JPNICのIPv6アドレス分配を振り返る
ip_team IPアドレス 他組織のイベント今月はWorld IPv6 Launch 6周年を記念して、前回に引き続きIPv6に関するテーマについて書きたいと思います。
前回はWorld IPv6 Launchが開始された2012年からのIPv6普及状況に関するレポートでしたが、今回はもう少し遡って、JPNICにおけるIPv6アドレスの割り振り、割り当ての歴史と、割り当て、割り振りのこれまでの推移について振り返ってみたいと思います。
IPv6アドレスの分配開始
JPNICがIPv6アドレスの分配に関する業務を開始したのは、2000年1月20日です。この時は、APNICがIPv6アドレスのプールを管理し、JPNICの契約者に対してもそこから直接分配されていたため、JPNICはAPNICへの申請を取り次ぐという形から始まりました。
「IPv6 sub-TLA アドレス割り振り申請ドキュメントの公開について」
この時点では、分配されるアドレスも当時のRFCに基づいてSub-TLAと呼称され、分配ポリシーについても暫定的なものでした。また、最小割り振りサイズも/35という、今見ると中途半端なサイズとなっており、まだIPv4アドレス分配における「スモールスタート」の概念に強く影響されているように思われます。
この2000年から2001年度にかけてIPv6アドレスの割り振りを受けたIPアドレス管理指定事業者は、18組織ほどありました。
IPv6アドレス分配ポリシーの施行
2001年に入ると日本のコミュニティメンバーから、IPv6の普及のために、暫定的なものではなく、ちゃんとしたIPv6アドレス分配ポリシーを策定するべきという提案があり、JPNICのIP検討委員会メンバーを中心としたポリシー提案のとりまとめと、各RIRを回っての提案活動が行われました。
この時の様子については以前JPNIC Newsletter No.58に、歴史の一幕として、当時IP検討委員を務めていた株式会社インテックの荒野高志氏に寄稿いただいています。その結果2002年9月より、現在のポリシーの下、新たなIPv6分配ポリシーが施行されることになりました。
新IPv6ポリシーでのAPNICへの割り振り取次ぎサービスについて
この時に初期割り振り基準が整理されるとともに、最小割り振りサイズも/32に変更になっています。
2002年までにIPアドレス管理指定事業者へのIPv6アドレスの割り振り件数は33件となりました。また、2002年は、割り当ての件数も前年の46件から約4倍に増えて163件ほどありました。
JPNICからの分配開始
それまでJPNICにおけるIPv6分配業務は、APNICへの割り振り申請を取り次ぐという形で実施していましたが、2005年5月16日からは、JPNIC自身が割り振り申請を受け付けて、IPアドレス管理指定事業者への割り振りを行う方法に変更しました。
2003年からIPv4アドレスにおいてAPNICと共通のアドレスプールからの割り振りを行っておりましたが、これによりIPv6においても同様のスキームで業務を行うことで効率化出来るようになりました。
しかし、この時期はちょうどFTTHなどブロードバンドサービスの急速な普及にともない、IPv4アドレスの需要が増大する一方で、IPv6アドレスの割り振りはやや伸び悩む時期でもありました。
IPv6アドレスの割り当てについては、閉域網内の接続に用いられることもあり、インフラネットワークとして大量の割り当て登録がこの時期に行われていました。
<余談>JPNICのサービスにおけるIPv6対応JPNICでは、Webサイトでの情報提供の他、IPアドレスの情報を調べるためのWHOIS、またIPアドレスに関する申請を受け付けるIPレジストリシステムなど、様々なサービス提供を行っていますが、これらのサービスについても順次IPv6対応を進めてまいりました。 2007年3月26日に、JPNIC WebサーバとWHOISのIPv6対応を行い、翌年2008年10月28日からはIPレジストリシステムもIPv6接続で申請が可能にしています。 開始当初はIPv6によるトラフィックはほとんど無い状態ではありましたが、徐々にその割合も増加し、現在では全体のアクセス量の約20%を占めるようになっています。 |
IPv6アドレスポリシーの変化とPIアドレスの割り当て開始
ご存知のように2011年2月3日にIANAにおけるIPv4アドレス在庫が枯渇し、同年4月15日にはAPNICの在庫が枯渇を迎えます。この2~3年前くらい、つまりIPv4アドレス在庫枯渇が現実味を帯び、対応策の検討が進んでくるにつれて再びIPv6アドレスの割り振りが増加していきます。
IPv4アドレス在庫枯渇への対応策としてのIPv6が強調されていく中において、IPv6アドレスの分配ポリシーも、それを後押しする意味も含めて、徐々に基準を緩和する方向に変化してきました。
2008年8月15日には、それまで初期割り振りの基準として設定されていた「2年以内に最低でも200の割り当てを行う計画があること。」という要件が、既にIPv4アドレスの割り振りを受けている組織であれば適用されなくなり、その後2010年7月26日からは、既存のIPv4アドレスの割り振り/割り当てがある組織であれば、事前の審議無く最小サイズの分配を受けることが出来るようになりました。
「JPNICにおけるIPv6アドレス割り振りおよび割り当てポリシー」文書施行のお知らせ
こういった動きが、IPv6アドレスの割り振り数が増える後押しになったと考えられます。
ただし2012年のWorld IPv6 Launch以降は、ある程度主だったIPアドレス管理指定事業者には行き渡ったということなのか、割り振りの件数は若干落ち着いた感じになっています。
IPv6アドレスの割り当てについては、これまではインフラネットワークへの割り当てがほとんどだったのですが、IPv4アドレス在庫枯渇時期を境に、ユーザ割り当ての割合が増えています。
2008年2月8日からIPv6の特殊用PIアドレスの分配も開始しました。これにより、IPv4アドレスでマルチホーム接続をしていた組織のIPv6対応が進んでいった他、歴史的PIアドレスを保有している大学や研究機関などがIPv6対応するため、IPv6のPIアドレスを取得するケースも徐々に目立ち始めてきています。
JPNICにおけるIPv6アドレス分配に関する経過を振り返ってきましたが、アドレス分配という観点からもIPv6が利用され始めてきているということがご理解いただけたのではないでしょうか。
このように、今後もIPアドレスの分配に関する状況を多角的な視点から分析していきたいと思います。「こんなことが知りたい」といったご要望等がありましたら遠慮無くお寄せいただければと思います。
最後にお知らせ
2018年7月6日(金)岡山市でIPv6 Summit in OKAYAMA 2018が開催されます。
今回のIPv6 SummitはおかやまIoTコンソーシアムとの共催で、IPv6 の最新動向に関するアップデートの他にも、IoTとIPv6をテーマにしたパネルディスカッションなども行われます。JPNICからも情報提供セッションで発表を行う予定です。
詳細は、リンク先の開催概要、プログラムをご参照ください。近隣の方、お時間の許す方はぜひご参加いただければと思います。