JPNIC Blog JPNIC

ARIN 45でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

ip_team 

2020年6月16日(火)~17日(水)の日程で、ARIN 45ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。

当初、米国ケンタッキー州・ルイビルでの開催が予定されていました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、全期間を通して、オンライン会議システムのZoomを利用しての開催に変更となっています。

ARIN 45 Webサイト

APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様にARIN地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

ARINにおけるポリシー策定プロセスの詳細については、ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介しています。そちらもあわせてご覧ください。

今回のARIN 45ミーティングでは、7件の提案について議論が予定されています。

  1. Recommended Draft Policy ARIN-2019-1: Clarify Section 4 IPv4 Request Requirements(IPv4アドレス割り振り待機者リストへの掲載基準の明確化)
  2. Recommended Draft Policy ARIN-2019-10: Inter-RIR M&A(レジストリ管轄地域間の事業譲渡や吸収合併)
  3. Recommended Draft Policy ARIN-2019-12: M&A Legal Jurisdiction Exclusion(事業譲渡や吸収合併における管轄地域の適用除外)
  4. Recommended Draft Policy ARIN-2019-20: Harmonization of Maximum Allocation Requirements under Sections 4.1.8 (ARIN Waitlist) and 4.2.2 (Initial Allocation to ISPs)(最大割り振りサイズの統一)
  5. Recommended Draft Policy ARIN-2019-21: Reserved Pool Replenishment(予約アドレスの補充)
  6. ARIN-2020-1: Clarify Holding Period for Resources Received via 4.1.8 Waitlist(IPv4アドレス割り振り待機者リストから分配を受けたIPv4アドレスの保持期間明確化)
  7. ARIN-2020-2: Grandfathering of Organizations Removed from Waitlist by Implementation of ARIN-2019-16(IPv4アドレス割り振り待機者リストへの掲載基準から除外する)

各提案の概要を以下で紹介しています。ご興味のある方は、リンク先のページに記載された内容もあわせてご確認いただければ理解が深まるのではないかと思います。


Recommended Draft Policy ARIN-2019-1: Clarify Section 4 IPv4 Request Requirements(IPv4アドレス割り振り待機者リストへの掲載基準の明確化)

ARIN ポリシーの現状:ARINから新たなIPv4アドレスの割り振りを希望する場合、/20(4,096アドレス)以下のIPv4アドレスの割り振り/割り当てを受けている組織に限り、ARINが管理するIPv4アドレス割り振り待機者リストへに掲載され、掲載順に/22(1,024アドレス)を上限とするIPv4アドレスの割り振りを受けることができます。このリストを元に割り振りを受けてから90日後以降に、再度リストへの掲載が可能となります。

問題点:IPv4アドレス移転で移転元または移転先となった組織が、新たな割り振りを受けるために、リストへの掲載を希望するケースもありますが、その場合の基準の記述がありません。

提案の概要:割り振り待機者リストからの割り振りまたは、IPv4アドレス移転により割り振りを受けてから90日後に、割り振り待機者リストへの再度の掲載を可能とします。また、IPv4アドレスの移転元となった組織は、IPv4アドレスの移転後、36ヶ月間はリストへの掲載を申請できないものとします。

Recommended Draft Policy ARIN-2019-10: Inter-RIR M&A(レジストリ管轄地域間の事業譲渡や吸収合併)

ARIN ポリシーの現状:ARINでは現在、相互に移転を可能とするポリシーを持つRIRとの間でのみ、IPv4アドレスおよびAS番号のレジストリ間移転を可能としています。レジストリ間移転において、ARINとの契約のある組織が移転元となる移転の場合には、12ヶ月間は他の移転や割り振り/割り当てを受けていないことや、移転元組織と移転先組織間に資本や所有関係が無いことを必要としています。

問題点:移管先となったARINとの契約のある組織が、レジストリ管轄地域をまたがる事業譲渡や吸収合併によりIPv4アドレス・AS番号の移管を受けた後に、事業譲渡や吸収合併前から割り振り/割り当てを受けているIPv4アドレス・AS番号の移転を行うケースも考えられます。ポリシーへの記述が明確ではないために、ARINメンバーが、このようなケースの移転はARINに許可されないと判断することが懸念されています。

提案の概要:事業譲渡や吸収合併により割り振り/割り当てを受けたIPv4アドレス・AS番号については、「12ヶ月間は他の移転や割り振り/割り当てを受けていないこと」という制限の対象外とすることを明確にします。

Recommended Draft Policy ARIN-2019-12: M&A Legal Jurisdiction Exclusion(事業譲渡や吸収合併における管轄地域の適用除外)

ARIN ポリシーの現状:ARIN管轄地域でネットワークやサービスを提供する組織は、ARINと契約を締結し、IPアドレス・AS番号の割り振り/割り当てを受けることになります。しかし、事業譲渡や吸収合併などの企業活動の結果、ARIN管轄地域に所在しない組織が存続する場合があります。この組織が、何らかの事情で、ARIN管轄地域内でのネットワークやサービス提供を終了した後も、ARINとの契約の継続を希望する場合があります。現在のポリシー上では、このようなケースについて、IPアドレス・AS番号の割り振り/割り当てになんら制限は設けられていません。

