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UDRP運用開始20周年記念カンファレンス参加報告

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.comや.net等のドメイン名に適用されるUniform Dispute Resolution Policy(UDRP)は、ICANNで策定され、1999年12月1日から運用が開始されました。今年で運用開始から満20年を迎えることになります。

2019年10月、スイス・ジュネーブのWorld Intellectual Property Organization(世界知的所有権機関、略称WIPO)本部にて、UDRPの運用開始20周年記念のカンファレンスが開催され、参加してきましたので、そのご報告です。

カンファレンスは10月21日(月)に開催され、朝からのカンファレンスだったので、前日の日曜日にジュネーブに着くようスケジュールを組みました。現在、ジュネーブでは、日曜日は法律でお店の多くは閉めなければならないことになっているようです(駅や空港のお店等は例外)。このため、日曜日の夕方にジュネーブに着きましたら、大通りの店は皆閉まっており、人影もまばらで街は閑散としていました。

 

閑散とした雰囲気のジュネーブ市街 😐 

 

WIPOの本部。天気がよければ、このような光景が見られるはずなのですが……。

 

10月21日(月)カンファレンス当日は、残念ながら朝から強い雨でした。

向って左の低い建物がWIPOの会議場です。

カンファンレスは、WIPO事務局長Francis Gurry氏の映像による挨拶から始まりました。

Gurry氏はUDRPの運用開始から20年を迎え、これまでの間UDRPによって多くの紛争が解決されてきたことに触れつつ、カンファレンスに多くの参加者を得たことに謝意を述べました。

Photo: WIPO/Berrod [CC-BY-NC-ND]

カンファレンスでは、WIPOでのUDRPに基づくドメイン名紛争における統計情報や、ドメイン名紛争において争点になりやすいポイントに対してこの20年の間にWIPOがどのように取り組んできたかに関する解説がありました。

現在、ICANNがUDRPの取扱紛争処理機関として認定している紛争処理機関は5つあります。その中でWIPOは、UDRPに基づくドメイン名紛争を最も多く扱っています。米国のNAF(National Arbitration Forum)がWIPOに続きますが、WIPOの扱い数は圧倒的で、これまでに4万5000件以上のケースを処理したとのことです。

WIPOにおけるUDRPに基づくドメイン名紛争での勝訴率(申立人の主張が認められ、ドメイン名の移転や取消が認められる率)が徐々に上がっていることをJPNICはWIPOの公表資料から従前より把握はしていましたが、WIPOのカンファレンスでもやはり、勝訴率が上がっていることについて言及がありました。

UDRPに基づく紛争処理において、まず問題になるのは文字列の「類似性」です。ですが、企業等が事業で使用している名称やブランド名等と、紛争の対象になったドメイン名の文字列の「類似性」を具体的にはどう判断するのか?また、紛争においては、ドメイン名の登録者に「Bad faith(悪意)」や「Fraud(日本語で言ったら「騙す」とか「詐欺」の意図)」、また、「(紛争対象の)ドメイン名の使用実態があったか否か」等が判断の基準になります。

しかし、何をもって”Bad faith”とか”Fraud”と言うべきなのでしょうか? ”Bad faith”とか”Fraud”はドメイン名登録者の内心の問題にかかわる問題であり、実際には問題のドメイン名の使用態様(使用実態)から判断するしかありません。

また、何をもって問題のドメイン名が「使用されている」と判断するか、という点も、一つの大きな争点になります。例えば問題のドメイン名が登録されたままホームページ作成等に使用されていない場合、「使われていない」と判断するべきなのか?それとも、それはそれで何らかの使われ方をされていると考えるのか?

カンファレンスでは、こうした判断ポイントについて、過去の実際の事例を挙げながら、WIPOによるこれまでの取り組みについて説明がありました。

Photo: WIPO/Berrod [CC-BY-NC-ND]

現在ICANNでは、ドメイン名における権利保護(Rights Protection Mechanism/略称RPM)の検討を行っています。

RPMのPhase 1(第一段階の作業)では、主に新gTLDにおける権利保護の問題が検討されていました。そして、2020年よりPhase 2(次の作業)としてUDRPのレビュー(見直し)も検討が予定されています。

カンファンレスでは、ICANNによるUDRPのレビューや改定にも言及がありました。また、カンファレンスにはICANNのPolicy Team、Vice PresidentのMary Wong氏の姿もありました。

全般的には、WIPO自体も、カンファレンスに出席していたUDRPのパネリストの人達も、UDRPの改定にはネガティブな反応だったと感じました。現在UDRPのパネリストとしてWIPOに登録している専門家(弁護士等)は500名弱ほどに及びます。今回のカンファレンスでは、その内、140名ほどの出席があったということですが、WIPOも出席のパネリスト達も、現在うまく機能しているUDRPを無理に変えなくてもよいと思っているようでした。

Photo: WIPO/Berrod [CC-BY-NC-ND]

今回のカンファレンスは1日(実質6時間程度)だけのカンファレンスで、20年にわたる取り組みを来場者と共有するには時間が足りなかった感がありました。

残念に思ったのは、来場者(カンファレンス参加者)の220名ほどの内、140名ほどがUDRPのパネリスト候補者であり、残りの80名ほども、そのほとんどはドメイン名紛争をビジネスで扱う欧米の弁護士等であったということです。

各レジストリやレジストラ、ccTLDのドメイン名紛争の担当者等が参加していて、レジストラが経験したドメイン名をめぐる紛争に関する話や、各ccTLDでのDRPに関する話を聞くことができることを期待していたのですが、残念ながらその点については適いませんでした。また、アジア方面からの出席者がほとんどいませんでした。レジストラやccTLDのドメイン名紛争等の担当者が集まり情報交換する機会があれば良いなと思いました。

WIPOは毎年秋に、ドメイン名紛争に関するworkshopを開催しています。

今年は、このカンファレンスが開催されたためworkshopは開催されないのですが、来年以降は例年通りworkshopを開催する予定とのことでした。

 

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