緊張を反映していると指摘し、信頼、開放性、デジタル上の自由といった問題は、もはや技術的な問題にとどまらず、社会全体に関わる、深く人間的な問題であるとしました。さらに、デジタル技術が人々を結びつけ、インスピレーションを与え、地球規模の社会課題の解決に貢献する力があることを認識していると述べ、IGFは単なるインフラやイノベーションに関するものではなく、価値観、責任、そしてすべての人に役立つデジタルな未来への共通の野心に関するものであると強調しました。
挨拶するトゥン大臣
ノルウェー首相ヨーナス=ガール・ストーレ(Jonas Gahr Støre)氏からはビデオメッセージで主に次の点について語られました。
- 世界を形作るインターネットが「少数の者」ではなく「すべての人」によって統治されるべきであるという大胆なビジョンに基づいてIGFが設立されたこと
- 断片化、監視、偽情報、誤情報などな分断された状況にあっても、インターネットは強力な「つながりの媒介」であり「社会的アクター」であり続けていることを忘れてはならないこと
- インターネットはもはや未開のフロンティアではなく、経済、民主主義、そしてすべての世代にとって日常生活の「基盤」であること。インターネットを所有物としてではなく、「公共の信頼」、すなわちすべての人に開かれ、自由で、アクセス可能であるべき「共有空間」、グローバルな「公共財」として保護する必要性があること
- 我々の課題は、インターネットのインフラを保護することだけでなく、包摂性と強力なイノベーションというその精神を維持すること
ストーレ首相からのビデオメッセージ
欧州委員会で技術主権、安全保障、民主主義を担当するヘンナ・ヴィルクネン(Henna Virkkunen)執行副委員長は、政治的不確実性の時代において、IGFは包摂的で民主的な秩序の礎であると位置付け、デジタル変革が私たちの生活のあらゆる側面(学習、仕事、統治、つながり方)を再構築している一方で、デジタル・デバイド、断片化、地政学的緊張、急速な技術的変化といった大きな地球規模の課題に直面していると指摘しました。我々はこの機会を捉えて、開かれた、包摂的で、信頼できるグローバルなデジタルガバナンスを形成しなければならないと主張しました。次いで欧州連合(EU)の新しい国際デジタル戦略を紹介した後、この戦略の中心にあるのは、今年のIGFの主要テーマである、デジタル包摂と公平性、デジタル公共財とインフラ、人権、標準と主権、ならびにオンライン上の信頼、安全、レジリエンスの認識であると述べました。
ヴィルクネン氏によるスピーチ
次に、俳優、プロデューサー、そしてオンライン共同メディアプラットフォームの創設者であるジョセフ・ゴードン=レヴィット(Joseph Gordon-Levitt)氏が登壇し、AIのガバナンスの重要性について述べました。自身の出身国である米国では、一部の有力者がAI企業への規制はすべきではないという立場を取っている現状に警鐘を鳴らしました。米議会では、今後10年間、全50州がこの技術を規制する新たな法律を作ることを禁止する法案が可決に近づいていると説明しました。自由市場に基づいてAIを開発し、ビジネス上のインセンティブのみにこの革新的な技術の展開を任せるべき、という考え方は最近の歴史から見ても機能しないと主張しました。AIガバナンスに関する自身の具体的なアイデアとして、「デジタルな自己は自分に属するべきである」という基本原則を提唱しました。自由市場はこの基本的な原則を尊重するはずがなく、実際、業界の多くの大手AI企業はこれに強く反対するロビー活動を行っていると述べました。これに対し、利益追求型の企業が公共の利益に貢献するように導くための「ガードレール」が必要であると述べました。最後に、参加者との対話を楽しみにしていると述べて締めくくりました。
レヴィット氏によるスピーチ
ICANN事務総長兼CEOカーティス・リンドクヴィスト(Kurtis Lindqvist)氏は、今年後半に開催されるWSIS+20レビューは、インターネットが機能するために何が必要かを再確認する機会であると述べました。インターネットの成長、回復力、到達性は、集中化ではなく協力がそのガバナンスの基盤であり続けてきたからこそ可能になったと強調しました。ドメイン名やIPアドレスといった一意の識別子を管理するインフラストラクチャの強さは、より深いもの、つまりグローバルな協調とそれを可能にする機関への共通のコミットメントにかかっており、このコミットメントが、対話のための開かれた空間であり、交渉の場ではないIGFの創設につながったビジョンを形成したと述べました。インターネットの未来は、機能する協力にかかっており、我々の仕事は、その協力を安定して、信頼性を高く、大規模に維持することであると述べて締めくくりました。
リンドクヴィスト氏によるスピーチ
WSIS+20関連セッション
JPNICニュースレターNo.89およびNo.90でお知らせした通り、今年はWSIS+20の年で、さまざまな会議で議論されてきています。IGF 2025においても、関連セッションが計28もありました。25日(Day 2)には、WSIS+20共同進行役が同席して行われた、WSIS+20要素文書(Elements Paper)に関する意見を述べることができるよう、オープンコンサルテーションセッションが開催され、マイク前に質問や意見のある参加者の長い列ができました。