問題点:ARIN管轄地域において利用されることが想定されているIPアドレスおよびAS番号が、管轄地域外のみで利用されることが懸念されています。

提案の概要:事業譲渡や吸収合併前に割り振り/割り当てを受けたIPアドレス・AS番号は事業譲渡や吸収合併後も利用可能とすること、ARIN管轄地域でネットワークやサービスを提供するなど実質的なつながりが確立されるまでの間は新たなIPアドレス・AS番号の割り振り/割り当てを受けることができないこと、をポリシーに追記します。

Recommended Draft Policy ARIN-2019-20: Harmonization of Maximum Allocation Requirements under Sections 4.1.8 (ARIN Waitlist) and 4.2.2 (Initial Allocation to ISPs)(最大割り振りサイズの統一)

ARIN ポリシーの現状:IPv4アドレス割り振り待機者リストに掲載された組織への割り振りIPv4アドレスのサイズは最大で/22、ARINメンバーへの初期割り振りIPv4アドレスのサイズは最大で/21となっています。

問題点:IPv4アドレス割り振り待機者リスト掲載者への割り振りIPv4アドレスサイズと、ARINメンバーへの初期割り振りIPv4アドレスのサイズが異なっています。ARINメンバー(もしくはARINメンバーになることを希望する組織)が、この内容を読んで、混乱することが想定されます。

提案の概要:ARINメンバーへの初期割り振りIPv4アドレスのサイズを最大/22として、IPv4アドレス割り振り待機者リストに掲載された組織への割り振りIPv4アドレスのサイズに揃えます。

Recommended Draft Policy ARIN-2019-21: Reserved Pool Replenishment(予約アドレスの補充)

ARIN ポリシーの現状:ARINでは、IXP(インタネットエクスチェンジポイント)、ルートサーバ、ccTLD、IANAやRIRなどがサービスを提供するために必要となるIPv4アドレスを予約しています。また、IPv6の普及のために最低限必要となるIPv4アドレスの割り振り/割り当てを行うための空間についても、ARINにより予約されています

問題点:現在は十分な量のIPv4アドレスが予約されているが、将来にはこの予約されているIPv4アドレスも枯渇が想定される。必要に応じて、追加のIPv4アドレスを予約することになるが、その際の手順を定める必要がある。

提案の概要:予約されている用途ごとに、過去3年間の割り当て実績を下回る在庫となった場合に、その時点での他の用途の在庫から補充を行うこととします。

■ARIN-2020-1: Clarify Holding Period for Resources Received via 4.1.8 Waitlist(IPv4アドレス割り振り待機者リストから分配を受けたIPv4アドレスの保持期間明確化)

ARIN ポリシーの現状:IPv4アドレス割り振り待機者リストに掲載された組織へ割り振りられたIPv4アドレスは、割り振りを受けてから60ヶ月間、他の組織に移転する(割り振り/割り当て先組織を変更する)ことができません。

問題点:事業譲渡や吸収合併により他の組織に移管される場合にも、60ヶ月間割り振り/割り当て先の変更ができない制限を受けるかどうかについて、コミュニティからはこの記述では曖昧であるとの指摘を受けています。

提案の概要:事業譲渡や吸収合併により他の組織に移管される場合には、この60ヶ月の制限を受けないことをポリシーに追記します。

ARIN-2020-2: Grandfathering of Organizations Removed from Waitlist by Implementation of ARIN-2019-16
(IPv4アドレス割り振り待機者リストへの掲載基準から除外する)

ARIN ポリシーの現状:2019年7月10日より、/20(4,096アドレス)以下のIPv4アドレスの割り振り/割り当てを受けている組織に限り、IPv4アドレス割り振り待機者リストへの掲載を許可される運用が開始されました。

問題点:2019年7月9日までは、申請者が申請時点で割り振り/割り当てを受けているIPv4アドレス数に制限はありませんでした。新たな基準での運用開始により、掲載基準に合致しない組織は、待機者リストから削除されることとなりました。2019年10月に開催されたARIN 44ミーティングでは、この対応を不満とするコメントが出されています。

提案の概要:対象となる組織へ割り振り/割り当てが行われているIPv4アドレスの総数が/18(16,384アドレス)以下になると、ARINはその組織の情報を、IPv4アドレス割り振り待機者リストの以前に掲載されていた位置に復元します。この組織が新たに割り振り/割り当てを受ける事が可能なIPv4アドレスのサイズは最大/22です。復元されたすべての組織の掲載は、2年に加えて2019年7月からARIN-2020-2が実施されるまでの月数分延長します。


ARIN 45ミーティングは、米国東部標準時(EST)で開催されます。日本との時差は13時間です。プログラムは両日ともに12時~15時の開催となっていますので、日本時間に置き換えると午前1時(深夜1時)~午前4時の開催となります。日本ではちょうど睡眠を取られている時間帯に当たるかと思いますので、リアルタイムで参加することは難しいかもしれません。発表や議論の模様は録画して公開されると思いますので、日本では遅れてARIN 45ミーティングを楽しむスタイルになりそうですね。

ARIN 45ミーティング中に利用される資料がWebサイトで公開されるほか、チャットルームやリアルタイム発言録も提供されるようです。ARINでは初めてのオンラインミーティングということもあって、これまでのミーティングと同様の雰囲気となるかどうか、JPNICでも注目しています。