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APIGA2025に参加してきました。

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JPNIC IP事業部の中川です。2025年8月18日(月)~22日(金)の5日間にAPIGA2025が韓国・釜山にて開催されました。今回、私は一参加者として参加してまいりましたので、その様子をご紹介できればと思います。

2023年に前村が講師として参加した際の報告はこちら

APIGA2025のカンファレンスページはこちら

APIGAとは何か

APIGA(Asia Pacific Internet Governance Academy)は、35歳以下のユース世代を対象に、インターネットガバナンスに関する基礎知識を学び、アウトプットのスキルを磨くことを目的とした合宿形式のプログラムです。ICANNと韓国インターネット振興院(KISA: Korea Internet and Security Agency)が主催し、2016年から(コロナ禍の期間を除き)継続して開催されています。

参加者は約40名で、そのうち3分の1ほどがKISA経由で選考された韓国の学生・若手、残りはICANNの選考を通過した人々です。さらに一部の国では、ローカルIGAと呼ばれる国内版プログラムを先に実施し、その優秀者が地域代表としてAPIGAに派遣される仕組みも取り入れられています。

メインとなる参加層は学生ですが、分野はインターネットに限らず、AIや法律を専門とする人も見られました。また若手社会人の参加も多く、ドメイン名レジストリやCERT(Computer Emergency Response Team)、政府機関、権利団体など、実に多様なバックグラウンドを持つ人々が集まっていました。

 

プログラム

インターネットガバナンスという幅広い分野を扱うため、プログラムは非常に内容の濃い構成となっていました。

まず開催前から、さまざまな事前学習が用意されていました。APNIC Academy, ICANN Learn, ISOC Learningを利用した自主学習に加え、1ヶ月前からは週1回のWebinarが開催されます。アジア太平洋地域の時間に合わせて行われるため、日本からの参加では遅い時間になりがちでしたが、それでも重要な学びの場となりました。さらにチームごとの打ち合わせや課題への取り組みもあり、正直大変ではありましたが、こうして事前に知識をインプットできたことで、会期中の理解につながった部分はとても大きかったと感じています。

会期中のプログラムは公式ページで公開されていますが、その内容は実に多岐にわたります。まずは「マルチステークホルダーとは何か」という基本的な問いから始まり、ICANN、IGF、ISOC、APNICといった主要組織の役割や、実際にどのような活動が行われているかを学びました。座学的な要素もありますが、多くはディスカッションやグループワークを通じて進められるため、知識を吸収するだけでなく、自分の考えを整理し表現する機会が多く設けられていたのが印象的です。

実践的な演習も数多く行われました。たとえば「APIGA Youth Statement: WSIS+20」では、実際に発行されるYouth Statementに対して意見を出し合い、グループで議論を重ねた上で全体に共有しました。また「IGF Workshop Proposal Exercise」では、AprIGFで提案を行うことを想定し、プログラムの企画を進めました。「APNIC Policy SIG」では本番さながらに提案文書を提出し、SIGでの議論とコンセンサス確認を体験。そして最終日には、半日をかけた「ICANN Mock Conference(模擬会議)」が行われ、英語力と専門知識が問われる非常にハードな環境の中で、本物さながらの議論に挑むことになりました。

特に印象に残っているのは、IGF Workshop Proposal ExerciseとICANN Mock Conferenceの二つです。IGF Workshop Proposal Exerciseでは、ほぼ毎日のようにチームで集まり、「対象者をもっと明確にした方がよいのではないか」「スピーカーの構成に偏りはないか」など細かい点を調整し続けました。その成果もあって、最終発表では講師から高い評価をいただくことができ、大きな達成感を得られました。

IGF Workshop Proposal Exercise プレゼンの様子
IGF Workshop Proposal Exerciseのチームメンバーたちと

一方、ICANN Mock Conferenceでは、参加者それぞれに役職が割り当てられ、GAC(Governmental Advisory Committee)、GNSO(Generic Names Supporting Organization)、ALAC(At-Large Advisory Committee)の三つのグループに分かれて議論を進めました。同じグループ内でも立場によって意見が異なるため、意見をまとめること自体が難しく、さらに他のグループとの交渉や情報交換も加わって、一筋縄ではいきません。議題は新gTLD拡張に伴うDNS abuse対策の必要性や、gTLDの種類ごとの優先承認といったもので、答えがすぐに出るものではありませんが、異なる視点や利害がぶつかり合う場を肌で感じられたことは大きな学びとなりました。

ALACチームで前日打合せの際に。1日プログラム終わった後でも元気!
当日のチームディスカッションの様子。地べた囲んで作戦会議。
全体議論で発言するのは緊張しました……発言時に名札を立てる文化、初めて知りました

 

このほかにも簡易的にインターネット接続の仕組みを知るカードゲーム「IPGO&DNSGO」やインターネットの動きを知るミニゲーム「APIGA CITY」等レクリエーションも行われました。

IPGOの様子。ネットワークの接続をリボンで再現し、DNSパートではDNSSECを実際に書面にサインをして表現するなど面白いなと感じました。

 

 

APIGA CITYはISPと契約する、仮想通貨を買う、NFTアートを取引するなどなど、今日のインターネット体験をゲーム感覚で行います。 写真は最も(投票で)価値の付いたNFT保持者に景品授与の様子。

まとめ

“IG Expert”を目指して、アジア太平洋各国のユース世代が集まり、濃密な5日間を過ごしました。これまで触れる機会のなかった分野について知見を得られただけでなく、国際会議でのプレゼンテーションや発言のスキルなど、実践的な学びも数多くありました。

また、講師陣とのつながりや、同じ世代の仲間との交流を通じて築けたネットワークも大きな収穫です。難しさを感じる場面も多々ありましたが、その分得られる経験値は大きく、今後に活きるものばかりでした。

個人的には非常に貴重な機会になったと感じていますので、もし興味を持たれた方は、ぜひ来年以降の参加を検討してみてください。

なお、本稿に掲載している写真の一部はICANN Flickrから引用しています。その他にも多くの写真が公開されていますので、ぜひご覧ください。

 

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