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2018年度IPv6対応状況に関するアンケート調査結果報告

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JPNICでは2014年から毎年IPv6の対応状況について、JPNIC会員をはじめ、IPアドレス管理指定事業者とPIアドレス割り当て先組織等に対してアンケート調査を実施しています。

IPv6対応状況に関するアンケート
https://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv6/#enq

今回で5回目となるアンケート調査を2019年3月26日から約1ヶ月間に渡り実施しました。今回は151の回答をいただきましたので、その集計結果を過去の調査結果との比較や分析とともに報告します。

1. 回答者プロフィール

アンケートの案内は、JPNIC会員、IPアドレス管理指定事業者(以下、IP指定事業者)、PIアドレス割り当て先組織、そしてAS番号割り当て先組織を対象に送っています。その中から回答いただいた組織を、IP指定事業者とそれ以外に分類して集計しています。

今回初めてIP指定事業者が50%以上の回答数を占める結果となりました。実数で見るとIP指定事業者の回答数は2016年85件、2017年80件、2018年も85件とほぼ横ばいですが、IP指定事業者以外の回答数が昨年よりも3割以上減少していることによるものです。

回答者の地域別分布では、昨年度とほぼ同様ですが、北海道・東北と四国・九州が若干減少し、その分を中部がやや増加する結果となりました。

IP指定事業者が提供しているサービス種別についても大きな傾向の変化はなく、ISP、CATVなど接続サービスが中心で、データセンター、ホスティングがそれに続く形です。

設問は複数回答可能となっており、一つの事業者で複数のサービス種別を選択しているケースもあります。

IP指定事業者以外の組織は、これまでほぼ60%以上だった学校、研究機関の割合が半数以下となり、一般企業が50%以上となりました。今回は学校、研究機関の回答数が減ったのが、IP指定事業者以外の回答数減少につながったのではないかと思います。調査期間が3月後半から4月にかけてという時期で、春休みシーズンや新学期の多忙な時期に重なったことも原因だったのではないかと推測されます。

2. IPv6対応/利用状況

IP指定事業者におけるIPv6対応状況を年度毎の推移と、サービス種別で比較したものです。

今回の調査で「IPv6対応完了」が2014年度調査以来20%を超える結果となりました。一方で、昨年、一昨年と10%を切っていた「対応予定なし」の回答が14%となり、IPv6対応に関する差が空いた印象があります。

またサービス種別で見た場合、CATVの対応が他と比較して進んでいない状況が目立っています。

IP指定事業者以外の組織におけるIPv6利用状況についても、「利用している」という回答が若干増加した一方で「利用予定なし」という回答の割合も増えています。

IPv6に対応しているIP指定事業者が、割り振りを受けたIPv6アドレスに対してどの程度逆引きレコードを登録しているか、という設問に対して半数近くが「登録していない」という回答する結果となりました。

3. セミナーについて

JPNICが開催している技術セミナーや地域でのIPv6対応セミナーなどについて、受講経験や受講意向を確認しています。

継続的なセミナー開催のおかげで、受講経験者の割合が順調に増加しています。

また、セミナープログラムについての要望を自由記述で回答してもらったところ、DNSをはじめサーバの構築、運用に関する実践的な技術や、IPv4/IPv6共存やセキュリティに関するセミナーを希望する意見をいただきました。

4. JPNICからの情報発信について

こちらも毎回設問の中に含めている、JPNICからの情報発信について、どの媒体を利用しているかの回答結果です。

毎回、会報誌が最も利用されている媒体となっていましたが、今回は8割近くの回答者が閲覧していると回答いただいています。一昨年のリニューアル効果が表れてきたということでしょうか。

またJPNIC blogも徐々に利用割合が増加してきており、JPNICの情報発信媒体として定着しつつあると考えられます。

こちらも毎回、希望する情報提供の種類について確認していますが、傾向としては大きく変化はないようです。

「国内のIPv6対応状況、動向」は、セミナーやイベントなどを通じて発信するようにしていますし、昨年は”World IPv6 Launch”6周年ということで、この6年間の動向をまとめたブログ記事も掲載しています。まだまだ需要が多いということで引き続き積極的な情報発信に努めていきたいと思います。

5. IPv4アドレス移転経験

前回から、回答者のIPv4アドレス移転経験を確認しています。IPv4アドレスの入手動向は、IPv6対応と密接に絡んでくるため、この動きも継続して確認していきたいと思います。

前回も今回も、回答者の6割以上はIPv4アドレス移転を行なったことがないという結果にはなりました。移転を行なったことがある組織は前回よりも7ポイント程度増加しています。

6. IPv4運用の必要性

今回新たに、「今後現在のペースでIPv6が順調に普及したとして、IPv4の運用が不要になるか」ということを理由も含めて回答いただきました。

結果として、IPv4の運用が不要になると考えている方は全体の16%程度で、8割以上の方は、IPv6普及後のIPv4の運用は必要と考えているようです。

しかし理由も含めて見てみると、積極的にIPv4が必要と考えている人は多くなく、世界のどこかにIPv4しかサポートしないネットワークやサーバが残り続け、それがなくならない限り運用は継続せざるを得ない、と考えている方が多くいました。要はこれだけ普及したIPv4がそう簡単になくなることは考えにくく「IPv6だけの運用に切り替えたくても踏み切るのは難しい」という判断のようです。これは「IPv4運用が不要になる」と回答いただいた方も同様の意見が見受けられました。しかしこちらは、「運用コストなどを考えるとどこかで見切りをつける必要がある」ということから「不要にしていくべき」という考えによるもののようです。

7. その他の意見とまとめ

最後に、IPv6対応にあたりJPNICに対する要望があるかというのを自由記述で回答いただいたところ、JPNICの活動としてIPv6の普及促進、啓発活動を求める声が多くありました。その他にセミナー開催の要望や、IPv6経路情報のJPIRRへの登録を促してほしいといった意見もいただきました。

この定点観測調査も今回で5回目となり、少しずつではありますがIPv6対応も進捗している状況が見て取れます。また、日本におけるIPv6対応状況の目安とも言えるNTTフレッツ網のIPv6対応率も60%を超えているほか、大手携帯キャリアにおけるスマートフォンのIPv6対応も着実に伸展しているということを聞いています。

ただし、こういった普及状況が広く多くの人に正しく伝わって理解されている状況までには至っていないことが、IPv6対応や普及について、いまひとつ実感しにくくなっているのではないかとも思います。JPNICとしては、上述のいただいた意見を踏まえて、さらに積極的な情報発信と普及啓発のための活動を進めていきたいと思います。そして、次回の調査でまた新たな進展が確認できることを期待します。

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