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RIPE 76がマルセイユで開催されました

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2018年5月14日(月)~18日(金)の日程で、フランス・マルセイユにおいて、RIPE 76ミーティングが開催されました。RIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)は、世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)のうち、ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIRです。

RIPE 76 Webサイト

APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様に、RIPE NCC地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

RIPE 76ミーティングの全体のアジェンダおよびPlenaryセッションの概要は、以下のWebページから参照可能です。

今回のRIPE 76ミーティングでは、以下に記載した合計4点のポリシー提案が議論されました。各提案の詳細については紹介を省略しますが、ご興味のある方は、リンク先のページに記載された内容をご確認いただければと思います。

  1. 2017-02:Regular abuse-c Validation(“abuse-c”の項目に登録された電子メールアドレスの定期的な認証)
  2. 2018-01:Organisation-LIR Clarification in IPv6 Policy(IPv6アドレスポリシーにおける”Organization”と”LIR”の明確化)
  3. 2018-02:Assignment Clarification in IPv6 Policy(IPv6アドレスポリシーにおける割り当ての明確化)
  4. 2018-03:Fixing Outdated Information in the IPv4 Policy(IPv4アドレスポリシーにおける利用されていない情報の修正)

これらの提案のうち、「2017-02:Regular abuse-c Validation(“abuse-c”の項目に登録された電子メールアドレスの定期的な認証)」は、メーリングリストや複数回のオフラインミーティングでの議論の結果を経て、ラストコールの状態となっています。ラストコールは、提案内容をポリシー文書に反映するために、メーリングリスト上でコミュニティに最終の意思確認を行うことを目的とするものです。

RIPE NCCでは、該当IPアドレスの不正利用に対応する窓口となる電子メールアドレスを登録するために、WHOISサービスにおいて”abuse-c”の項目が2012年に導入されています。

適切なWHOIS情報の登録は、連絡先情報の迅速な特定、オペレーションリソースの浪費の防止、ドメイン名やIPアドレス・AS番号のハイジャック防止に繋がります。しかしながら、RIPE NCCには、毎年数百件程度、登録された電子メールアドレスが無効であるとの連絡を受けるそうです。この問題について、メーリングリストで継続的に議論が行われています。

今回の提案では、RIPE NCCから直接割り振り/割り当てを受けたIPアドレス・AS番号に関する情報に登録された、”abuse-mailbox”の項目の電子メールアドレスについて、少なくとも年1回、登録情報を確認することを求めるようにするものです。

具体的な手順や、割り振り/割り当て先組織において情報を確認しなかった場合の対応については今後、RIPE NCCにおいて検討されるようでしたので、特段の議論は行われていませんでした。

現在、RIPE NCCのデータベースには、”abuse-mailbox”の項目に約70,000程度の電子メールアドレスが登録されているそうです。RIPE NCCでは、この70,000のうち、10~25%程度が無効な電子メールアドレスではないかと予測している、との発表がありました。

これまで議論が重ねられてきた提案のため、当日の議論は多くありませんでした。しかし、この無効な電子メールアドレスの数について、コメントがいくつか出されていました。10~25%程度と言った幅のある予測ではなく、もう少し精緻な数を調べて、その内容を元に議論した方が良いのではないかと言う議論の雰囲気でした。とはいえ、ラストコールを取り下げるまでの内容ではないと判断したチェアが、メーリングリスト上でのラストコールを継続する旨の宣言がありました。

2018年5月25日までとなっているラストコールを経て、この提案がポリシー文書に反映された場合、北米地域のRIRであるARINに引き続いて、WHOIS登録情報の正確性向上を目的とした提案が実装されることになります。世界に五つあるRIRのうち、残るアフリカ地域のAFRINICおよびラテンアメリカとカリブ海地域のLACNICでは、既にWHOIS登録情報に関する議論が行われています。会場からは、APNICへも提案の提出を予定している旨の発言がありました。2018年9月にニューカレドニア・ヌメアで開催予定のAPNIC 46ミーティングにおいて、WHOIS登録情報に関する議論が行われることになりそうです。

地域インターネットレジストリ(RIR)では、盛んに議論が行われているWHOIS登録情報ですが、このブログ記事を読まれている方も他人事ではありません。JPNICから直接IPアドレスの割り振り/割り当てを受けている場合、プロバイダから8個以上のIPアドレスの割り当てを受けている場合には、割り当て先に関する情報がWHOISデータベースに登録されているかと思います。JPNICの場合、WHOISに登録された情報はこちらから確認することが可能です。これを機に、WHOISに登録された情報をいま一度ご確認いただければと思います。

各プログラムの発表資料、当日の議事録や映像は、RIPE 76ミーティングのWebサイトから参照可能になっています。議論に興味を持たれた方は、これらの資料を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。


次回のRIPE 77ミーティングミーティングは、2018年10月にRIPE NCCオフィスのあるオランダ・アムステルダムにおいて開催が予定されています。RIPE NCCは、ネットワークの運用者コミュティや他の関連団体とも密接に連携をしています。オープンソースソフトウェア、IPv6、DNSやルーティングなど、IPアドレス・AS番号の分配に関連するさまざまな分野についてもワーキンググループが設けられていて、ネットワーク運用に関する話題も多く議論されます。ポリシーに関する最新動向と、ネットワーク運用に関する最新動向を一度に知ることのできる良い機会です。参加を検討してみてください。


ここからは、RIPE 76ミーティングの様子を写真でお届けします。


RIPE 76ミーティングの会場となったPalais du Pharo Convention Centre of Marseilleです。写真手前に見える緑地の地下部分に、会場となったホールがあります。


メイン会場となったホールです。900席程度あるそうです。今回は事前登録者数が814名、実際の参加者数が737名と過去最大規模となったそうです。


ホール前面のスクリーンには、発言がリアルタイムに表示される画面と、プレゼンテーション資料が表示されます。このレイアウトはAPNICミーティングでもおなじみですね。


ホールとは別に、150人程度入ることができるサブ会場も設けられ、一部セッションは、メイン会場と並行してミーティングが開催されていました。


この小さなステッカーは、各自の興味に合わせて名札に貼るものです。


こんな感じで名札に貼ります。


ステッカーを配るのも、ミーティングではすっかりおなじみの風景になりましたね。


昼食会場です。ミーティング会場は中心部に離れた場所に位置していたため、多くの参加者はこちらの会場で昼食を取っていたようです。昼食の間も、大事な議論の時間となっている参加者も多いようでした。


セッションの合間も、休憩スペースで議論を行っている人が多いようです。


昼間は議論の時間ですが、夜は懇親会などが行われます。マルセイユ商工会議所で行われた懇親会では、1フロアに約500名分の席が設けられていました。日本ではあまり見かけることのできない光景ですね。


RIPEミーティングは、管轄地域内のさまざまな場所で開催されます。今回の開催地となったマルセイユは、南フランスを代表する都市の一つです。ホストのFrance-IXFrench Tech、さらにはフランスのccTLDである.frのレジストリAFNICの尽力もあってか、フランスからの参加者も多かったようです。

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