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News & Viewsコラム:ささやかな楽しみ

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先日、次女の七五三に合わせてスーツを誂えることになり、初めて仕立屋さんに行ってきました。普段、スーツを着る機会は少ないこともあり、せっかく作るならきちんとしたところで仕立てていただくことで、身嗜みについて造詣の深い方々の共通言語のようなものをきちんと学びたいなぁと、あれこれ仕立屋さんを探していました。

こういう時、とりあえず検索サービスを通じて広く探してみても、信頼できそうな知る人ぞ知る情報には、なかなか辿り着けなかったりします。結局、某掲示板あたりに書き込まれている、知る人ぞ知る情報っぽいものを参考に、いくつか目星を付け、そこからいくつかの仕立屋について調べてみるということを始めました。また、インターネット上から情報を探すことと並行して、普段お世話になっている服屋さんや靴磨き屋さんにも相談してみて、情報を集めたりもしてみました。幸いにも、今回は某SNS上でスーツを誂えている写真を投稿していた、ファッション誌を発行する出版社に勤めている友人がいたので、ダイレクトメッセージを送ってみたところ、今回お世話になる仕立屋さんを紹介してもらうこととなりました。

実際に仕立屋さんに行くにあたり、そこで誂えたスーツにはどのようなものがあるのかを調べるには、画像や動画に特化した某SNSの、タグ検索がとても役に立ちました。また、副次的な発見ではありましたが、その仕立屋さんに関するタグを付けた投稿が多い人が何名かわかってくると、どうやらその仕立屋さんの常連らしい人々が把握できるようになってきました。今回紹介いただいた仕立屋さんの場合、国内の常連さんも多いのですが、海外の常連さんもいるのだなぁということがわかり、こちらでしたら前述の共通言語を学ぶことができそうであることもわかってきました。

ちなみに、この某SNSのタグ検索ですが、ちょっと残念だなぁと思うことがありました。このタグ検索ですと、入力した文字列に対して候補となるタグを提示してくれるのですが、全角と半角は区別されているようで、カタカナの場合、入力した文字列の文字幅によって、もう片方の文字幅の文字列が候補として表示されない(例えば全角で「#ダイエット」と入力すると半角文字の「#ダイエット」は候補に表示されない)ので、利用者の文字入力環境によって検索結果が変わってくるんだろうなぁと思いました。なお、アルファベットですと、どちらの文字幅で入力しても、それぞれの文字幅のタグが候補として表示されていました。

この某SNSでは、合成済み文字と結合文字列は区別せず検索できるようで、この問題は瑣末な問題ですが、別の某ノートアプリのタグ検索では、過去に全角と半角に加え、合成済み文字と結合文字列も区別し、内部的に正規化もされていないことがありました。利用する端末によっては、デフォルトで入力可能な文字が、合成済み文字であったり、結合文字列であったりということがあります。その場合、携帯端末で入力したノートをPCからタグ検索しようとすると見つからないという問題があったりしまして、何年か昔にシリコンバレーの某ノートアプリ開発チームと、その問題について打ち合わせをさせていただいたことがあったなぁと思い出したりしました。

さて、話がそれましたが、いざ仕立屋さんに行き話をしていると、最近は20代の方々や学生も、フルオーダーに憧れてスーツを作りに来るそうです。ご両親のお金で買ってもらうのはかっこ悪いよということで、仕立屋さんもさすがにスーツのオーダーは断るそうですが、それでもその仕立屋さんの作るスーツの雰囲気が好きで、せめてシャツだけでもということで、自分のお金で支払えるシャツ等をオーダーするそうです。またここ数年で、アジア地域では30代を中心とした世代のファッションに関する関心が高まっているようで、国境を越えて同じ趣味嗜好を持ったファッションで繋がるという、コミュニティも目立つようになってきたそうです。

私が本格的に服に関心を持ちはじめた高校生ぐらいの頃ですと、一部の人達の中で嗜まれていた知る人ぞ知るものというのは、雑誌等で紹介されるか地元の服屋さん等から教えてもらわないと、なかなか知ることができなかったように思います。地元の服屋さんに通いつめ、試着してみていろんな合わせを覚えたり、服の作りや読むべき本、通うべきお店について教えてもらったり、店員さんや他の常連さんと一緒に都内のお店巡りをしたりということを繰り返して、時間をかけて知識を増やしていくというプロセスを当時は経ていました。その経験からすると、他国の同じ趣味嗜好を持った人と出会うということや、自分達の趣味嗜好を伝えることは、本当に巡り合わせがないと実現できないように思えまして、現在のインターネットの影響というのは、本当にすごいなぁと感じております。

さて、ここまで読んでいただいて、服が好きな方達の中でもコミュニティが形成されるほどにインターネットが活用されているというのが、なんとなく伝わったかと思われます。私は前々から、ぜひそういう服好きな方々にも、この自由に使えるインターネットの環境が、どのように発展的に維持されてきたのかというのを知っていただき、インターネットが今後も発展的維持されることに理解関心を持ってもらえるといいなぁと思い、実はささやかな試みとしまして、ファッションに興味がある人に向けた活動をしていたりもします。2017年に、ISOC-JPと青山学院大学の情報メディアセンターで、インターネットエコシステムに関する講習会を企画していた時期に、たまたま仲のよい服屋さんから新商品のモデル依頼をいただいたので、その撮影舞台を講習会の場にできないかと調整し、服屋さんのWebページやSNS等に講習会の様子を掲載いただいたこと等があります。

CURLY for a University Faculty

また、今回のコラムや、IETF91全体会議報告の冒頭でアロハシャツの話を書いたように、逆にJPNICさんの記事で服の話を書いてみる等もしております。

第91回IETF報告: [第1弾] 全体会議報告

服屋さんとJPNICさんの寛容さに深謝しつつ、今後もさまざまな異なるコミュニティ間の接点となるような、ささやかな取り組みを継続してみたいなぁと思っております。


 

■著者略歴

根本 貴弘(ねもと たかひろ)

博士(メディアデザイン学)。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程。青山学院大学情報メディアセンター助手(2014-)。RFC 7790共著者。ISOC-JP Officer(2017-)、IETF Education Working Group Chair(2016-)。私立大学情報教育協会 情報セキュリティ研究講習会委員会委員(2016-)。情報通信技術委員会 IoT/BD/AI時代に向けたデジュール及びフォーラム標準に関する標準化動向調査 調査者(2017)。

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