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今月のコラム:IPv6、そしてマイグレーション

投稿者 pr_team on 2017年6月30日

JPNICではメールマガジンである「JPNIC News & Views」を発行していますが、毎月15日の定期号ではインターネットに関するコラムを載せています。そのコラムの内容を、本ブログでもご紹介しています。

2017年6月のコラムは、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 企画官の高村信氏に寄稿してもらいました。


昨年(2016年)7月に、6年ぶりにインターネット界隈の担当となり驚いたことが二つあった。それは、8年前に自分が仕掛けた仕事、すなわちインターネットのIPv6化(IPv4在庫枯渇対応)が業務のメインストリームとしてまだ残っていたことと、6年前に産声を上げたNGNが、インターネットインフラとしては、地域IP網(いわゆるフレッツ網)からのマイグレーションを完了していたことである。

この二つの課題は、ともに「マイグレーション」という、エンドユーザーからすると「損にも得にもならない」、すなわち、実施するインセンティブが基本的には存在しないが、その一方でサービス提供側にとっては、完了しない限り複数のインフラを抱え込まなければならない(よって二重投資が要求される)問題を抱えている。

その一方で、IPv6化とNGNへの移行では、誰が二重投資の必要性についてトリガーを引くのか、という点では、正反対の性質を持っている。

すなわち、NGNはサービス提供側の動機、すなわちPSTN(公衆交換電話網)の維持が困難となる中でその代替網の構築が必須であり、またその代替網は必然的に地域IP網の機能を内包するという事情の下、まずは代替網(NGN)を構築する(=二重投資を開始する)こととなり、その後二重投資を終了させるべく地域IP網からの巻き取りを行う、という構造になっている。よって、ユーザーや周辺に迷惑をかけない限りにおいては、サービス提供側の責任だけでマイグレーションを推進することができるため、1900万もの契約者を持つアクセス網の移行が着実に行われたものと理解している。

しかし、インターネットのIPv6化は、特殊なユーザーを除いてIPv6化を果たしたいという動機は無く、ネットワーク提供側としてもわざわざ二重投資を行う動機は無いため、「マイグレーション(IPv4からの移行)」どころか「アダプション(IPv6導入)」の段階でつまずいていた(普及率の推移については、http://v6pc.jp/jp/spread/ipv6spread_03.phtml を参照のこと)。おそらく、私が離れていた6年の間、この「ニワトリが先か、タマゴが先か」という状態をどう解決するかについて、誰もが頭を悩まし続けてきたであろうと推察する。

ところが、2年前に神風が吹いたようである。いわゆる「光コラボ」の導入である。元々、NGN経由で「IPv6」を提供するためにはオプション契約が必要である中、新規契約者や契約変更者に対しては当該オプションをデフォルト提供しましょう、という施策を推進してきたものの、そもそもインターネット接続サービスを見直すエンドユーザーはほとんどいなかった。ところが2015年2月に「光コラボ」が導入されたことにより、アクセス網サービスの契約先を変更するユーザーが数多く生じ、これに伴い、多数のエンドユーザーがIPv6の利用契約を結ぶこととなり、2017年3月ではNGN利用者のうち30%超にIPv6によるインターネット接続が普及している。さらに、モバイルキャリア3社も、2017年中に、IPv6によるインターネット接続サービスを提供する旨を公表している。

これにより、これまで蒔いてきた種、すなわち端末や家庭用ルーターがIPv6に対応済みであったことが一斉に花開き、Google社が公表している統計によると、本稿執筆時点では日本からのアクセスのうち18%がIPv6によるものとなっている。(https://www.google.com/intl/ja/ipv6/statistics.html#tab=per-country-ipv6-adoption&tab=per-country-ipv6-adoption)

このように、日本国内では、IPv6がエンドユーザーのうち、「アーリーマジョリティ層の半分」まで普及する段階まで到達し、今後はインターネット上のサービスのIPv6化が進んでいくものと考えられる。これに伴い、総務省として掲げる政策も、「IPv6の普及」から、究極的にはIPv4の停止を目指す「IPv6へのマイグレーション」を念頭に置いたものへと変質させていく必要がある。

これまでIPv6の普及促進に向け、数多の知見と多大な努力を提供くださった方々に心から敬意を表するとともに、今後の新たな政策構築に向けさらなるご協力を賜れるよう、心よりお願い申し上げたい。


■筆者略歴

高村 信(たかむら しん)

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 企画官。1996年郵政省(現総務省)入省。2004年より電気通信事業部データ通信課、2006年より同部事業政策課にて課長補佐を歴任。2008年より技術開発政策を担当し、2016年7月より現職。