質問/意見のために並んだ参加者
共同進行役からは、レビュープロセスが、市民社会、民間部門、技術コミュニティを含むマルチステークホルダーモデルにしっかりと根ざしていることを強調しました。また、このレビューは単なる文書作成ではなく、デジタル・デバイド(接続性、能力、参加の面で)の解消、人工知能の課題への取り組み、能力開発など、共通の目標を再確認する機会であると述べました。また、デジタル政府のプロセス(グローバル・デジタル・コンパクト(GDC)を含む)を更新する中で、過去の論争を再燃させる意図はないと述べるとともに、要素文書は、これまでの成果と進捗を認め、AI革命のようなデジタル空間における新たな発展を評価する「慎重なアプローチ」を採用していると説明しました。特に、主に次の点について言及し、参加者からの意見を求めました。
- 情報通信技術(ICT)の発展とデジタル格差:デジタル格差、特に世界人口の3分の1がオフラインである現状が依然として存在しており、アクセス、手頃な価格、能力のギャップを埋めるためのより多くの意見が必要
- 環境への影響:データセンターの運用には多くのエネルギーが必要であり、環境フットプリントを削減する方法について議論を歓迎
- 財政メカニズム:デジタルインフラとAIへの公平な資金提供を増やすメカニズムについて
- 人権と倫理的側面:オフラインで享受される人権がオンラインでも保護されるべきであり、特に女性、子供、脆弱なグループに対するデジタル上の危害が依然として存在するため、安全で包括的なデジタルエコシステムを実現するためのアプローチを奨励
- ICTにおける信頼とセキュリティ
- インターネットガバナンス:IGFが主要なマルチステークホルダーフォーラムとして認められ、その強化や開催期限の延長、あるいは恒久的な設置に関する意見を求めた。
- 新興分野:データガバナンス、AIガバナンス、およびAIがもたらすデジタルインクルージョンへの影響に関して
- モニタリングと評価:WSIS+10では目標が設定されなかったが、今回のレビューで目標を設定する必要があるかどうか
参加者からは、主に以下の点について意見が述べられました。
- 人権と言論の自由:要素文書における人権、言論の自由、メディアの独立性に関する記述が不十分であるとし、GDCの明確な表現を反映させるよう求める
- マルチステークホルダーモデルの強化:技術コミュニティや学術界をステークホルダーとして明記し、マルチステークホルダーモデルに基づくインターネットガバナンスの重要性を再確認するよう求める
- IGFの永続化と資金確保:IGFをWSISのアーキテクチャ内での主要なマルチステークホルダーフォーラムとして位置付け、そのマンデートを恒久化し、安定した資金を確保することを求める
- GDCとの統合:GDCの実施をWSISの枠組みに統合し、重複を避けて効率的な資源利用を図るべき
- 若者の参加と認識:10代の若者を含む若者がデジタル世界を形作る上で重要な役割を担っているとし、彼らを明確なステークホルダーグループとして認識し、プロセスから体系的に排除しないよう求める
- 共同セッションと包摂的な協議プロセス:協議プロセスをより開かれた包摂的なものにするために、政府とすべてのステークホルダーが共同で参加するセッションの開催を強く求める
- データフローの自由とインターネットの性質の保護:データの自由な流れとインターネットの性質に合わせたツールの使用を支持し、インターネットの分断につながる措置を避けるべき
- デジタルデバイドとインフラ:デジタル経済における構造的なギャップを解消し、中小極小企業を支援し、デジタル機会を包摂的にするためのモデルについて
- AIの倫理とガバナンス:AIのガバナンスをGDCと連携させ、AIがもたらす利益におけるデジタル包摂を確保することの重要性
NRIs関連セッション
IGF 2025では国・地域・ユースIGF活動(NRIs)によるセッションが合計五つ開催されましたが、そのうちNRIメインセッションである、「2025年以降のマルチステークホルダーによるデジタルガバナンス」についてご紹介します。
本セッションは、インターネット・ガバナンスにおけるマルチステークホルダー・アプローチの現状と未来に焦点を当て、176以上あるNRIsの持続可能性、言語的多様性の包含、若者の有意義な参加、そして名称変更の提案などについて議論されました。
まず、マルチステークホルダーアプローチの再確認が行われ、国連主導のプロセスにおいて、非政府関係者(学術界、民間セクターなど)が有意義かつ継続的に貢献できるよう、プロセスの透明性、理解しやすさ、実行可能性、アクセシビリティを確保することが重要であること、政策決定者はNRIからの草の根レベルの識見を政策に反映させるべきであること、などが述べられました。
