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インターネット上の海賊版対策に関する検討会議が開催されています

投稿者 dom_gov_team on 2018年8月10日

■はじめに

内閣知的財産戦略本部によって、2018年6月に「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」が発足しました。今までに4回の会合を開催しています。会議は、慶應義塾大学の中村伊知哉教授、村井純教授という共同座長のもと、コンテンツ・出版業界、法曹、インターネット関連団体などから20名の委員で構成されています。JPNICもグローバルなインターネットの調整に関わる立場として参加しているため、本稿では、この検討会議と、それに関連するJPNICの取り組みを紹介します。

 

■検討会議とそのスコープ

海賊版とは、著作物に関して正当な権利を持たないにも関わらず、権利者に無断で(したがって違法に)提供されるコンテンツです。近年漫画に関する海賊版の問題が大きく取りざたされています。特に大きな議論を呼んだのが、2018年4月に政府が呼びかけた、インターネット接続事業者に対する「緊急避難措置」としてのサイトブロッキング要請です。これは、政府が悪質な数サイトを特定した上で、法制度が整備されるまでの間、インターネット接続事業者による自主的なサイトブロッキング実施が望ましいとするもので、つまりは事実上サイトブロッキングを要請したものです。ここで「法制度が整備される」とありますが、この法制度の整備に当たるために、この検討会議が発足しました。

検討会議に関する資料、情報は、首相官邸Webの知的財産戦略本部のページから入手することが可能です。

「検討スコープ」をご覧いただくと、海賊版サイト対策を、以下のように多面的・総合的に行うことが示されています。

  1. 正規版流通を拡大して海賊版需要を無効化していく
  2. 海賊版サイト運営者の資金源を絶つべく、広告出稿の仕組みの上で海賊版サイトへの出稿を抑止する
  3. 効率的な配信のために、海賊版サイト運営者もCDN事業者を利用するため、CDN事業者の国内設備に置かれた違法コンテンツに対して執行力を強化する
  4. キャリアやISPがサイトブロッキングの手段を講じる

 

■本件に関する論点

検討会議はいろいろな立場の構成員から成ります。「海賊版サイトをなくしたい」という思いは共通ですが、本件をどう解決するかに向けた捉え方、特にサイトブロッキングの導入可否に関する考え方はさまざまです。検索で見つかるものが多いので、是非、各社、各団体の声明文などをご参照ください。

解決に向けては論点が複数あり、難しい様相を呈しています。以下に代表的と思われるものを列挙します。

  • 立法化にあたり、憲法をはじめとするさまざまな法律との整合性がとれ、実行可能な法制化が果たして可能なのか?
  • 仮に法制化したところで、サイトブロッキングに本当に望む効果があるのか?問題の地下化を招くだけではないのか?
  • 対策のコスト負担を誰がするのか?
  • 結果的にブロッキングの連鎖でインターネットが壊れてしまわないのか?


■JPNICからの提出資料

JPNICは一貫して、グローバルインターネットの円滑な運営の観点から検討に関与しています。

キャリア・ISPにおけるサイトブロッキング(アクセス遮断)の方法には、IPアドレスによる遮断、ドメイン名による遮断、URLによる遮断、DPI(ディープパケットインスペクション)による遮断などがありますが、どれも、合法コンテンツへのアクセスも遮断してしまう危険性があるとともに、違法コンテンツに関しては、遮断が実施された場合にも、利用者、違法コンテンツの提供者、双方において、回避策が容易に実施できます。したがってサイトブロッキングはそれを実施した時点から即座にその効果が薄まる性質があり、遮断しようとする側が追加対策を打たざるを得なくなる危険性があります。この連鎖が起こることで、ネットワークの一貫性が損なわれ、安定性が失われていくことが、大きな懸念です。

このような懸念を各会合毎に表明しており、資料を提出していますので、ご参照ください。

第1回資料:ブロッキング(アクセス遮断)に関するJPNICの基本的な考え方を示したもの
第3回資料:本検討会議参加にあたって予備調査として行ったアンケート結果の共有
第4回資料:アクセス遮断の技術的手法を列挙し、細かな手法の違いに共通認識を促すもの

このような経緯からJPNICとしては技術的にブロッキングに関する理解を深めてもらうことが肝要と考え、8月に実施された構成員との勉強会では、ISOCが2017年3月に公開したコンテンツ遮断に関するレポート:Internet Society Perspectives on Internet Content Blocking: An Overviewに関して、ISOC理事/東京大学/JPNIC副理事長の江崎浩がまとめたの解説を提出しました。この中ではISOCレポートの要約に当たる4ページほどに関してJPNICで私訳を作成しました。これらを以下に共有します。ぜひご参照ください。

 ※2018年8月15日追記:8月10日に開催された「インターネット上の海賊版に関する勉強会」の議事次第と資料が公開されましたhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/kaizoku/benkyoukai/gijisidai.html

■おわりに

JPNICは決して海賊版による被害を軽視していません。現時点でも海賊版サイトにリーチする方法は検索によって容易に見つけることができ、その傾向は強まるようにさえ見えますので、一刻も早い対策が必要です。 合理的なコスト分担、法的な妥当性、明確な効果のどれ一つかけても、結果的にかえって問題の解決を遅らせるように思います。

検討会議はさまざまな立場や専門性の構成員から成り、それぞれの話も専門的です。4回の会合を終えても、なかなか全容の理解が難しい状況です。議論を深めるためには、それぞれの構成員の見解の前提となっている背景も正しく理解し、もっと複合的・総合的に対策を立案することが必要です。その立案にかける時間は決して無駄ではないと、JPNICとしては考えます。