JPNIC Blog JPNIC

IPv6移行の“現実解”を探る─「IPv6-Mostly Network」が示す新たな運用のかたち ~Internet Week 2025 プログラム委員インタビュー~

event_team 

来月開催の Internet Week 2025(IW2025)。「挑戦×経験×世代 ~フルスタックで“不確実”の先へ~」というテーマのもと、インターネット運用に関わる多様な立場の人々が集い、技術と知見を共有する場として開催します。

JPNICブログでは、Internet Week 2025の注目セッションと見どころを順次ご紹介していきます。技術の最前線を追うもよし、世代を越えて語り合うもよし。IW2025を“自分ごと”として楽しむためのヒントをお届けする予定です。

第1弾となる今回は、注目プログラムのひとつ「IPv6-Mostly Networkで変わる運用のカタチ – 標準化と実証から見える現在地 –」を取り上げ、企画担当のプログラム委員である、近堂徹(広島地域IPv6推進委員会)さんにお話を伺いました。


―まず、このプログラムを企画された背景や狙いを教えてください。

このセッションを企画した近堂徹さん
このセッションを企画した近堂徹さん

近堂: IPv4/IPv6デュアルスタック運用は、アドレスの確保やNAT機器の運用負荷など、多くの課題を抱えています。一方で、すぐにIPv6-Onlyへ完全移行するのは現実的に難しい状況です。そうした中で注目されているのが、「IPv6-Mostly Network」です。IPv6を基本とし、必要に応じてIPv4を補完的に使うモデルで、ISPや組織のネットワーク管理者、開発者など、それぞれの立場から課題解決の糸口を見いだせます。


国内外で実証や運用が進んでいますが、まだ広く知られていません。そこで、「なぜIPv6-Mostlyなのか?」を専門家にも初学者にもわかりやすく伝える
ことを狙いとして、このセッションを企画しました。

―講演者の選定では、どのような点を重視されたのでしょうか?

近堂:IPv6-Mostlyは単なる「概念」ではなく、標準化・実証・実運用という3つの側面があります。

今回はそれぞれの立場からお話いただける方として、川島さん、横尾さん、Fukumoriさんをお招きしました。IETF標準化に関わる専門家、クライアントOSでの検証を行った技術者、そしてイベント現場で実際に運用したエンジニアです。


この3つの視点をそろえることで、理論から現場までをつなぎ、参加者が多角的に学べる構成にしています。

―プログラムの見どころや、聴きどころを教えてください。

近堂:単なる技術紹介ではなく、「実際にどう動くのか、どう運用できるのか」を具体的に示す点が見どころです。標準化の流れを押さえた上で、主要OSでの動作検証結果や、大規模イベントでの導入・トラブル・工夫などを共有します。


参加者には、IPv6-Mostlyのメリットと課題を実感しながら、自分の環境に置き換えて考えるヒントを持ち帰ってほしいと思っています。

―IW2025のテーマ「挑戦×経験×世代 ~フルスタックで“不確実”の先へ」とのつながりは?

近堂:IPv6-Mostly Networkは、”IPv4アドレス枯渇”という「不確実」な状況の中で挑む新しい「挑戦」です。


このプログラムでは、IETFでの議論や実証環境での検証、大規模イベントでの導入といった数多くの「経験」を共有します。そして、現場のエンジニアから若手技術者まで幅広い層が知見を学び合い、次の「世代」にIPv6移行のノウハウをつないでいく。基盤技術から運用現場までをつなぐ“フルスタック”な視点で、これからのネットワーク運用を共に考える場にしたいと考えています。

―どんな方に特におすすめでしょうか?

近堂:ネットワークエンジニアをはじめ、IPv6導入を検討しているISPや企業の運用担当者におすすめしたいですね。IPv6の基礎を理解している方でも、「IPv6-Mostlyがどう動くのか」を具体的に知る機会は少ないはずです。


また、アプリやサービスの開発者にとっても、IPv6環境での動作を理解する良い機会になります。


初心者の方でも「なぜ必要なのか」「どう実運用されているのか」がイメージできる内容なので、安心して参加していただけます。

―プログラムを通じて、どのような対話が生まれることを期待していますか?

近堂:参加者それぞれの立場から「なぜ今Mostlyなのか」を考えてもらいたいです。


ISPにとってはIPv4資源の有効活用、ネットワーク運用者にとっては運用の効率化、開発者にとってはアプリの互換性検証など、関心はさまざまです。実証や運用で得られたリアルな課題を共有することで、参加者同士の議論が自然に生まれる場になることを期待しています。

―最後に、参加を検討している方へのメッセージをお願いします。

近堂:IPv6-Mostly Networkは、IPv6-Onlyへ移行するための現実的で重要なステップです。


標準化から実証、運用まで幅広く紹介しますので、「IPv6移行の次の一歩」を知りたい方には必ず役立ちます。

初心者も経験者も歓迎です。ぜひ気軽に参加して、これからのネットワーク運用のあり方を一緒に考えていきましょう!


プログラム概要

  • 日時:2025年11月25日(火)13:00 ~ 14:30

  • 会場:Room 109 

  • セッションタイトルと講演者:

      ・IPv6-Mostly Network概要とIETF標準化動向川島 正伸(NECプラットフォームズ株式会社)

      ・IPv6-Mostly 実証環境構築 & クライアント OS 検証横尾 和真(広島大学大学院先進理工系科学研究科)

      ・RubyKaigi Wi-Fi による IPv6-Mostly 実運用と所感Sorah Fukumori(RubyKaigi)

  • URL:https://internetweek.jp/2025/archives/program/c5

この記事を評価してください

この記事は役に立ちましたか?
記事の改善点等がございましたら自由にご記入ください。

このフォームをご利用した場合、ご連絡先の記入がないと、 回答を差し上げられません。 回答が必要な場合は、 お問い合わせ先 をご利用ください。