次に、NRIsは地域のマルチステークホルダー・コミュニティの強みと、グローバルな政策を形成し、影響を与える能力を実証していること、NRIsは地域レベルでの声を増幅させグローバルレベルに届ける上で極めて重要であること、などが述べられました。
その上で、次の通り具体的な提案がなされました。
- WSIS+20レビューの成果文書はマルチステークホルダー型インターネットガバナンスを明確に支持すべきで、IGFの永続的な継続と資源の強化が必要
- 透明性の確保と強力なフィードバックループの適切な実施
- 政府は単にマルチステークホルダー・フォーラムに参加するだけでなく、市民社会、学術界、技術コミュニティ、民間セクターのインプットが真の影響力を持つよう、積極的に支援・保護すべき
- NRIの成功をグローバルに拡大するためのアプローチ:「スケールアウト」(到達範囲の拡大、新しい地域でのモデルの複製)、「スケールアップ」(政策立案への影響力の増大、地域での声をグローバルに増幅)、「深く拡大(scaling deeply)」(文化変革の促進、マルチステークホルダー主義のような原則の推進)
- ユースの包摂:若者はマルチステークホルダー・ガバナンスの中心に位置付けられるべきで、サマースクールや奨学金プログラムのように、若者の参加を促進する具体的な取り組みが必要
- 参加の障壁の克服:言語、リソース、資金だけでなく、過去の議論の「荷物」が新規参加者にとって障壁となることがある。歴史の背景説明を効果的に行う「ストーリーテリング」を通じて、参加を促進する必要がある
- 小島嶼開発途上国(SIDS)の視点:限られた資源、気候変動への脆弱性、地理的孤立といった課題を克服し、レジリエントな解決策を共同で設計するために、マルチステークホルダー・アプローチが不可欠
- 新技術への適応:デジタル公共政策やAIなどの新技術の進化において、マルチステークホルダー・アプローチは、より包摂的となる必要があり、より効率的で真に深い協議を行う必要がある。プロセスをオープンに保ち、誰を巻き込む必要があるかを明確にし、人間的な要素を組み込む必要がある
- NRIsの持続可能性と資金調達:NRIの将来的な持続可能性を確保するためにトラストファンドを設立することが提案された。国によっては政府機関やドメイン名管理者などが資金提供に協力することで、NRIの持続可能性を確保している。IGFサポート協会(IGF SA)は、発展途上国のNRIへの資金提供を継続しているが、NRIはIGF SAとは別に、より長期的な持続可能性を考慮すべき
- 言語的・文化的多様性の包含:グローバルサウスを含む多様な言語、文化、地域からの参加をグローバルな枠組みに有意義に包含することが課題。同時通訳サービスを提供するために、財源が不可欠であることが強調された。異なる言語間の定義や概念の相違が誤解を生む可能性があるため、正確な通訳と、言語に伴う文化的、社会的、歴史的背景の理解が求められる。コンテンツを現地の言語で利用できるようにすることも重要。
- 若者の有意義な参加:「形式的な参加」ではなく、より「積極的な参加」を促進すべき。若者はデジタル・ガバナンスの未来を形作る能力とリーダーシップを持っているため、財政的な支援だけでなく、能力開発やメンターシップを通じて、彼らの活動を継続的に支援する必要がある
- IGFの名称変更の提案:インターネットだけでなく、より広範なデジタル関連の課題(政策を含む)を議論している現状を反映するため、IGFの名称を「デジタル・ガバナンス・フォーラム」に変更する提案があった
最後に、閉会に当たり、登壇していたNRI関係者からメッセージが述べられました。アジア太平洋地域IGF (APrIGF)のジョイス・チェン氏からは、「NRIはマルチステークホルダー・モデルが実際にどのように実践されているかを実証する特別な役割を果たす。参加者は自身の『居場所を主張』し、議論の場に積極的に加わるべき。」との発言がありました。
最後に
多数のセッションにすべて参加するのは物理的に無理なので、今回はNRIs関連セッションとWSIS+20関連セッションのみに絞って参加しましたが、WSIS+20のプロセスの一つと位置付けられているだけあり、多数の意見が述べられました。特に要素文書への意見は多数で、WSIS+20共同進行役のお二人のみならず関係者すべてにとって手ごたえのある会議だったのではないかと思います。参加できなかった多数のセッションの中には有意義なものも多くあったと思いますが、すべてカバーできるわけもありませんので、ご興味のある方はIGFのウェブサイトでレポート、発言録および録画が上がっていますのでそちらをご覧ください。
また、我々が情報提供を行い皆様が受け取るだけではなく、ノルウェーのストーレ首相が開会式で述べたように、「世界を形作るインターネットが『少数の人』ではなく『すべての人』によって統治されるべきである」というIGF設立のビジョンの通り、読者の皆様から興味を持ってIGFに参加し議論する方々が増えることを望む次第です。そのために次世代育成のお手伝いを国内IGFの場などでできればと思いました。
6月23日(Day 0)にオスロ市庁舎(ノーベル平和賞の授賞会場)で開催されたソーシャルイベント
(JPNICインターネット推進部 山崎 信)