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News & Viewsコラム:最近の通信業界のトピックと地域事業者の存在について

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最近の通信業界における一番のトピックと言えば、 やはり「ブロッキング問題」になるかと思います。 私も非常に注目しており、 自分自身もISP業者としての意見表明をしましたが、 「立場が変わればこうも意見が分かれるものか」とも感じています。 もし私が出版業界という立場だったら、どのような対策をして、 どう立ち回るか……というようなことにも想いを巡らせました。 今後、本件に関する議論はさらに深まってくるとは思いますが、 施策としてのブロッキングのみならず、大前提となる法整備についての、 本質的な議論に発展すればよいかなと感じています。

個人的には、 海賊版サイトをDNSブロッキングした場合に恐らく出てくるであろう、 「海賊版DNS」の脅威を気にしています。 これは、海賊版サイトへの閲覧を可能にするためのアクセスルートとして、 正規のものではないDNSを経由させるわけですが、 この海賊版DNSを経由することで、 例えば「金融系サイトへアクセスするはずが、 フィッシングサイトへ誘導されてしまう」といった被害が発生することも考えられます。 こうした被害を防ぐための方策や、ユーザーへの啓発も必要かもしれません。 本当は、ブロッキングも海賊版サイトも無い、 平和で健全なインターネットの世界が望ましいのですが。

さて、私はいわゆる「地域ISP」というカテゴリの事業者で仕事をしています。 そもそも「地域ISP」が誕生した経緯としては、 まだ通信方法がダイアルアップ全盛の頃、 地方のユーザーが市内通話料金で接続できるアクセスポイントが全国規模の大手ISPにおいては無かったため、 地元企業主導で当該地域内にアクセスポイントを設置し、 接続サービスを開始したケースが多かったのではないかと推察しています。 私も当時は福井県在住の学生で、 近隣のゲームショップが運営するISPと契約して、 ダイアルアップで接続していました。

時を経て、 大手ISPもほとんどの地域にアクセスポイントを設置することができるようになり、 地域IP網など県域単位での接続ができるサービスが増えたことによって、 全国展開への敷居も低くなりました。 地域ISPも大手に対抗すべく、 一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の前身となる、 日本地域プロバイダー協会(JLAPA)で情報共有や議論を重ねてきたと聞いています。

時代は流れ、現在はローミングサービス事業者も増え、 地域ISPにおいても全国対応を実施するプロバイダーが増えてきました。 全国対応といっても、販売網を全国展開するわけではなく、 県外への転勤などで地元から離れる方が、 継続して使用できるように対応しているのが実情だと思いますが、 「メールアドレスを変更したくないので助かる」といったご意見・ご要望もまだまだ多く、 メール離れと言われる昨今でも、根強い需要があるのだと感じています。

地元から離れても地元のISPを利用していただけるのは、 本当にありがたいことです。 遠く離れた利用者の方に、故郷の魂を少しでも感じていただくと同時に、 現在地元に居住中の皆さまにもさらに身近な存在として感じていただけるよう、 地域ISPはまだまだ頑張っていかなければいけないと思っています。

近年では、地域事業者においてもトラフィック増加が著しく、 年間で1.5倍以上の増加傾向となっています。 CATVのFTTH化などで、2倍近く増加したという話も耳にします。 このような状況下で、設備を増強しつつも、 価格交渉やトラフィックコントロールなどで可能な限り費用を抑えながら運用を進めています。

2018年5月31日(木)から6月1日(金)の2日間で開催される「Internet Week ショーケース in 広島」ではお時間をいただき、 「トラフィックエンジニアリング 地域ISP編」と題したお話をさせていただきます。 技術的なことはほどほどに、 「大手と比べてトラフィックが少ない事業者が、 トラフィックの多い事業者といかにピアリングを実現していくか」などのテーマでお話しします。 ご都合が合えば、ぜひご参加ください!

Internet Week ショーケース in 広島
https://www.nic.ad.jp/sc-hiroshima/

■著者略歴

熊本 豊(くまもと ゆたか)
2002年、福井の地域ISPであるミテネインターネット株式会社に入社。 2013年に東京営業所勤務となり、東京のバックボーン機器の運用および、 ピアリングのコーディネートなどを行う。 現在は通信事業者向けのサービス提案やネットワーク企業のノベルティグッズのお手伝いを中心に活動中。 JANOGなど各種イベントにて地域ISPについてのセッションへの登壇や、 コミュニティ活動にも携わる。

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