JPNIC Blog JPNIC

News & Views Column:メール運用の現場から見える、インターネットの静かな構造変化

pr_team 

過去にメールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでもご紹介しています。今回は2026年2月のメールマガジンでお届けしたコラムを掲載します。株式会社インターネットイニシアティブの古賀勇さんにお書きいただきました。Internet Week 2025では「メールセキュリティ2025アップデート」にてご登壇いただき、2026年6月30日のInternet Week Showcase in 静岡では2026年版にアップデートしてお話しいただきます。メールインフラを支える立場から、利便性の陰で見えにくくなっている”構造”について、身近なエピソードを交えてお書きくださいました。


「インターネットに繋がらないんだけど!どうして!?」

先日、出社中に妻からこんな連絡がありました。帰宅して調べてみると、無線LANのアクセスポイントが故障していたのでした。電気・ガス・水道、そしてインターネット。毎日当たり前のように使えているインフラは、いざ使えない状態にならないと、それを支えている人々の姿に気づかないものです。

2023年10月、大手メールサービスGmailを提供するGoogle社は「メール送信者のガイドライン」を発表しました。なりすましメールによるフィッシング詐欺から利用者を保護するため、Gmail宛に送信されるメールには、送信ドメイン認証による対策を義務付けるものです。Gmailには多くの利用者がいますから、この発表は世界中を騒がせ、日本国内の送信ドメイン認証DMARCの対応率も飛躍的に向上するという大きな効果をもたらしました。この動きに東奔西走された読者も多いのではないでしょうか。

お客様のメールボックスを守り、安心・安全なメールインフラを支える立場として、私自身はこの動きを望ましい方向への取り組みであると肯定的に捉えていますが、同時に少々怖さも感じています。なぜなら、今回の一連の動きは、巨大テック企業の鶴の一声でインターネットの構造が左右され得ることを示してしまいました。本来インターネットは、相互扶助の上に成り立つ分散システムであったはずですが、いとも簡単に変えられてしまう現実に危うさも感じているのです。

そして2025年のInternet Weekでもご縁をいただき、メールセキュリティの最前線に加えて、サーバ証明書の有効期限短縮のお話もいたしました。少々気になるのは、メールセキュリティの強化も、サーバ証明書有効期限短縮の議論も、いずれもGoogle社が深く関わっている点です。3月には講演資料も一般公開されると思いますので、よろしければご覧ください。(編集者注: 2026年6月現在、公開されています。)

https://internetweek.jp/2025/archives/program/c11

私達は便利なインターネットサービスと引き換えに、さまざまな情報をメガクラウド事業者に預けており、私自身も例外ではなく、その便利さに支えられています。とりわけメールアドレスは、いまや多くのサービスのIDとして機能しており、使っていないように見えて実は日常の基盤そのものになっているのです。

しかし、毎日当たり前のように使っていたサービスが、もし明日使えなくなったら……?
私達は、利便性の陰で見えにくくなっている”構造”について、今一度考える時期に来ているのではないでしょうか。


■ 筆者略歴

古賀 勇 (こが いさむ)

2007年、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)入社。
メールサービスの運用業務に従事し、現場でメールに関する動向を調査。
お客様のメールボックスを守るため、最新の攻撃手法や、迷惑メールのトレンド、対策情報などを発信・講演。
M3AAWG、WIDE Project、openSUSEなどで幅広く活動中。
趣味は大喜利。はがき職人。Power Automateエバンジェリスト(自称)。

この記事を評価してください

この記事は役に立ちましたか?
記事の改善点等がございましたら自由にご記入ください。

このフォームをご利用した場合、ご連絡先の記入がないと、 回答を差し上げられません。 回答が必要な場合は、 お問い合わせ先 をご利用ください。